異星人の恋(9)
文字数 1,525文字
駆け寄ってきた女性は、少女に「大丈夫?」と声を掛ける。少女は小さく頷いていた。
「こいつが犯人だったのね。私たちに拉致されたのを逆恨みにして、私たちのメンバーを殺していったのに違いないわ」
少女はそう言っている……。
違う! そうでは無い! 僕たちは、犯人じゃない!!
「さ、これでもう大丈夫よ。これからは私たちも安心ね」
違う! 君は勘違いしている。
「でも、ちょっと可哀想ね。だって、この人も、私たちみたいに、共生されていただけなのでしょう?」
「こんな奴に同情は不要だわ。掟を破って私たちの秘密をバラそうとしたんだもの。死んで当然よ!」
少女は、僕の予想もしないことを口にしていた。どうしたと言うのだ?
「怖いよ、その言い方……。どうしたの? 前は脅すだけだって言っていたのに……」
「あなたも死んだ方が良さそうね……」
「え、え? まさか……」
「そうよ。私は本当は、こんな奴、直ぐに殺してしまえばいいって思っていたのよ。でも、あなたたちが全員で反対するので出来なかった。そのせいで、私たちの秘密は、あの変な女にバレてしまったわ。あなたたちが悪い。だから、殺すのよ……。こいつも、あの女も、そして反対した、あなたたちも……」
僕たちは何故か、SPA-1に憑依を完了していた。そして、空中に浮かんだ状態で、この恐ろしい会話を聞いていたのだ。
アルトロは、少女が同胞を殺す寸前にそれを阻止した。二人の間に体を移動したのだ。
少女の表情は驚きに満ちている。だが、彼女は気付いたのだろう。この肉体に憑依しているのが、自分の同胞のアルトロだと言うことに……。
「どうやって、そんな身体を手にいれたと言うの?」
アルトロは答えなかった。ただ、彼は黙っているだけだった。そして、無言のまま後ろを指差したのだ。
「行け!」と言わんばかりに……。
彼女は後ろを向いて、二・三歩歩き出した。しかし、気が変わったのか、突然、こっちを向いて手にしていた槍状の武器を、僕に突き立てようとする。
勿論、そんなもの、SPA-1の身体に刺さりはしない。
次の瞬間、僕の右手の人差し指と中指が長く伸びて剣状に変わり、彼女の首を刎ね落としていた。
首を失った少女の身体は、学生服を血に染め上げながら、後ろに朽ち木を倒す様に倒れていく……。
僕は始めて人を、地球人を殺した。
相手は、天空橋さんや鳳さんと同じ、恐らくこれから、様々な未来が待っているだろう普通の女子高生。
それは、酷く苦々しく、後味の悪いものだった……。
僕が元の身体に戻った時、これも不思議な事に、僕の胸の傷は完全に治癒が終わっていて、痛みも全く感じない程に回復していた。
そして、SPA-1は異星人警備隊の科学班の回収作業を待たずに、瞬間移動でどこかに消えている。僕は命令などしていなかったのに……。
そして……。
白昼、女子高生が首を刎ねられて殺害されると言う猟奇的な殺人事件以降、不思議な連続殺人が起こることは、ピタリと無くなった……。
目撃者は現れて来なかった……。
犯人は、まだ捕まっていない……。
アルトロが前に言ったこの言葉、僕は間違っていると思う。
「小島参謀の作戦立案は完璧過ぎる」
僕はそうは思わない。今回、小島参謀は失敗したのだと思う。
横浜のスナックで、彼らを全員逮捕し、彼ら、特に彼女には反省を促すべきだった。そして、今回、僕たちに解決を委ねるべきでは無く、他の人間に任せるべきだった……。
ただ、僕個人には教訓となった。
異星人であれ、誰であれ、人を殺すと言うことは、命を奪うと言うことは、こう言うことなのだと。
そして、改めて思い知らされた。それは、決して気持ちの良いものでは無いのだと言うことも……。
「こいつが犯人だったのね。私たちに拉致されたのを逆恨みにして、私たちのメンバーを殺していったのに違いないわ」
少女はそう言っている……。
違う! そうでは無い! 僕たちは、犯人じゃない!!
「さ、これでもう大丈夫よ。これからは私たちも安心ね」
違う! 君は勘違いしている。
「でも、ちょっと可哀想ね。だって、この人も、私たちみたいに、共生されていただけなのでしょう?」
「こんな奴に同情は不要だわ。掟を破って私たちの秘密をバラそうとしたんだもの。死んで当然よ!」
少女は、僕の予想もしないことを口にしていた。どうしたと言うのだ?
「怖いよ、その言い方……。どうしたの? 前は脅すだけだって言っていたのに……」
「あなたも死んだ方が良さそうね……」
「え、え? まさか……」
「そうよ。私は本当は、こんな奴、直ぐに殺してしまえばいいって思っていたのよ。でも、あなたたちが全員で反対するので出来なかった。そのせいで、私たちの秘密は、あの変な女にバレてしまったわ。あなたたちが悪い。だから、殺すのよ……。こいつも、あの女も、そして反対した、あなたたちも……」
僕たちは何故か、SPA-1に憑依を完了していた。そして、空中に浮かんだ状態で、この恐ろしい会話を聞いていたのだ。
アルトロは、少女が同胞を殺す寸前にそれを阻止した。二人の間に体を移動したのだ。
少女の表情は驚きに満ちている。だが、彼女は気付いたのだろう。この肉体に憑依しているのが、自分の同胞のアルトロだと言うことに……。
「どうやって、そんな身体を手にいれたと言うの?」
アルトロは答えなかった。ただ、彼は黙っているだけだった。そして、無言のまま後ろを指差したのだ。
「行け!」と言わんばかりに……。
彼女は後ろを向いて、二・三歩歩き出した。しかし、気が変わったのか、突然、こっちを向いて手にしていた槍状の武器を、僕に突き立てようとする。
勿論、そんなもの、SPA-1の身体に刺さりはしない。
次の瞬間、僕の右手の人差し指と中指が長く伸びて剣状に変わり、彼女の首を刎ね落としていた。
首を失った少女の身体は、学生服を血に染め上げながら、後ろに朽ち木を倒す様に倒れていく……。
僕は始めて人を、地球人を殺した。
相手は、天空橋さんや鳳さんと同じ、恐らくこれから、様々な未来が待っているだろう普通の女子高生。
それは、酷く苦々しく、後味の悪いものだった……。
僕が元の身体に戻った時、これも不思議な事に、僕の胸の傷は完全に治癒が終わっていて、痛みも全く感じない程に回復していた。
そして、SPA-1は異星人警備隊の科学班の回収作業を待たずに、瞬間移動でどこかに消えている。僕は命令などしていなかったのに……。
そして……。
白昼、女子高生が首を刎ねられて殺害されると言う猟奇的な殺人事件以降、不思議な連続殺人が起こることは、ピタリと無くなった……。
目撃者は現れて来なかった……。
犯人は、まだ捕まっていない……。
アルトロが前に言ったこの言葉、僕は間違っていると思う。
「小島参謀の作戦立案は完璧過ぎる」
僕はそうは思わない。今回、小島参謀は失敗したのだと思う。
横浜のスナックで、彼らを全員逮捕し、彼ら、特に彼女には反省を促すべきだった。そして、今回、僕たちに解決を委ねるべきでは無く、他の人間に任せるべきだった……。
ただ、僕個人には教訓となった。
異星人であれ、誰であれ、人を殺すと言うことは、命を奪うと言うことは、こう言うことなのだと。
そして、改めて思い知らされた。それは、決して気持ちの良いものでは無いのだと言うことも……。