ナギイカダの反乱(1)

文字数 1,660文字

 あの出来事があってからは、僕と鳳さんが親しく話をすることは無くなった。だからと言って、これ幸いと天空橋さんと付き合い始めたかと言うと、そんなことも無く、僕は天空橋さんとも、昔以上に疎遠な間柄となっていた。
 周り(特に男子)からは、「二股野郎がいい気味だ」と言う声が聞こえて来ているが、別に僕は反論する気も無く、淡々と学校の授業を受け、それが終わるとすぐさま家路につくという日々を過ごしている。
 鳳さんは、糀谷光から猛烈なアプローチを受けている様であったが、彼女は男など、もう全く興味が無いとばかりに、光の涙ぐましい努力を素っ気なくあしらい、僕同様に授業が終わると、さっさと学校から帰っていた。
 放課後のストラーダ隊員の行先は、大体が異星人警備隊本部で、そこでSPA-1の精度向上を模索する傍ら、警備隊の新兵器の開発に勤しんでいるらしい。
 僕も無料パスを持っているので、二日に一度位は警備隊本部に顔を出す様にはしていたが、例によってお客様扱いのまま、特別パトロールを言い付かることもなく、おざなりに会議に出席させて貰うだけの存在であった。
 作戦室に常駐しているのは、港町隊員、東門隊員、大師隊員と川崎隊長のうちの何れかで、僕と親しく話す人などはおらず、偶に休憩室でストラーダ隊員と顔を合わせることがあっても、彼女とはお互い軽く会釈を交わすだけで、何も話すことはなかった。
 その中で相変わらずだったのが、隊長付き秘書兼作戦参謀の小島さんで、彼女は僕にも親しく話を仕掛けてくる唯一の人だった。

 休憩室で僕が缶コ―ヒーを飲んでいた時、後から小島参謀が気さくに話し掛けてきた。
「どう、退屈していない?」
「別に退屈ってことは無いですよ。本来なら僕なんか、ここにいなくても良い様な人間ですからね……」
 彼女は僕の返事を聞きながら、自販機でブラッドオレンジの缶ジュースを買い、そのプルトップを開けていた。
「そんなこと言わないで……。そうね、次の作戦行動を川崎隊長に推薦してあげるわ。今度の土日だけど、別段用事なんかないわよね。デートとかの……」
 僕は「別にいいですよ……」と言う心算だったのだが、「デートか?」と言われたので、ついイラっとして「用事などありません!」と答えてしまっていた。
 正直、僕は退屈などしていなかったし、作戦行動への参加は、あまり気が進まなかった。何故なら、他の隊員の迷惑そうな顔を見るのが、嬉しいものではなかったのだ。

 その日、僕が形式だけの心算で出席した会議では、異星人警備隊職員連続殺害事件に関する調査が主な議題となっていた。
「港町隊員による現場の過去確認により、井荻職員は怪しい異星人に殺害されたとものと考えて間違いない。ただ、犯人は厚手のセーターに鳥打帽、マスクとサングラスと、どの様な人相かは元より、何星人であるかの判別も付かない状態だ」
 川崎隊長の説明に、大師隊員が質問を投げかける。
「どうして異星人って決めてかかるの? それだけじゃ、人間が犯人の可能性だって捨てきれないんじゃない?」
「それについては、東門隊員の方からの調査結果を説明して貰います」
 隊長の言葉に、東門隊員が調査結果をまとめた資料を配り、説明を開始する。
「事件現場の残留物に、植物のものと思われる揮発成分があったため、これを私の方で調査致しました」
「揮発成分?」
 僕はおまけなのに、思わず声を出してしまう。それで皆に睨まれるかと思ったが、小島参謀が素早く僕の疑問に答えてくれた。
「青葉アルコールや、青葉アルデヒドとかのこと。よく緑の香りって言うでしょう? あれのことよ」
 東門隊員が一つ咳払いをして説明を続ける。
「その成分を分析したところ、それは植物のものではなく、植物体異星人のものと判明いたしました」
「植物体異星人?」
 この発言は、僕ではなくストラーダ隊員のものだ。これにも小島参謀が補足を加える。
「ええ、地球上の植物に擬態して生活する異星人で、その多くは葉緑体を持ち、地面への固着生活をして、植物の様に一生を終える者たちよ」
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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