ナギイカダの反乱(8)
文字数 1,544文字
意識を取り戻した時見た光景は、僕が予想もしていなかったものだった。
僕は東門さんの肩に担がれ、運ばれていたのだが、僕たち二人の前方には、まだ無傷のナギイカダが、僕たちのことを待ち伏せしていたのだ。
「しまった、二手に別れていたのか!」
「生気もだいぶ消費している。もうSPA-1には憑依できない。チョウ、こっちの方は、私の力だけで闘わなくちゃならないよ!」
僕はアルトロの言葉に気合を入れ直した。だが、それでも恐れる敵ではない。所詮は動ける様になっただけの植物みたいなものだ。それに、トゲトゲ以外には特に武器はなさそうだし……。
この僕の余裕も、流石にそれを見た時には引っ込めざる得なかった。裏庭から、上部が刈り込まれているナギイカダが追いかけて来たのだ。奴らは死んではいなかった!
「ガラム、ここは私が何とかするから、あなただけでも逃げて!」
東門隊員は何か混乱しているらしく、僕を庇おうとして僕を後ろに隠した。でも、僕の方が東門隊員の護衛なのだ。僕が闘わなくては……。
その時、僕の体はアルトロに乗っ取られた。体の自由が利かない。アルトロ、何を考えているのだ?
アルトロは突然、背伸びして東門隊員を抱き締めて唇を奪った。最初、彼女は抵抗しようとした様だったが、直ぐにそれを諦め、両手をだらりと下げ、僕の為すがままになる。
そうして、呆然として動けなくなった東門隊員を、壁に寄りかからせる様に座らせ、アルトロは敵の集団に向かっていった。
「貴様たち人類は、我々を『同じ地球に住む友達』だとか言いながら、我々や植物を自分たちの目的の為に、好きな様に利用してきた。我々は人類の為に存在する奴隷ではない。我々こそが地球に住む民だ。我々は人間から地球を奪い返し、我々と植物の為の楽園を造るのだ!」
東門隊員の音声翻訳装置が、彼女の胸元から、ナギイカダの言葉を翻訳する。しかし、後ろから話し声が聞こえるのって、なんか気色悪いなぁ。
「うん、確かにそうかも知れない。でも、話し合うことも出来るのじゃないのか? 戦っても、お互いに傷付くだけだろう?」
「ははは、我々は無敵なのだ。お前たちに勝ち目などない!」
「それは、どうかな?」
僕はそう言って不敵に笑っている。しかし、あまりに無防備じゃないのか? 何の構えも取らないで敵の只中に歩いて近づくのは!
そら来た。
僕がそう思った様に、敵は一斉にトゲトゲの葉の付いた枝を伸ばし、僕を縛り上げ、拘束しようとする。だが、意外なことに、その枝は僕を捕らえることが出来なかった。
彼らはアツアツの鍋の淵に触れたかの様に、その触手を反射的に引っ込めたのだ。
「僕の体の周りには、八百度近い高温の気流が取り巻いて、僕をガードしているんだ。君たちは僕に手を出すことなど出来ないよ」
僕はそう言って、鉢の一つをじっと眺める。
「やはり、上部は本物のナギイカダの様だね。接ぎ木して擬態したと言う訳か……。で、本体は……、成程、成長点、根の生え際か。そこに脳もある様だ」
僕は上部の刈られたナギイカダの、茎の部分を左手でむんずと掴む。すると、その一瞬で上部が大きな焔をあげて燃え上がり炭へと変わっていく。
「僕の左掌は、気流の温度なんて物じゃないよ。この手を鉢に突っ込んだら、一瞬で鉢の中の水分は熱湯となる。いや、土自身が解けて溶岩の様になるかも知れないな……」
音声変換器からざわざわと声が聞こえる。彼らも恐怖を感じている様だ。
「さぁ、降伏しなよ。僕は君たちを殺したいとは思っていない。降伏すれば、きっと異性人警備隊は君たちを悪くはしないだろう」
暫くして、彼らの一人の声がする。
「本当か?」
「約束は出来ないが、犯人でない君たちを殺すことは無いと思うね」
犯人でない? どう言うことだ?
僕は東門さんの肩に担がれ、運ばれていたのだが、僕たち二人の前方には、まだ無傷のナギイカダが、僕たちのことを待ち伏せしていたのだ。
「しまった、二手に別れていたのか!」
「生気もだいぶ消費している。もうSPA-1には憑依できない。チョウ、こっちの方は、私の力だけで闘わなくちゃならないよ!」
僕はアルトロの言葉に気合を入れ直した。だが、それでも恐れる敵ではない。所詮は動ける様になっただけの植物みたいなものだ。それに、トゲトゲ以外には特に武器はなさそうだし……。
この僕の余裕も、流石にそれを見た時には引っ込めざる得なかった。裏庭から、上部が刈り込まれているナギイカダが追いかけて来たのだ。奴らは死んではいなかった!
「ガラム、ここは私が何とかするから、あなただけでも逃げて!」
東門隊員は何か混乱しているらしく、僕を庇おうとして僕を後ろに隠した。でも、僕の方が東門隊員の護衛なのだ。僕が闘わなくては……。
その時、僕の体はアルトロに乗っ取られた。体の自由が利かない。アルトロ、何を考えているのだ?
アルトロは突然、背伸びして東門隊員を抱き締めて唇を奪った。最初、彼女は抵抗しようとした様だったが、直ぐにそれを諦め、両手をだらりと下げ、僕の為すがままになる。
そうして、呆然として動けなくなった東門隊員を、壁に寄りかからせる様に座らせ、アルトロは敵の集団に向かっていった。
「貴様たち人類は、我々を『同じ地球に住む友達』だとか言いながら、我々や植物を自分たちの目的の為に、好きな様に利用してきた。我々は人類の為に存在する奴隷ではない。我々こそが地球に住む民だ。我々は人間から地球を奪い返し、我々と植物の為の楽園を造るのだ!」
東門隊員の音声翻訳装置が、彼女の胸元から、ナギイカダの言葉を翻訳する。しかし、後ろから話し声が聞こえるのって、なんか気色悪いなぁ。
「うん、確かにそうかも知れない。でも、話し合うことも出来るのじゃないのか? 戦っても、お互いに傷付くだけだろう?」
「ははは、我々は無敵なのだ。お前たちに勝ち目などない!」
「それは、どうかな?」
僕はそう言って不敵に笑っている。しかし、あまりに無防備じゃないのか? 何の構えも取らないで敵の只中に歩いて近づくのは!
そら来た。
僕がそう思った様に、敵は一斉にトゲトゲの葉の付いた枝を伸ばし、僕を縛り上げ、拘束しようとする。だが、意外なことに、その枝は僕を捕らえることが出来なかった。
彼らはアツアツの鍋の淵に触れたかの様に、その触手を反射的に引っ込めたのだ。
「僕の体の周りには、八百度近い高温の気流が取り巻いて、僕をガードしているんだ。君たちは僕に手を出すことなど出来ないよ」
僕はそう言って、鉢の一つをじっと眺める。
「やはり、上部は本物のナギイカダの様だね。接ぎ木して擬態したと言う訳か……。で、本体は……、成程、成長点、根の生え際か。そこに脳もある様だ」
僕は上部の刈られたナギイカダの、茎の部分を左手でむんずと掴む。すると、その一瞬で上部が大きな焔をあげて燃え上がり炭へと変わっていく。
「僕の左掌は、気流の温度なんて物じゃないよ。この手を鉢に突っ込んだら、一瞬で鉢の中の水分は熱湯となる。いや、土自身が解けて溶岩の様になるかも知れないな……」
音声変換器からざわざわと声が聞こえる。彼らも恐怖を感じている様だ。
「さぁ、降伏しなよ。僕は君たちを殺したいとは思っていない。降伏すれば、きっと異性人警備隊は君たちを悪くはしないだろう」
暫くして、彼らの一人の声がする。
「本当か?」
「約束は出来ないが、犯人でない君たちを殺すことは無いと思うね」
犯人でない? どう言うことだ?