異星人の恋(7)
文字数 1,617文字
その悍ましい事件が始まったのは、それから間もなくのことだった。
僕たち異星人警備隊は、そんな事件はハッキリ言って管轄外だと決めて掛かっていた。なぜなら、それは単なる殺人事件の連続だっただけだし、被害者は異星人ではなく全員人間だったからだ。
僕とアルトロが、そのことに気付いたのは、携帯のニュース記事にある、短い一節を読んだからだった。
「激しく抵抗したと見え、街路灯が人間がやったとは思えない程に壊されていた……」
当初、僕は街路灯を壊したのは実は犯人の方で、犯人は異星人だと考えたのだ。だが、アルトロはそうは思わなかった。
彼は、被害者の方の拳に街路灯の塗装の破片が付着していた事実を指摘し、街路灯を壊したのはやはり被害者だと判断した。そして、その上で彼が考えたのは、被害者は、彼の種族の宿主ではないかと言うことだった。
僕とアルトロは、その後、警備隊本部のメインコンピュータをストラーダ隊員に操作して貰い、一連の被害者の顔写真と身元、容姿、その他あらゆることを調べて貰った。
そして、分かったこと……。
彼らは皆、アルトロの種族の宿主と思われること。そして、彼らは皆、僕たちを拉致した時に、スナックにいた人たちだと思われること……。
翌朝、僕はこの事実を小島参謀に即刻伝えに言った。正直、半分は小島参謀が犯人ではないかと疑っていたのだ。あの時、あの場所にいたのは、彼らと僕たち、そして、小島参謀だけだったのだ。
そして、もし、それが事実であるなら、たとえ小島参謀と言えども、僕は決して許してはおけないと考えていた。
僕は参謀室にノックもせず乱暴に入り、「参謀!」と大声で叫んだ。自室の机に座っていた小島参謀は、僕が来た理由を直ぐに理解出来た様だった。
「チョウ君、おはよう」
彼女は苦虫を噛み潰した表情を少し和らげて、僕に朝の挨拶を返す。
「参謀に言いたいことがあります!」
「敢えて言わなくてもいいわ。心のガードは外している様だから……。でもね、チョウ君、参謀室にノックもせずに入って来たこと、上官に対し無礼な発言。懲罰対象ね」
「そんなこと、どうでもいい!」
「良くないわ。チョウ君はペナルティとして、警備隊作戦行動の一週間禁止を命じます」
「参謀! あなたは……」
「それから、これは世間話なのだけど、これ、横浜のスナックにいた人の名簿。チョウ君も見たいでしょう? あげるわ」
「どうして参謀が、こんな名簿を持っているんですか! まさか、これで……」
「さ、出て行って頂戴。チョウ君、君は本部への入室も当分停止よ。でも謹慎って訳じゃないから、それ以外の外出は自由だからね」
彼女はそう言って僕たちを部屋から追い出した。僕は引き下がる気などは全く無かったのだが、アルトロが「行こう、チョウ」と言ってきたので、仕方無く本部から出て行った。
僕は『警備隊本部前』から『東京シティパーク』までの専用線の車内で、アルトロに何を考えてるのか訊ねた。いや、訊ねたと言うよりは、抗議したと言う方が適切だろう。
「どういうことだ、アルトロ! 小島参謀がどんなに恐ろしい異星人だとしても……」
「チョウ、このリストを見なよ。出力日時が印刷されている」
「今朝じゃないか!」
「ああ、このリストは今朝印刷されたものだ。彼女は恐らく我々と同じニュースを見て、昨晩、夜通しで調べたのに違いない」
「前から調べておいた結果を、僕たちにそう思わせる為、朝印刷しただけかも知れないじゃないか?」
「彼女の読心能力が、私のガードを越えていなければ、私たちが参謀室に来ることは、小島参謀でも分からなかった筈だよ。それに、リストには住所の他に、手書きで日時と場所が書かれているんだ」
「これが次に襲う相手だと言うのか? それを知っているってことは、やっぱり彼女が犯人じゃないか!」
「それを、これから確かめに行こうじゃないか? 有難いことに、我々は異星人警備隊の作業を一週間免除されているからね」
僕たち異星人警備隊は、そんな事件はハッキリ言って管轄外だと決めて掛かっていた。なぜなら、それは単なる殺人事件の連続だっただけだし、被害者は異星人ではなく全員人間だったからだ。
僕とアルトロが、そのことに気付いたのは、携帯のニュース記事にある、短い一節を読んだからだった。
「激しく抵抗したと見え、街路灯が人間がやったとは思えない程に壊されていた……」
当初、僕は街路灯を壊したのは実は犯人の方で、犯人は異星人だと考えたのだ。だが、アルトロはそうは思わなかった。
彼は、被害者の方の拳に街路灯の塗装の破片が付着していた事実を指摘し、街路灯を壊したのはやはり被害者だと判断した。そして、その上で彼が考えたのは、被害者は、彼の種族の宿主ではないかと言うことだった。
僕とアルトロは、その後、警備隊本部のメインコンピュータをストラーダ隊員に操作して貰い、一連の被害者の顔写真と身元、容姿、その他あらゆることを調べて貰った。
そして、分かったこと……。
彼らは皆、アルトロの種族の宿主と思われること。そして、彼らは皆、僕たちを拉致した時に、スナックにいた人たちだと思われること……。
翌朝、僕はこの事実を小島参謀に即刻伝えに言った。正直、半分は小島参謀が犯人ではないかと疑っていたのだ。あの時、あの場所にいたのは、彼らと僕たち、そして、小島参謀だけだったのだ。
そして、もし、それが事実であるなら、たとえ小島参謀と言えども、僕は決して許してはおけないと考えていた。
僕は参謀室にノックもせず乱暴に入り、「参謀!」と大声で叫んだ。自室の机に座っていた小島参謀は、僕が来た理由を直ぐに理解出来た様だった。
「チョウ君、おはよう」
彼女は苦虫を噛み潰した表情を少し和らげて、僕に朝の挨拶を返す。
「参謀に言いたいことがあります!」
「敢えて言わなくてもいいわ。心のガードは外している様だから……。でもね、チョウ君、参謀室にノックもせずに入って来たこと、上官に対し無礼な発言。懲罰対象ね」
「そんなこと、どうでもいい!」
「良くないわ。チョウ君はペナルティとして、警備隊作戦行動の一週間禁止を命じます」
「参謀! あなたは……」
「それから、これは世間話なのだけど、これ、横浜のスナックにいた人の名簿。チョウ君も見たいでしょう? あげるわ」
「どうして参謀が、こんな名簿を持っているんですか! まさか、これで……」
「さ、出て行って頂戴。チョウ君、君は本部への入室も当分停止よ。でも謹慎って訳じゃないから、それ以外の外出は自由だからね」
彼女はそう言って僕たちを部屋から追い出した。僕は引き下がる気などは全く無かったのだが、アルトロが「行こう、チョウ」と言ってきたので、仕方無く本部から出て行った。
僕は『警備隊本部前』から『東京シティパーク』までの専用線の車内で、アルトロに何を考えてるのか訊ねた。いや、訊ねたと言うよりは、抗議したと言う方が適切だろう。
「どういうことだ、アルトロ! 小島参謀がどんなに恐ろしい異星人だとしても……」
「チョウ、このリストを見なよ。出力日時が印刷されている」
「今朝じゃないか!」
「ああ、このリストは今朝印刷されたものだ。彼女は恐らく我々と同じニュースを見て、昨晩、夜通しで調べたのに違いない」
「前から調べておいた結果を、僕たちにそう思わせる為、朝印刷しただけかも知れないじゃないか?」
「彼女の読心能力が、私のガードを越えていなければ、私たちが参謀室に来ることは、小島参謀でも分からなかった筈だよ。それに、リストには住所の他に、手書きで日時と場所が書かれているんだ」
「これが次に襲う相手だと言うのか? それを知っているってことは、やっぱり彼女が犯人じゃないか!」
「それを、これから確かめに行こうじゃないか? 有難いことに、我々は異星人警備隊の作業を一週間免除されているからね」