別世界からの侵略「前編」(3)

文字数 1,916文字

「スパウノ、リアビーバ!」
 僕は携帯の警備隊専用アプリに超異星人の再起動を命令した。それにより、ビーカー内の超異星人の身体が、僕の直前へと瞬間移動してくる。
 さあ! いくぞ!
 僕は最後の手段とばかりに、その場に頭から倒れ込んだ。アルトロの力でも駄目なのだ。もうこれしかない。超異星人で小島参謀と戦うのだ!
 僕の意識は、頭を床に叩きつけた時に飛んだ。頭蓋骨には(ひび)こそ入らないだろうが、相当の衝撃であったことは間違いない。
 だが……、僕は超異星人に憑依できなかった。そのまま直ぐに意識を取り戻し、ただ、ジーンと痺れた額が痛いだけだったのだ。
「アルトロ、どうしたんだ!」
「チョウ、私たちは弾き返された。この超異星人の意志に……」
 なんてことだ! 僕たちは超異星人に憑依することも出来ないのか?

「さ、これで納得いったでしょう? そろそろ本題に入らせて貰いたいんだけど……」
 小島参謀はそう言ってから、何かに気が付いたのか時計を眺めた。
「川崎隊長、これから世界政府による大悪魔皇帝軍対策会議が始まりますけれど、こちらの方が大事と思いますので、『出席はキャンセルする』との連絡を、防衛大臣の方にしておきますね。それで構いませんでしょうか?」
 川崎隊長は無言で頷く。しかし、港町隊員はそれに納得していない様だ。
「おい、世界のVIPが集まる会議だぞ!」
「馬鹿々々しいわ。どうせ、この先の展開なんか見えてるもの……」
「なんだと!」
「まず、世界政府会議の結論は徹底抗戦よ。『降伏しろ』と言われて、『はい、そうですか』って納得する国家元首なんて、世界のどこにもいないもの」
 確かに、それはそうかも知れない。
 降伏という選択肢は確かに無いだろう。だが、どう戦うかは議論する必要があるのじゃないのか?
「そして、それを相手に伝えると、相手は第一次攻撃を開始するでしょうね。どんな攻撃かは分からないけど、恐らくそれで、相手の恐ろしい攻撃力を知ることになるわ」
「『恐ろしい攻撃力』だなんて、大悪魔皇帝の仲間のあんたの言うことなんか、信用できないわ!」
 ストラーダ隊員が未だ手が痛むのか、手を押さえながら悲鳴の様にそう文句を言った。
「サーラちゃん、そりゃ私だって、相手の武器を全部知っている訳じゃないから、正確なことまでは言えないわね。でも、時空を渡る船を造る科学力よ。相当の武器を装備していると考えるべきだと思うわ」
「先を続けてください」
「分かったわ、アルトロ君」
 アルトロの話した言葉に、小島参謀は僕とは全く考えず、彼へと答えを返した。
「そうなると、世界政府は『徹底抗戦なんて無謀だ』ってことが、やっと理解できるの。で、どうするかって言うと、恐らく世界政府は 妥協案を提示するんじゃないかしら?」
「妥協案?」
「人類は降伏する。でも、地球側の自治権を保証して貰う。相手はこの時空全土を支配しようって帝王よ、一々星の管理などしていられない筈だって思って……。
 つまり、帝王の配下にはなるんだけど、実際は自治権が人類にあり、なにも地球的には変わらないって訳よ」
「大悪魔軍が、そんな分かり切った提案を飲む訳がないわ!」
「飲むわよ~。大悪魔軍は自分たちの戦力を削らずに地球を支配できるんだもの……」
「それで、まるく納まると言いたいのか?」
 川崎隊長が懐疑の声を出す。
「さあね……。でもね、大悪魔軍は恐らく幾つか要求してくる。まず、地球上にいる能力を持った異星人を、地球人自身の手によって全て駆除すること。能力のある異星人に反乱されちゃ堪らないものね。異星人警備隊大活躍って場面だわ。そして、それが終わると私たちも、走狗煮らるって感じで最後には処刑される」
 小島参謀は、恐ろしい事を平然と口にする。
「次に彼らは、生気を吸えない種類の生物は、彼らに必要ないから、人間たちにその様な異星人の抹殺を要求してくる」
「生気?」
「そう、私たち大悪魔は能力を使うのに生気が必要なのよ……。人間は私たち大悪魔の食料って訳」
「そうして人間を食い尽くして、最後には人間も滅ぼすと言うのか?」
「そんな勿体ないことはしないでしょうね。恐らく大悪魔皇帝は、地球を人間養殖場として確保することを考えるわ。それで、今と同じか、それ以上の数の人間が、家畜として生き延びることが出来る筈よ。人間にとっては、この妥協案は、決して不満なものでは無いかも知れないわね」
「そんな訳ない!」
 僕はそう叫んでいた。だが、本当にそうなのだろうか?
「まぁ満足か不満かは兎も角、地球側が妥協案を提示したら、こう言った展開になるでしょうね……。彼らは、こうして自分たちの食料である人間を、いくらでも確保できる場所を得ると言う訳」
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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