小島参謀の秘密(8)

文字数 1,129文字

 小島参謀が立ち去った後、僕と鳳さんは特に話すことも無くなって、何となく気まずい雰囲気に包まれていた。
「じゃ、僕帰ります……」
「うん、じゃ、また明日ね……」
 僕はそう小さく呟いて立ち上がり、鳳さんはそれに小さく答えた。
 学校の傍まで戻ろう。そこからバスに乗って帰るんだ。

「アルトロ、僕たち本当に小島参謀を調べて良かったのだろうか? なんか、折角、仲良くしてくれている仲間を疑ったみたいで、凄く後味が悪いんだけど……」
「チョウ、当然でしょう? 彼女は私たちに隠し事をしているのですから」
「確かに、そうかも知れないけど、鳳さんまで巻き込むこと無かったんじゃないか?」
「いいえ、もし小島参謀が敵だった場合、このままでは、一番傷つくのがストラーダ隊員です。その前に彼女は小島参謀の正体、最低でも敵か味方かを、自分で調べて知るべきです」
「だったら、僕たちで調べて、もし敵だったら、その時にそう教えてやればいいじゃないか!」
「彼女が自分で調べて、自分で答えを見つけなければ、人に言われても絶対に納得しないと思います!」
「そんなこと、あるものか!」
 僕はアルトロが心の中にいるのが悔しかった。僕はアルトロの言ったことを口では否定しているけど、実際、彼の言うことの方が間違っていないことを知っているのだ。そして、アルトロは、僕がそれを知っていることを知っている。
 アルトロは、それから暫く僕に何も話しかけては来なかった。

「あ、鈴木君、こんなに遅く珍しいね」
 僕は、バスを待つ列の中に、憧れの天空橋さんがいるのにも気付かなかった。確かに彼女は部活動の帰り、僕が寄り道すれば同じバスになっても不思議は無かった。
 僕は天空橋さんの隣に腰掛ける。本当は別の席に座りたかったのだが、態々別の席に行くのは、彼女を嫌っていると勘違いされそうなので嫌だったのだ。
「何やってたの?」
「鳳さんちで調べもの……」
「そっか、仲、いいんだね」
 きっと、これで僕は天空橋さんに二股掛けの最低男と思われただろう。なんか、これでいい様な気がする。間違いなく僕は最低男なのだから……。
 その後、僕と天空橋さんは無言でバスを降り、無言のまま同じ電車に乗った。以前は態と遠くに離れてチラチラ見ていたものだったが、今は隣に座っている。ただ、今は彼女の方に視線を向けることは無い。
 僕と天空橋さんは家路を歩いて行った。
 僕が少し前を歩き、彼女が直ぐ後ろを歩いて行く。当然、何も話さないし、後ろを振り向くこともしない。
 彼女の家の方向との分かれ道に来た。
 僕は彼女の方をやっと振り返り、聞こえないくらい小さい声で「さよなら」と言った。だが、天空橋さんは何もそれに返さず、無言のまま彼女の家の方へと歩いて行ったのだった。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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