異星人警備隊(8)
文字数 1,290文字
僕もその日は、それで小島さんから解放され、家路に着くことが出来た。
僕は案内板に従ってビルの地下に降り、そこがそのまま地下鉄の駅になっていたので、そこの券売機で切符を買い、東京湾未来線の始発電車に乗り込むことにした。
しかし、不思議なことがあって、切符はどれも無料で購入出来るのだ。それに、この『警備隊本部前』なんて言う駅、東京湾未来線にはそもそも無かった様な気がする。
その説明は、僕の携帯に届いたメールがしてくれた。
「先程の案内板に書いてあったよ、この駅は一般人に解放されていない。ここから乗車すると、一般人の終点『東京シティパーク』の専用降車ホームに到着する。逆に乗る時は、『東京シティパーク』で乗換えて、『警備隊本部前』行きの専用乗車ホームに行くんだ。そこで『警備隊本部前』行き電車に乗ると言う訳さ」
僕は改札を通ろうとした。
だが、改札では切符の他にアプリの提示とパスワードの入力が求められたのだ。
「ここはある意味、入国審査や税関と同じ位、入出管理の厳しい場所だからね。『東京シティパーク』の専用ホームへの出入りの時も、同じ手続きが必要だよ」
有難いことに、もう一人の僕がメールで説明してくれる。
僕は一駅だけだが、始発でガラガラの東京湾未来線の七人掛けの座席の中央にどっかりと座った。発車まで暫く時間があるだろう。
しかし、僕にこんな異星人が憑りついていたなんて、今まで思いも寄らなかった。でも、それ程不快な気分はしない。むしろ、今まで分からなかった問題が全部解けたような、非常にスッキリした気分だ。
それに、もう一人の僕の言う様に、彼の存在は今までの僕に有利に働くことはあっても、不利に働くことなど一度もなかった。確かに僕の脳に行く筈のブドウ糖を幾らか消費しているのだろうが、それなら腸内善玉細菌だって似た様なものだ。僕にとって彼の存在は不快なものじゃない。
ただ、今回の彼の行動は僕の利益に反する行為だ。これまで彼がこんな目立つ行動を起こしたのは始めてに違いない。
「君の頭に直接語りかけていいかい?」
僕の携帯に新たな着信メールが届いた。確かに、彼の存在も僕は理解しているんだ。こんな面倒な手順を踏むことなど、もう必要ないだろう。
そう考えた直後、僕の脳にどこかで聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ありがとう」
「それが君の声か?」
「いや、君の記憶に残っている人の声を、私は借りたんだ」
「君のことは、何て呼べばいい?」
「名前? 考えたことも無かったな」
「じゃ、別人格ってことで、
「アルトロか、それでいいよ」
「僕はチョウと呼んでくれ。じゃ、話してくれよ、アルトロ」
「その前に、チョウの心をガードさせて貰うよ。私の秘密を、チョウの心から読ませる訳には行かないからね」
「小島さんか?」
「ああ、私は彼女を完全には信用していない。だから、自分の秘密も、あれ以上は話さなかった」
「秘密?」
「ああ、実は私は、チョウの脳から数分間なら離れることが出来るんだ」
「え? それって、もしかして……」
「ああ、数分間なら、超異星人になることが出来ると言うことさ」
僕は案内板に従ってビルの地下に降り、そこがそのまま地下鉄の駅になっていたので、そこの券売機で切符を買い、東京湾未来線の始発電車に乗り込むことにした。
しかし、不思議なことがあって、切符はどれも無料で購入出来るのだ。それに、この『警備隊本部前』なんて言う駅、東京湾未来線にはそもそも無かった様な気がする。
その説明は、僕の携帯に届いたメールがしてくれた。
「先程の案内板に書いてあったよ、この駅は一般人に解放されていない。ここから乗車すると、一般人の終点『東京シティパーク』の専用降車ホームに到着する。逆に乗る時は、『東京シティパーク』で乗換えて、『警備隊本部前』行きの専用乗車ホームに行くんだ。そこで『警備隊本部前』行き電車に乗ると言う訳さ」
僕は改札を通ろうとした。
だが、改札では切符の他にアプリの提示とパスワードの入力が求められたのだ。
「ここはある意味、入国審査や税関と同じ位、入出管理の厳しい場所だからね。『東京シティパーク』の専用ホームへの出入りの時も、同じ手続きが必要だよ」
有難いことに、もう一人の僕がメールで説明してくれる。
僕は一駅だけだが、始発でガラガラの東京湾未来線の七人掛けの座席の中央にどっかりと座った。発車まで暫く時間があるだろう。
しかし、僕にこんな異星人が憑りついていたなんて、今まで思いも寄らなかった。でも、それ程不快な気分はしない。むしろ、今まで分からなかった問題が全部解けたような、非常にスッキリした気分だ。
それに、もう一人の僕の言う様に、彼の存在は今までの僕に有利に働くことはあっても、不利に働くことなど一度もなかった。確かに僕の脳に行く筈のブドウ糖を幾らか消費しているのだろうが、それなら腸内善玉細菌だって似た様なものだ。僕にとって彼の存在は不快なものじゃない。
ただ、今回の彼の行動は僕の利益に反する行為だ。これまで彼がこんな目立つ行動を起こしたのは始めてに違いない。
「君の頭に直接語りかけていいかい?」
僕の携帯に新たな着信メールが届いた。確かに、彼の存在も僕は理解しているんだ。こんな面倒な手順を踏むことなど、もう必要ないだろう。
そう考えた直後、僕の脳にどこかで聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「ありがとう」
「それが君の声か?」
「いや、君の記憶に残っている人の声を、私は借りたんだ」
「君のことは、何て呼べばいい?」
「名前? 考えたことも無かったな」
「じゃ、別人格ってことで、
アルトロ
っては、どうだい?」「アルトロか、それでいいよ」
「僕はチョウと呼んでくれ。じゃ、話してくれよ、アルトロ」
「その前に、チョウの心をガードさせて貰うよ。私の秘密を、チョウの心から読ませる訳には行かないからね」
「小島さんか?」
「ああ、私は彼女を完全には信用していない。だから、自分の秘密も、あれ以上は話さなかった」
「秘密?」
「ああ、実は私は、チョウの脳から数分間なら離れることが出来るんだ」
「え? それって、もしかして……」
「ああ、数分間なら、超異星人になることが出来ると言うことさ」