鳳さんと天空橋さん(3)

文字数 1,852文字

「な、なぜ、そんな風に思うのです?」
「この間、エイリアン強かったで~す。壁を蹴り壊していま~した。でも、それ受けてもチョウ君怪我しませ~ん。あたくし、ピンチの時、飛んで助けてくれました。走るの、凄く、速かったで~す。人間技ではありませ~ん。異星人でも、特別速いで~す」
 確かにあの時は必死だったし、アルトロが力を貸していたから……。
「なのに、チョウ君、学校では運動神経ゼロで~す。頭も悪いで~す。チョウ君、学校のみんなを騙していま~す。異星人の癖に、何も出来ない振りしていま~す。チョウ君、騙すの上手で~す」
 おいおい、人をペテン師みたいに言うなよ。それに、運動神経ゼロだとか、頭悪いとか、幾ら語彙が無いからって、あまりに失礼だぞ!
「異星人警備隊でも、チョウ君、何も出来ませ~ん。これも嘘で~す。チョウ君、あたくしたちも騙していま~す」
「いや別に、騙してるんじゃなくて……」
「あたくし、いつか、チョウ君の正体、暴きま~す」
 僕は超能力の無い、普通の人間なんだから仕方ないだろう?
 まぁいいや。どうせ何を行っても信じてくれそうにない。そもそも、人間だってことすら、彼女は信じてくれないに違いない。

 そうやって話しながら歩いていたら、いつの間にか、彼女の家の前までやってきていた。
 それにしても、学校から徒歩三十分で来れるなんて、滅茶苦茶羨ましいな。それに、何だ、この豪邸は? 赤煉瓦の低い塀に化粧の施された黒い鉄の柵。門にも鉄の柵が設けられていて、中はイギリス風の庭が広がっている。そして、ここからでも庭に咲く薔薇の香りがそこはかとなく漂って来る。
 門には横文字で表札が……。
 ん?
『Kojima』って、ま、まさか……。
 僕の表情を読んだのか、ストラーダ隊員はそれについて説明してくれた。
「あたくし、日本に来てから、参謀の家に住まわせて貰っていま~す」
 ああ、やっぱり……。

「じゃ鳳さん、お家までお送りしましたので、失礼して僕は自分の家へと帰らせて貰いますよ。僕の様な庶民は、これから学校近くのバス停まで戻り、バスに乗り、電車に乗りして帰らなければなりませんので……。では!」
 別にストラーダ隊員が悪い訳では無いのだけど、何か金持ちと言うだけで妙にイラつく。
「あら、折角ここまでいらしたのだから、上がってお紅茶でもいかが?」
 僕の背後から、最近良く耳にする声が響いてきた。
「帰ろう、チョウ!」
 僕の心の中で、もう一人の僕、アルトロがそう助言をしてくる。勿論、賛成だ!
「いえ、そんな。ご迷惑ですから遠慮しておきますよ。では!」
 僕は振り返って、有無をも言わせず帰ろうとした。だが、小島参謀はそう簡単に帰す気はないらしい。何か含み笑いを表情に浮かべながら、強引に僕を引き留めようとする。
「そんな、ご遠慮なさらないで。サーラちゃんが学校のお友達を連れて来たのだもの、是非仲良くして貰わなくちゃ。それに私もお話をお聞ききしたいわ。学校の」
 僕はピンチと思ったが、アルトロが機転を利かせ、奴らの隠れている方向に目を向かせた。
「あ、あそこに僕と鳳さんのクラスメートもいますよ。彼らと一緒なら、僕も構いませんけど……」
 アルトロは僕にそう話をさせて、最悪三人だけと言う危険な状況だけは回避しようとする。小島参謀も、ここはその辺りで妥協することにした様だ。
「あら、嬉しいわ。じゃぁ、お呼びして頂けるかしら?」
 僕もここが妥協点だと言うことで、参謀とのティータイムだけは覚悟し、後ろの連中を呼びに行くことにした。

 僕の後をつけていたのは、悪友穴守一也と糀谷光、それと偶然か、ロングヘアーの女子、天空橋さんだった。
 僕はサーラさんの保護者の方(要するに小島参謀)が、学校のことを聞きたいからって、一緒にお茶でもして話さないかって言っていると三人に伝えた。
 僕は三人が全員拒否すれば、僕も拒否する口実となるのでOKだし、誰かがいれば、異星人警備隊の話しも、僕の能力の話しも出来ないだろうから、それならそれで問題ない。
 そして想定通り、穴守一也と糀谷光は全く遠慮などせず参加したし、想定外だったのだが、天空橋さんも一緒にティータイムに同席してくれたのだった。

 とりあえず、こうして冷や汗ものの非公式な公聴会は回避され、一時間程のパーティの後、僕は三人の友人と無事帰ることが出来たのである。
 尚、その時の会話の内容などは、正直僕には何も頭に残っていないし、紅茶やクッキー、いやスコーンだったか? お茶菓子の味すら全く覚えてはいない。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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