千羽鶴の贈り物(3)
文字数 1,260文字
僕は家へと帰り着く前に、天空橋さんの家に寄った。
ヘタレの僕は、天空橋さんの家の前まで行って、チャイムも押すことなく帰ったことが幾度となくある。
もう、ストーカー以下だ……。
ま、そんなこともあり、僕には道案内なんか無くとも、天空橋さんの家なら直ぐに分かるのだ。
天空橋さんの家は、以前は大きな庭があった家だったのだが、比較的最近に立て直し、良く見る新築戸建ての、『奇麗な家』と言った外観に、今ではすっかり変わっている。
僕は、一台分の駐車スペースの脇にある、コンクリ打ちっ放しの通路を進んでいった。その通路の先に天空橋さんの家の玄関ドアがあって、ドアの手前にはネームプレートとインタフォンの付いた柱の様な物が立ってる。
今回、僕はなんとか、そのインタフォンのボタンを押すことが出来た。
「はい、どちら様でしょう?」
男の人の声がする……。
「鈴木と言う者ですが、渡さんいらっしゃいますでしょうか?」
「あ、先輩? ちょっと待ってくださいね、姉貴呼んできますから」
どうやら、インタフォンに出たのは天空橋さんの弟の架 君の様だった。僕は彼の印象があまり無いのだが、彼は僕のことを先輩と思ってくれているらしい。
それにしても、天空橋さんのお父さんじゃなくて良かった……。お父さんが出てきて、「もう日も暮れたと言うのに、娘に何の用なのだね?」とか「君は娘の何なんだね?」とか言われたら、本当にどうしようかと思った。
暫く待つと、天空橋さんがドアを開けて、出てきてくれた。
「あ、鈴木君、ご免ね、態々来て貰ったりして」
「いや、天空橋さんの家はそんなに遠く無いしね。それに、僕の方で千代紙買えばいいのに、天空橋さんの分を分けて貰うなんて、こっちの方こそ済まないと思っているんだ」
確かに自分で買えば良かったのだが、それでは天空橋さんに会う機会を逃がすことになる。狡い僕は、店で買えば良いのを分かっていながら、敢えて天空橋さんから分けて貰う事にしたのだ。
「そんなことないよ。一人で折れるかなって、調子に乗って一遍に千枚買っちゃったんだもん。それに、別々に買うと、鶴のサイズが二種類になっちゃうしね」
はあ、そう言って貰えると、少しは僕も心が安らぐ。
「でも迷惑じゃなかった? 鈴木君は鈴木君で、プレゼントを考えていたんじゃない?」
「迷惑だなんて! 正直、何を持って行ったらいいか、僕も途方に暮れていたんだ!」
これは本当のこと。
「じゃ、取り敢えず、半分の五百枚渡すね。もし足んなくなったら、また取りに来てね」
天空橋さんはそう言って、僕に和紙千代紙の束を五個を手渡してくれた。
僕はそれを受け取ると、本当はまだずっと話していたかったのだが「じゃ、また明日」と言って彼女と別れ、家路に就くことにした。
天空橋さんは、僕に渡した千代紙の枚数について、「足んなくなったら」と言っていたが、恐らく「足んなくなる」などと言うことはなく、僕の分を天空橋さんに渡すことになるのだろう。
まぁ、それでも、せめて二百五十は何とか自分で折りたいところだが……。
ヘタレの僕は、天空橋さんの家の前まで行って、チャイムも押すことなく帰ったことが幾度となくある。
もう、ストーカー以下だ……。
ま、そんなこともあり、僕には道案内なんか無くとも、天空橋さんの家なら直ぐに分かるのだ。
天空橋さんの家は、以前は大きな庭があった家だったのだが、比較的最近に立て直し、良く見る新築戸建ての、『奇麗な家』と言った外観に、今ではすっかり変わっている。
僕は、一台分の駐車スペースの脇にある、コンクリ打ちっ放しの通路を進んでいった。その通路の先に天空橋さんの家の玄関ドアがあって、ドアの手前にはネームプレートとインタフォンの付いた柱の様な物が立ってる。
今回、僕はなんとか、そのインタフォンのボタンを押すことが出来た。
「はい、どちら様でしょう?」
男の人の声がする……。
「鈴木と言う者ですが、渡さんいらっしゃいますでしょうか?」
「あ、先輩? ちょっと待ってくださいね、姉貴呼んできますから」
どうやら、インタフォンに出たのは天空橋さんの弟の
それにしても、天空橋さんのお父さんじゃなくて良かった……。お父さんが出てきて、「もう日も暮れたと言うのに、娘に何の用なのだね?」とか「君は娘の何なんだね?」とか言われたら、本当にどうしようかと思った。
暫く待つと、天空橋さんがドアを開けて、出てきてくれた。
「あ、鈴木君、ご免ね、態々来て貰ったりして」
「いや、天空橋さんの家はそんなに遠く無いしね。それに、僕の方で千代紙買えばいいのに、天空橋さんの分を分けて貰うなんて、こっちの方こそ済まないと思っているんだ」
確かに自分で買えば良かったのだが、それでは天空橋さんに会う機会を逃がすことになる。狡い僕は、店で買えば良いのを分かっていながら、敢えて天空橋さんから分けて貰う事にしたのだ。
「そんなことないよ。一人で折れるかなって、調子に乗って一遍に千枚買っちゃったんだもん。それに、別々に買うと、鶴のサイズが二種類になっちゃうしね」
はあ、そう言って貰えると、少しは僕も心が安らぐ。
「でも迷惑じゃなかった? 鈴木君は鈴木君で、プレゼントを考えていたんじゃない?」
「迷惑だなんて! 正直、何を持って行ったらいいか、僕も途方に暮れていたんだ!」
これは本当のこと。
「じゃ、取り敢えず、半分の五百枚渡すね。もし足んなくなったら、また取りに来てね」
天空橋さんはそう言って、僕に和紙千代紙の束を五個を手渡してくれた。
僕はそれを受け取ると、本当はまだずっと話していたかったのだが「じゃ、また明日」と言って彼女と別れ、家路に就くことにした。
天空橋さんは、僕に渡した千代紙の枚数について、「足んなくなったら」と言っていたが、恐らく「足んなくなる」などと言うことはなく、僕の分を天空橋さんに渡すことになるのだろう。
まぁ、それでも、せめて二百五十は何とか自分で折りたいところだが……。