小島参謀の秘密(4)

文字数 1,766文字

 僕が話そうとするのを抑えて、アルトロは鳳さんと話を続けていく。
「仮りにですよ、私がその様な恐ろしいスパイ異星人だったとしましょう。であれば、鳳さん、いや、今はストラーダ隊員とお呼びした方が良いのかな? 今のあなたは、非常に危険な状況にあると思いませんか?
 簡単に言うと、私があなたの口を封じるとは考えないのですか? 今、ここには、あなたと私しかいないのですよ」
「そうね。そうだったら、あたしはここで殺されるわね。あたしに出来ることは、ただ、あなたの正体を異星人警備隊の仲間に伝えることくらい……。でも、それすら信じて貰えないでしょうね。みんな、あなたを普通の人間だと信じ込んでいるのだから……」
 おい、アルトロ、何を考えているのだ。まさか、本当に鳳さんを殺そうとしているんじゃ無いだろうな?
「でも、あなたが訓練された非情なスパイで、あたしを殺すことに何も躊躇(とまど)いも持たない人だったとしても、あたしは、あれだけは真実だと信じたいの」
「何ですか?」
「あなたの、天空橋さんへの気持ち……。
 あれだけは真実だったと信じたい。あたしを殺すことは出来ても、天空橋さんを悲しませることは出来はしないと信じたい。天空橋さんも人間なのよ。彼女の生活を壊すこと、人間の世界を壊すこと、あなたは決して、そんなことしないと、あたしは信じたい……」
「あの日、私と天空橋さんの後をつけて、盗み聞きしていたのですね……」
「ええ、ご免なさい。彼氏の浮気の現場を取り押さえたかったの」
「ははは……」
 アルトロはそこで言葉を切った。もう鳳さんと話す必要は、彼には無い様だった。ここからは僕が話そう。もう、全てを……。

「鳳さん、僕は本当に普通の人間です」
「ま、まだ言うの?」
「でも、僕の身体の中には、もう一人の僕、異星人が住んでいるのです。だから、僕は人間でありながら、彼の力を借りて、異星人の特殊能力を使うことが出来るんです」
「それって、寄生されてるってこと?」
「彼は寄生ではなく、片利共生と呼んでいました。でも、僕は少なくとも彼のお蔭で幾度も命を救われている。神戸の時も、ビル爆破事件の時も。僕にとっては片利ではなく、相利共生と言った方が正しいですね」
「それが、あなたの秘密だったのか……。いいわ、今はあなたの言うことを信じましょう。でも、だったら何で、世の中に公開しないの?」
「いや、それは……」
「チョウ、それは私から話そう」
 その時、僕の心の中で別の意識が僕に語り掛けてくる。そして言葉の通り、彼は僕の替わりに話し出した。
「我々は宿主の脳に電子パタンとして共生するタイプの異星人です。ストラーダ隊員の仰る通り、多くの人は寄生生物として我々のことを恐れています。でも、我々は決して人間に害を為す者ではありません。人間と共に生きて行こうとする者なのです。私はそれを、いつか人間にも分かって欲しくて、異星人警備隊員としてチョウと共に人間の為に戦っているのです。私のことを、人間の仲間だと証明する為に!」
「だったら、どうして……? せめて、異星人の集まりである異星人警備隊のメンバーになら、それを話しても良いでしょう?」
「別に警備隊員の皆さんに隠す心算など、始めは無かったのです。勿論、小島参謀には話しをしました。でも、彼女はそれを他の隊員に伝えなかったのです」
「なぜ?」
「分かりません……」
「そういえば、鈴木君たちは、超異星人のことも知っていたよね。あの変身ヒーローが出てきても驚かなかったし、私が『SPA-1は超異星人だ』と言っても、超異星人が何かとは訊ねもしなかった……。あれも?」
「それも、私たちは小島参謀から聞いていました。でも、超異星人の存在について、小島参謀は私たち以外には何故か誰にも話していない様です。勿論、ストラーダ隊員は、聞かなくても知っていたでしょうけど……」
 アルトロに憑依能力があると言う程度のことで、彼女は超異星人の秘密を僕に明かしたのだ。秘密にする理由があるなど、僕にはとても信じられない。しかし、確かに港町隊員や東門隊員には、何故かそれを知らせていない様なのだ。
「彼女は間違いなく何かを隠しています。何を隠しているのか? そして何の為か? それが私には全く分からないのです」
「参謀を、調べろって言うの?」
「ええ、是非お願いしたいのです」
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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