別世界からの侵略「後編」(9)
文字数 1,431文字
僕たちの帰還は、殆ど休業状態にあった第三東京国際空港で行われた。
ま、着陸と言えば聞こえが良いが、全員死なない程度の墜落と言った方が、その時のことを現すのには、最も適しているだろう。
着陸した後、科学消防車やらが随分やってきて、燃え盛る宇宙船の炎を消し止めるのに必死だったのだが、川崎隊長、川崎大師隊員、港町隊員、そして僕、鈴木挑は一応異星人の能力があるので、命を失うことなく、無事地球の地面に戻ることが出来たのだった。
世間は大悪魔軍撤退のニュースで、異常なまでの戦勝騒ぎだった。勿論、異星人警備隊本部でも、当初その浮かれ気分で僕たちを迎えていたのだが、僕たちの表情と、帰還者の顔ぶれを見て、お祝いの雰囲気は一気に冷めてしまった様であった。
その翌日、僕は青嵐高校に復帰した。
ここでも、僕は英雄の様に迎えられかけたが、糀谷たちが知りたかったことについて、僕が無言で首を横に振ると、もう、それ以上は、誰も何も訊ねようとはしなかった。
シンディ小島さんが異星人警備隊を訪れたのは、一週間後のことだった。
ただ、彼女は前と同じ顔、同じ姿をしているだけで、単なる学者肌のエリート女性であった。超異星人能力もなければ、下品な冗談も言いはしない。
彼女はこの一年間のことは、記憶喪失で全く覚えていないと言い張っていた。恐らく、SPA-1の娘さんに口止めされているのだろう。勿論、僕も敢えて訊こうとは思わない。
それから更に数日経った今日のこと、港町隊員に呼び出され、僕は横浜港の大桟橋近くに来ている。
港町隊員は上着を肩に引っ掛け鞄を持った姿で、いかにもこれから旅に出るという出で立ちだった。
「港町さん、行ってしまうのですか?」
「ああ、元異星人テロリストが、異星人警備隊にいる訳にゃいかねぇからな」
「そんなの黙ってりゃ分かりませんよ」
「そうも行かねぇさ。俺は星間指名手配中の異星人だからな。いつ地球に引き渡し要求が来ないとも限らねぇ」
「でも……」
「川崎親子は、もう黙って行っちまったよ。あいつ等も、結構ヤバい奴らだったからな」
僕は言葉を失ってしまった。確かに川崎隊長も、大師隊員も、港町隊員も、僕の仲間には違いないが、異星人警備隊としては、やはり不適切な人材だったのかも知れない。
「じゃ、元気でな」
そう言うと、港町隊員はあっさりと僕に背を向けて歩きだした。だが彼が、寂しさを隠していることなんか、僕じゃなくたって、誰にだって分かるさ。
「港町さん、最初、小島参謀が『このメンバーは信用できる』って言っていたの覚えていますか? 僕はあなたが元異星人テロリストでも、異星人警備隊に入ってからは真っ当な異星人で、今でも僕たちの仲間だって思っていますからね!」
彼は僕の言葉に振り返りもせず、上着を持った片手を上げた。それが彼の精一杯の挨拶だったのだろう。
僕と天空橋さんの関係は、あれから全く変わっていない。僕は相変わらず帰宅部だし、天空橋さんは茶道部員のままだった。
土日に特別、2人で一緒に何かをすることもなく、鳳さんの様な、強引に誕生日に僕たちを呼びつける様な友人も、もうどこにもいない。
僕と天空橋さんには、クラスメートと言う接点しか今は存在していないのだ。
それでも、僕が何をしているのかは天空橋さんも分かっている様だし、変な秘密を隠し持っている訳でも無い。
いいや、僕には彼女に言ってない秘密がまだあった……。
僕には、心の中に
ま、着陸と言えば聞こえが良いが、全員死なない程度の墜落と言った方が、その時のことを現すのには、最も適しているだろう。
着陸した後、科学消防車やらが随分やってきて、燃え盛る宇宙船の炎を消し止めるのに必死だったのだが、川崎隊長、川崎大師隊員、港町隊員、そして僕、鈴木挑は一応異星人の能力があるので、命を失うことなく、無事地球の地面に戻ることが出来たのだった。
世間は大悪魔軍撤退のニュースで、異常なまでの戦勝騒ぎだった。勿論、異星人警備隊本部でも、当初その浮かれ気分で僕たちを迎えていたのだが、僕たちの表情と、帰還者の顔ぶれを見て、お祝いの雰囲気は一気に冷めてしまった様であった。
その翌日、僕は青嵐高校に復帰した。
ここでも、僕は英雄の様に迎えられかけたが、糀谷たちが知りたかったことについて、僕が無言で首を横に振ると、もう、それ以上は、誰も何も訊ねようとはしなかった。
シンディ小島さんが異星人警備隊を訪れたのは、一週間後のことだった。
ただ、彼女は前と同じ顔、同じ姿をしているだけで、単なる学者肌のエリート女性であった。超異星人能力もなければ、下品な冗談も言いはしない。
彼女はこの一年間のことは、記憶喪失で全く覚えていないと言い張っていた。恐らく、SPA-1の娘さんに口止めされているのだろう。勿論、僕も敢えて訊こうとは思わない。
それから更に数日経った今日のこと、港町隊員に呼び出され、僕は横浜港の大桟橋近くに来ている。
港町隊員は上着を肩に引っ掛け鞄を持った姿で、いかにもこれから旅に出るという出で立ちだった。
「港町さん、行ってしまうのですか?」
「ああ、元異星人テロリストが、異星人警備隊にいる訳にゃいかねぇからな」
「そんなの黙ってりゃ分かりませんよ」
「そうも行かねぇさ。俺は星間指名手配中の異星人だからな。いつ地球に引き渡し要求が来ないとも限らねぇ」
「でも……」
「川崎親子は、もう黙って行っちまったよ。あいつ等も、結構ヤバい奴らだったからな」
僕は言葉を失ってしまった。確かに川崎隊長も、大師隊員も、港町隊員も、僕の仲間には違いないが、異星人警備隊としては、やはり不適切な人材だったのかも知れない。
「じゃ、元気でな」
そう言うと、港町隊員はあっさりと僕に背を向けて歩きだした。だが彼が、寂しさを隠していることなんか、僕じゃなくたって、誰にだって分かるさ。
「港町さん、最初、小島参謀が『このメンバーは信用できる』って言っていたの覚えていますか? 僕はあなたが元異星人テロリストでも、異星人警備隊に入ってからは真っ当な異星人で、今でも僕たちの仲間だって思っていますからね!」
彼は僕の言葉に振り返りもせず、上着を持った片手を上げた。それが彼の精一杯の挨拶だったのだろう。
僕と天空橋さんの関係は、あれから全く変わっていない。僕は相変わらず帰宅部だし、天空橋さんは茶道部員のままだった。
土日に特別、2人で一緒に何かをすることもなく、鳳さんの様な、強引に誕生日に僕たちを呼びつける様な友人も、もうどこにもいない。
僕と天空橋さんには、クラスメートと言う接点しか今は存在していないのだ。
それでも、僕が何をしているのかは天空橋さんも分かっている様だし、変な秘密を隠し持っている訳でも無い。
いいや、僕には彼女に言ってない秘密がまだあった……。
僕には、心の中に
もう一人の僕
が存在しているのだ。