異星人警備隊(7)

文字数 1,062文字

 その部屋の中央には、巨大なビーカーの様な水槽に、素っ裸の男性の屍体が浮かべられていた。
 小島さんの言葉から察するに、この屍体が超異星人と言うことになる。だが、僕には普通の人間の屍体にしか見えなかった。
「これが今までの、どの異星人よりも強力な戦闘力を持った超異星人よ。勿論、今では単なる死骸だけどね」
 僕の携帯が彼女に説明を求めてきた。
「この超異星人の死骸で、何をしようとしているのですか?」
「彼の死骸には運動する為の筋力が残っており、超能力を実現する脳が残されている。この肉体を植物人間として蘇生させ、AIで肉体を制御することが出来れば、私たちは超異星人の戦闘力を手に入れることが出来るという訳なの」
「では、小島さんが思い付いた良い事とは、一体何ですか?」
「君の種族は憑依できるのよね。それなら、実現の可能性が五分五分のAIなどより、君の種族の誰かが憑依した方が遥かに超異星人を制御できる可能性があると思ったの。どうかしら?」
「それは不可能です。私たちの種族は胎児と共に成長しなくてはなりません。成人男性の肉体には、我々の幼生は共生できませんよ」
「だったら、君自身ならどう?」
「我々は宿主を変更することは出来ないと、先程言った筈ですよ」
「それは残念ね。ところで、ここまで最高機密を知った君たちを、このまま私が帰すと思う?」
「これも言った筈ですよ、宿主が生命の危機に直面したら、私は全力で宿主を守るってことを」
「フフフ、冗談よ。私も仲間の口を封じようなんて思っていないわ。信じるか信じないかは君たち次第だけど……」
 僕は額から脂汗が流れるのを感じた。考えてみれば、この小島さんと言うのは異星人だ。この姿だって、人間に擬態しているだけかも知れない。
「もう一つ訊き忘れたことがあるわ。君たちの種族の交尾って、『精神的な交流を持つことだ』って言っていたけど、具体的にはどうするのかしら? 宿主同士がセックスしなければならないのかしら?」
「それを聞いて何の意味があるのですか?」
「単なる生物学的な興味よ」
「宿主がセックスしなければならないのでは、共生していない相手を宿主がパートナーに選んだ場合、我々は繁殖できなくなるじゃないですか? 会話でも、電話でも、コミュニケーションが取れれば充分ですよ」
「ふ~ん、なら、君は今、私とセックスの真っ最中ってことかしら?」
 小島さんの言葉を最後に、僕の携帯は何も反応しなくなった。それがもう一人の僕の答えであることは間違いない。だが、それが肯定なのか否定なのかは、僕にも全く判別が付かなかった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み