イタリアから来た少女(2)

文字数 1,383文字

 小島参謀。本名、シンディ小島。
 人の心を読む異星人としか、僕は彼女のことを知らない。逆に彼女は、僕の心の中にもう一人の僕、アルトロが存在することを警備隊の中で唯一知っている。
 彼女はデスクに腰掛け足を組むと、早速僕に新たな作戦指示を与えてきた。
「君、作戦行動参加禁止になったでしょう? 悪いけど、女の子を一人エスコートする為に神戸に行って欲しいのよ」
「え、良く知ってますね。そうですよ。僕は隊員失格だそうです」
 正直、言葉のアクセントが若干投げ槍になっている。それはそうだろう。さっき隊員失格のレッテルを貼られたばかりなのだ。
「それは知っているわよ。私が助言(サジェスチョン)したんだもの。『彼はもう少し実地演習が必要だ』って」
「え? 小島参謀が?」
「勿論! だって君に是非この役目をやって欲しかったの……」
「でも……」
 僕がそういうミスをしたものだから、それに便乗したってことか?
 彼女は僕の表情を読んだのか、そのことについて説明をしてくれるようだ。
「君、本当にテロリストが、君のミスで監視に気が付いたと思っているの?」
 え? どういう事なんだ?
「そんなの分かる訳ないでしょう? 誰かが彼に監視されていることをリークしたのよ。テレパシーを使って」
「え、まさか……」
「あんな奴、いくらでも探し出せるわ!」
 小島さんは、僕の驚愕の表情なんか全く無視して話を続けてくる。
「これは実は結構大切な任務なのよ。それ程、彼女は重要人物ってこと。だから、是非君にこの役目を引き受けて欲しかったの」
 小島さんは僕に一枚の写真を手渡した。その写真は、映画スターの様な、金髪の美しくて若い女性のポートレートだった。
「凄い奇麗な金髪ですね……」
「あら、奇麗なのは髪の毛? でも、髪の毛は染めているわね。彼女、まつ毛が黒くて目元がハッキリしているでしょう? 顔立ちがラテン系だし、きっと黒い髪よ。あっちでも金髪美人の方が受けが良いそうだから、染め替えているのかもね。まあ会う時は髪の毛を別に染め替えているかも知れないから、君も十分気を付けてね」
 しかし、小島さんって、妙なこと詳しいな。
「彼女の名前は、ストラーダ・インドゥストリアーレ。イタリアーナの美少女よ」
「で、でも、何故、僕に?」
「こんな若い女の子のエスコートだもの、他に適役がいないでしょう? 若い男の子の」
「えっ?」
 僕は正直ドキドキしてしまう。既に顔は真っ赤になっているに違いない。
「嘘よ。これは極秘作戦なの。他の人だと、私の様な心を読める異星人に掛かっては、背中に作戦内容を掲示して歩いている様なものだわ。だから、心を読めない様にガードをしている君に頼むしかないのよ」
 まぁ、そんなものだろう。僕は少しがっかりした。だが、小島さんは僕の心のガードも知った上で指示している様だ。
「じゃ、宜しくね。詳細はアプリに送信しておくから……。それから、交通費などは後で全額支給するけど、とりあえず自腹で払っといて」
「え!!」
 彼女は僕の表情を読んだのか、自分の財布を出して僕に5万円を手渡した。
「いい? 領収書には気を付けてね」
「はい、ちゃんと書いて貰います」
「違う! 間違っても領収書なんか貰っちゃ駄目! 金額はちゃんと計算するから……。これは、君のプライベートな旅行なの。だからアプリの無料パスの使用も禁止だからね」
 僕は小島さんに強く念を押された。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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