異星人警備隊(5)

文字数 1,423文字

 その日、異星人警備隊の面々は初日と言うこともあり、特別な任務にも就かず、そのまま解散ということになった。
 勿論、連絡が可能になる様に、携帯に特殊専用アプリをインストールさせられ、それで川崎隊長からの指示を受けられる様にはなっている。また、各自の虹彩画像とパスワードを登録することで、作戦室への出入りも自由に許可された。
 但し、僕だけは話しがあるとのことで居残りをさせられ、作戦参謀の小島さんと2人で作戦室に残っている。

「鈴木君って言ったわね」
「はい」
「君、この募集のポスターに何て書いてあったか覚えている?」
「良く覚えていないのですけど、確か、営業職と事務職を急遽募集、高給優遇って書いてあった気がします」
「本気で言っているの? でも、高校生の君が、だったら何で態々こんな形で就職活動していたのかしら?」
「僕の中のもう一人の僕が、メールで僕に指示してきたからです。何か、彼には逆らえない様な気がして……」
「そうか……。じゃ、私が話さなければいけないのは、君じゃなくてもう一人の君ってことなのね。悪いんだけど、彼を出してくれないかな?」
 その時、僕の携帯から着信バイブレーションが響いてきた。恐らく、もう一人の僕からの連絡メールだろう。
 僕は携帯を確かめた。案の定、彼は僕に、こんな感じのメールを送っていたのだ。
「始めまして小島さん。あ、勿論、私は募集要項を読めていますよ。『地球に生きる異星人諸君、地球人は君たちの存在を認識している。地球人の中には異星人は全て駆除すべきと言う意見もあるが、我々はその様な意見に対し、異星人と言っても平和な暮らしを望む者もいると訴え続けてきた。だが、異星人の特殊能力を、多くの人類は無知にも恐れている。今、我々はその力も平和利用できると信じ、異星人自身による平和維持活動を行う警備隊を組織しようと思う。来たれ、平和を愛する異星人諸君! 君たち自身の手によって、異星人は平和を愛する共存可能な存在であることを証明しようではないか!』って、確かこの様な文面だった気がします。私はこれを読んで、彼に面接(ここ)に来て貰ったのです」
 僕の携帯を覗き込み、僕の出した僕宛てのメールを読んだ小島さんは、僕宛てのメールの返答を僕の方にすると言う、なんとも不思議な会話をしかけてきた。
「成程ね。で、君と鈴木君との関係はどうなっているの?」
「私と彼は共生しているのです。我々の種族は、肉体を持たない精神だけの共生型異星人で、他者の脳の空き容量に自分の精神パタンを植え付け、共生して生きていくのです。ま、宿主には何の得も無い、一方的な片利共生ですけどね。
 感覚的には憑依と言ったイメージが一番近いかと思います」
 彼はそうメールで返事を返してきた。
「ふ~ん、それで、どうして異星人警備隊に志願したのかしら?」
 彼の答えはこうだった。
「我々の仲間は、数多く地球人と共生しています。しかし、そのライフスタイルから、他の異星人には寄生虫の様に思われ、駆除の対象にされてしまうのです。
 そうした訳で、我々は、自分たちの存在が皆に知られるのを酷く恐れています。そして、異星人警備隊の設立に、とても脅威を感じているのです。
 ですから、逆に私が異星人警備隊の一員となり、そうすることで、まず地球人の敵ではないことを証明し、ひいては我々の仲間への不当な攻撃がされないよう、彼らの代弁者として、いつでも仲間を弁護できる立場となりたい。そう私は考えているのです」
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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