天使降臨(4)

文字数 1,495文字

 翌日から僕は、高校を休んで、昼の間中、都内の至る所をヌディブランコでパトロールして回った。家族には、前回の怪我の経過確認と言うことで、数日間検査入院しなければならなくなったと、少し苦しい説明をしている。
 もし、ヨーコのことさえ無ければ、みんなで楽しいドライブ……てな感じだったのだろうが、そんな気持ちの余裕は、今の僕たちには欠片も無い。ヨーコを見つけたら、被害者が出る前に、即、射殺しなければならないのだ。ヨーコと言う、人間と全く同じ姿をした、人類に何の危害も加えていない異星人のことを……。

 そんな僕たちが、ヨーコの情報を得たのは、パトロールを開始して2日目のことだった。
 小島参謀が、彼女独自の情報網を駆使したのか、ヨーコ出現とほぼ同時に、彼女の出現場所を携帯の警備隊専用アプリで僕たちに知らせてきた。
「川崎隊長、ヨーコは銀座四丁目の交差点に出現したわ。私もこれから直ぐに現地に急行します。あなた達もヌディブランコで直ちに向かってください」
 池尻大橋から三軒茶屋方面に向かっていたヌディブランコ1号は方向を変え、銀座へと道を急いだ。

 僕たちが銀座に着いた時、既に銀座四丁目交差点には人だかりが出来ており、ウミウシを停める場所など、どこにも見当たらなかった。僕たちは、昭和通りと中央通りの間、銀座三原通りという裏道にウミウシを停め、人だかりを掻き分け、急いで中へと進んで行ったのだ。しかし、そこには、驚くべき光景が展開されていたのである。
 ヨーコは間違いなく銀座の交差点に存在していた。だが、彼女の周りには同じ容姿をした少女が何人も存在し、拳銃を向けている世界政府軍兵から、ヨーコのことを守ろうと、自らを盾にして彼女を囲んでいたのだ。そして、それを警官隊に抑えられた野次馬が、遠巻きにしてグルリと取り囲んでいたのである。
 川崎隊長と港町隊員も、この状況は流石に予想外だった様だ。
「どうやら、世界政府の考えも我々と同じ様だな。それにしても、どうしたんだ、これは? ヨーコが自分のコピーを操っているのか?」
「そうじゃないわ。人間が勝手に彼女を守っているのよ。そうして、彼女と同じ容姿に変わってしまったの」
 僕たちの後ろに、いつの間にか小島参謀が立っていた。僕は彼女の方に振り向いて、次の作戦を確認する。
「どうするんです? このまま人間の盾の隙間を狙って、ヨーコを狙撃するのですか?」
「それとも、人間ごと射殺するかい? その方が早いぜ、参謀殿!」
 港町隊員の冗談に、小島参謀は真面目に返事を返す。
「それも良いけど、その決断は世界政府に任せましょう。私たちが貧乏くじを引くことは無いわね。その替わり、港町隊員は彼女の出現の画像を取得し、メインコンピュータにそれを転送して! 隊長とチョウ君は、ヨーコが変な動きをしないか監視よ!」
 小島参謀の作戦は現状待機だった。だが、実際、僕たちは殆ど待機することは無かったのである。

 それは、世界政府側の準備が整った為か、あるいは、ヨーコが新たな行動を起こそうとしたからなのか、その何れかだったのだろう。政府軍の兵士が、盾となって少女化した市民に向けて、突然、発砲をし始めたのだ。
 彼らは本気で、市民ごと射殺することを選択したと言うのか?!
「違うわ、チョウ君。政府軍は少女化した人間を麻酔弾で眠らせたのよ。彼らに暴れられても困ると言う判断なのでしょうけどね。そうであっても、市民に向けて発砲するなんて、暴挙としか言い様がないわね」

 それでも僕は、これですぐに、事件はヨーコの死をもって解決するものと考えていた。だが、ヨーコはそんな甘い敵では無かったのである。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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