天使降臨(2)
文字数 1,372文字
僕と鳳さんは、緊急事態の発生と判断し、急ぎ青嵐高校を下校して、そのまま異星人警備隊本部へと向かった。だが既に、僕たちが本部に到達する前に、被害者の数は十以上に及んでいたのである。
彼女は人類に、直接の危害を加えようとはしなかった。だが、地球上の生物の定義には含まれてはいないが、彼女も自己の種族を増やそうとする本能を持ってた様で、その影響は、彼女の現れた交差点を中心に大きく広がりつつあったのだ。
彼女の手首を掴んだ男は(周りにいた人々は、その人物を男だったと話しているが……)、彼は着衣を除き、彼女になってしまったのである。急な変化ではないが、銀色の髪の毛、蒼眼の瞳、透ける様な透明の肌、そして性別まで……。ほぼ一時間を掛けて彼は、その少女と全く同じ容姿に変わってしまっていたのだ。
身体の大きさも一回り縮んで、彼の服は中身とのバランスを著しく欠いていたそうだ。ただ、背中の部分だけが、新たに生えた翼の為に、奇妙な隆起を見せていたと言う。
まだ少女への変身前、この電気ショックで倒れた男を助けようと、近くにいた女性らが彼を助け起こしたのだが、彼女らにも彼に続いて変身症状が発生しつつあった。この時、助け起こした人たちは、みな電気ショックを感じたと言う。
こうして、この恐ろしい伝染性の怪現象は、瞬く間に付近の人々へと広まっていったのであった。
警察、医療関係者、そして僕たち異星人警備隊も、正直言って、これにはかなり対応に苦慮している。
触れると、同様に伝染する危険がある為、被害者の介護も儘ならず、他者に伝染させない様に、感染者を隔離する必要があったのだ。
だが、これを守らせるのは酷く難しかった。それに、発症開始まで数分掛かり、気付かず去ってしまった人も少なからずいた様である。
取り分け厄介だったのは、被害者が必ずしも被害を受けていると感じていなかったことだった。
被害者はゾンビの様に、人間を襲う化け物にされた訳ではない。吸血鬼の様に、あの少女に服従させられている訳でもなさそうだった。ただ、年寄りも、若者も、少年も少女も、ただ、銀髪の羽の生えた少女に外観だけが変っただけだ。当然、中身は元の人間だし、このまま元の生活に戻っても、殆どの人には影響など無かったのだ。
被害者が、被害者本人であることを証明するのは難しいかとも思われた。だが、変身現象はニュースで放送済みで、姿が変わっても誰も驚かなかったし、身分は持ち物などで証明できた。今後の社会生活は、一部の人間を除いては特に問題ないみたいだった。
因みに、一部の人間とは、僕の様な者たちのことだ。僕は少女になどなりたくない。僕が少女になったら、天空橋さんと付き合うと言う、僕の細やかな夢が潰えてしまうからだ……。
そう言うこともあり、被害者は僕たちの制止を振り切り、その姿のまま自由に行動をしたがった。その容姿は彼らにとって不快な物ではなかったのだ。その上、態々、自らの容姿、年齢、性別を捨て、その姿になろうと、被害者に寄って来る者も少なくは無かった。
そんな人たちを、被害者に近寄らせないようにガードすることも、僕たちは苦労させられた。
そうやって、僕たちが被害者の隔離に奔走している間に、最初の有翼の少女は姿を消し、僕たち異星人警備隊は、その行方も探さねばならなくなったのだ。
彼女は人類に、直接の危害を加えようとはしなかった。だが、地球上の生物の定義には含まれてはいないが、彼女も自己の種族を増やそうとする本能を持ってた様で、その影響は、彼女の現れた交差点を中心に大きく広がりつつあったのだ。
彼女の手首を掴んだ男は(周りにいた人々は、その人物を男だったと話しているが……)、彼は着衣を除き、彼女になってしまったのである。急な変化ではないが、銀色の髪の毛、蒼眼の瞳、透ける様な透明の肌、そして性別まで……。ほぼ一時間を掛けて彼は、その少女と全く同じ容姿に変わってしまっていたのだ。
身体の大きさも一回り縮んで、彼の服は中身とのバランスを著しく欠いていたそうだ。ただ、背中の部分だけが、新たに生えた翼の為に、奇妙な隆起を見せていたと言う。
まだ少女への変身前、この電気ショックで倒れた男を助けようと、近くにいた女性らが彼を助け起こしたのだが、彼女らにも彼に続いて変身症状が発生しつつあった。この時、助け起こした人たちは、みな電気ショックを感じたと言う。
こうして、この恐ろしい伝染性の怪現象は、瞬く間に付近の人々へと広まっていったのであった。
警察、医療関係者、そして僕たち異星人警備隊も、正直言って、これにはかなり対応に苦慮している。
触れると、同様に伝染する危険がある為、被害者の介護も儘ならず、他者に伝染させない様に、感染者を隔離する必要があったのだ。
だが、これを守らせるのは酷く難しかった。それに、発症開始まで数分掛かり、気付かず去ってしまった人も少なからずいた様である。
取り分け厄介だったのは、被害者が必ずしも被害を受けていると感じていなかったことだった。
被害者はゾンビの様に、人間を襲う化け物にされた訳ではない。吸血鬼の様に、あの少女に服従させられている訳でもなさそうだった。ただ、年寄りも、若者も、少年も少女も、ただ、銀髪の羽の生えた少女に外観だけが変っただけだ。当然、中身は元の人間だし、このまま元の生活に戻っても、殆どの人には影響など無かったのだ。
被害者が、被害者本人であることを証明するのは難しいかとも思われた。だが、変身現象はニュースで放送済みで、姿が変わっても誰も驚かなかったし、身分は持ち物などで証明できた。今後の社会生活は、一部の人間を除いては特に問題ないみたいだった。
因みに、一部の人間とは、僕の様な者たちのことだ。僕は少女になどなりたくない。僕が少女になったら、天空橋さんと付き合うと言う、僕の細やかな夢が潰えてしまうからだ……。
そう言うこともあり、被害者は僕たちの制止を振り切り、その姿のまま自由に行動をしたがった。その容姿は彼らにとって不快な物ではなかったのだ。その上、態々、自らの容姿、年齢、性別を捨て、その姿になろうと、被害者に寄って来る者も少なくは無かった。
そんな人たちを、被害者に近寄らせないようにガードすることも、僕たちは苦労させられた。
そうやって、僕たちが被害者の隔離に奔走している間に、最初の有翼の少女は姿を消し、僕たち異星人警備隊は、その行方も探さねばならなくなったのだ。