灰色の疑惑(6)

文字数 1,649文字

 僕は家に帰ってから、アルトロと今回の事についての協議を行った。
「どうする? アルトロ」
「どうしようも無いだろうね。私には星間警察機構の情報は入って来ないし、港町隊員のことが事実か、どうにも判断が付かないからね」
 それは、そうなのだが……。
「それに、私としては、小島参謀が異星人テロリストとは、どうしても思えないんだ。あの人は、そう言う細かいことが出来るタイプには見えないからね」
「しかし、それが、彼女の作戦だとしたら……?」
「その可能性もゼロではないね。でも、私には寧ろ、バイトの時の大師隊員と川崎隊長の言動の方が、ずっと気になっているんだ」
 そう言えば、あの時、大師隊員は暗に、誰か異星人警備隊として不適切な人物がいる様なことを匂わせていた。そして、それを小島参謀が、意図的に隠蔽しているかの話も……。
 そう言う意味では、彼らなら、ストラーダ隊員に偽情報を掴ませることも出来るんじゃないのか?
「アルトロは、大師隊員と川崎隊長が、小島参謀たちを、意図的に陥れようとしていると言いたいのか?」
「いや、チョウ、それは辻褄が合わないんだ。川崎親子には、二人を陥れる理由が全くないのだからね」
「例えば……だけど、川崎隊長たちの方が実は異星人テロリストで、それを小島参謀が暴こうとしているのだとしたら? それで、川崎隊長たちは、悪事が露見する前に、逆に小島参謀を陥れようと……」
「確かに、それなら分かるけど、その場合、小島参謀は川崎親子の心が読めず、警備隊結成時、彼らがテロリストであるにも関わらず、異星人警備隊の仲間にしたと言うことになってしまうんだよ」
「川崎隊長たちの正体を知っていて、態と泳がし、テロリストだと言う証拠を掴もうとしているのだとしたら?」
「証拠なんか必要ないさ。テロリストだと確信があるのだったら、強引にでも逮捕してしまえばいいのだからね。どうせ裁判がある訳でもないんだ、テロリストだとさえ分かれば、それで処罰すれば良い筈だよ」
 う~ん、確かに……。
「兎に角、間違いないことは、小島参謀は川崎親子を隊長、あるいは隊員として問題がないと判断したと言うことさ」
「あの時、問題ないと言ったのは、川崎隊長ではなかったっけ? だから、川崎隊長が小島参謀に図らず、それを勝手に言っていたのだとしたら……」
「あの時、小島参謀もいたよ。仮に聞こえなかったとしても、そう言おうと隊長が思ったことを、小島参謀なら分かっていた筈さ。だから、小島参謀が知らない訳ないんだよ。
 仮に、川崎親子が心を読ませない様にガードしていたとしても、小島参謀はそれに気付いていた筈だから、隊員として問題がないとは言わないと思うよ」
 確かにアルトロの言う通りだ。
「そうなると、港町隊員がテロリストという情報が単純に誤りで、小島参謀の判断通り、大師隊員と川崎隊長、港町隊員も警備隊員として何も問題ないと考えるか……」
「あるいは……」
「あるいは、小島参謀と港町隊員の二人は、実はテロリストの一員で、小島参謀が港町隊員を安全だと偽っていた……」
「そして今、星間警察機構からの情報を見て、ストラーダ隊員のみならず、川崎隊長と大師隊員も、小島参謀と港町隊員のことを疑い出しているのではないか……ってとこだね」
 考えたくないが、それも決して有り得ない話ではない。
「しかし、チョウ、私は何か割り切れないんだよ。彼女が異星人テロリストだったすると、あまりに行動が反異星人テロリストなんだ。異星人テロに対する作戦立案も、ストラーダ隊員を呼んだと言う判断にしても……」
「じゃぁ……、どうする? 小島参謀がテロリストであるか? 僕たちで調査をする? それとも、何か?」
「最初の通りさ。どうしようも無いと思うよ。小島参謀の糾弾は、証拠が見つかれば川崎隊長の方でする筈だし、港町隊員が人違いだと分かれば、敢えて波風立てる必要などないだろう? 我々は、暫くは黙って見ていた方が良いと思うね」

 消極的な意見だが、僕はとりあえずアルトロの判断に従うことにした。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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