鳳さんと天空橋さん(6)
文字数 1,318文字
僕とアルトロは、どちらの判断か分からないが、全力で天空橋さんのところに駆け寄り、彼女を素早く抱きかかえた。
しかし、流石のアルトロも彼女を抱えて脱出することは出来なかった。ビルは僕らを残したまま、無情にも崩れていったのだ。
僕が意識を取り戻したのは、数秒ほど後、天井と床の落下が完全に納まった後だった。
僕は四つん這いになって背中に載ってくる何階分もの天井のコンクリートを支えていた。下には仰向けになった天空橋さんが心配そうに僕を眺めている。
恐らくこの体勢はアルトロが一人で何とかしたのだろう。だが、彼一人では自由に身体を制御できなかったのに違いない。この体勢で堪えるのが精一杯だった様だ。
「済まない、アルトロ」
「もう少し、何とかしたかったのだが……」
「背中の瓦礫を吹き飛ばして、脱出できるか?」
「チョウ、私たちが何トン支えていると思っているんだい? 正直、潰されないでこうしているだけでも、奇跡に近いんだぜ」
「鈴木君、大丈夫?」
大丈夫と答えたいけど、その自信は無いな。このままでは脱出することは不可能だし、無限に耐え続けることは、僕たちでも出来ない。
僕の身体が少し下に沈んだ。
腕と足の筋肉が、徐々に重さに耐えられなくなってきたのだ。
僕の胸から股間にかけて、ほんの少しだが天空橋さんの身体に重なっていく……。
「いいよ。力を抜いても。腕で支えるの、大変でしょう?」
そりゃ僕だって、こんな状況じゃなきゃ、天空橋さんの身体に思いっきり重なりたいさ。でも、力を抜いたら、それだけじゃ済まないよ。僕たち二人、たこ煎餅の様にぺっちゃんこだ。
「鈴木君、何? 血が流れている。怪我しているんじゃない?」
彼女の手にべったりと血が付いている。どうやら、僕の身体から流れ落ちた血溜まりに、彼女の手が触れてしまった様だ。
「アルトロ、どこを怪我したんだ?」
「気が付かなかったのかい? 左の背筋に折れて尖った鉄筋が突き刺さっているんだ」
「おい、大丈夫か?」
「これが大丈夫だったら、世の中に危機って言葉は必要ないね」
その時、僕の胸ポケットから携帯の着信音が鳴り響いた。異星人警備隊のアプリにメッセージが届いたのだ。
だが、僕には着信を取ることが出来ない。片手を空けることなど不可能なのだ。
「天空橋さん、携帯をとって、助けを呼んでくれないか? 多分、助けを呼んでそのままにして置けば、GPS機能で場所も特定してくれる」
アルトロが僕の判断を待たず、天空橋さんにアプリの使用をお願いする。しかし、異星人警備隊のアプリを彼女に触らせるのって、拙くないか?
「ぺちゃんこよりはマシだろう?」
それはそうだ。
「チョウ君、大丈夫?」
「助けてください! 私たち、ビルの下敷きになっているんです」
「あなた誰? チョウ君はどうしたの?」
小島参謀の声だ。声だけなら僕にも会話が出来る。
「参謀、僕です。今、ちょっと手が離せない状態で、済みませんが、助けにきてはくれませんか?」
「分かった。でも、SPA-1は今戦闘中で使えないの。私と東門 さんが行くから待っててね」
どうやら、東門隊員が来てくれるらしい。恐らく彼女なら大丈夫だ。今暫く耐えていれば、きっと助け出してくれる。
しかし、流石のアルトロも彼女を抱えて脱出することは出来なかった。ビルは僕らを残したまま、無情にも崩れていったのだ。
僕が意識を取り戻したのは、数秒ほど後、天井と床の落下が完全に納まった後だった。
僕は四つん這いになって背中に載ってくる何階分もの天井のコンクリートを支えていた。下には仰向けになった天空橋さんが心配そうに僕を眺めている。
恐らくこの体勢はアルトロが一人で何とかしたのだろう。だが、彼一人では自由に身体を制御できなかったのに違いない。この体勢で堪えるのが精一杯だった様だ。
「済まない、アルトロ」
「もう少し、何とかしたかったのだが……」
「背中の瓦礫を吹き飛ばして、脱出できるか?」
「チョウ、私たちが何トン支えていると思っているんだい? 正直、潰されないでこうしているだけでも、奇跡に近いんだぜ」
「鈴木君、大丈夫?」
大丈夫と答えたいけど、その自信は無いな。このままでは脱出することは不可能だし、無限に耐え続けることは、僕たちでも出来ない。
僕の身体が少し下に沈んだ。
腕と足の筋肉が、徐々に重さに耐えられなくなってきたのだ。
僕の胸から股間にかけて、ほんの少しだが天空橋さんの身体に重なっていく……。
「いいよ。力を抜いても。腕で支えるの、大変でしょう?」
そりゃ僕だって、こんな状況じゃなきゃ、天空橋さんの身体に思いっきり重なりたいさ。でも、力を抜いたら、それだけじゃ済まないよ。僕たち二人、たこ煎餅の様にぺっちゃんこだ。
「鈴木君、何? 血が流れている。怪我しているんじゃない?」
彼女の手にべったりと血が付いている。どうやら、僕の身体から流れ落ちた血溜まりに、彼女の手が触れてしまった様だ。
「アルトロ、どこを怪我したんだ?」
「気が付かなかったのかい? 左の背筋に折れて尖った鉄筋が突き刺さっているんだ」
「おい、大丈夫か?」
「これが大丈夫だったら、世の中に危機って言葉は必要ないね」
その時、僕の胸ポケットから携帯の着信音が鳴り響いた。異星人警備隊のアプリにメッセージが届いたのだ。
だが、僕には着信を取ることが出来ない。片手を空けることなど不可能なのだ。
「天空橋さん、携帯をとって、助けを呼んでくれないか? 多分、助けを呼んでそのままにして置けば、GPS機能で場所も特定してくれる」
アルトロが僕の判断を待たず、天空橋さんにアプリの使用をお願いする。しかし、異星人警備隊のアプリを彼女に触らせるのって、拙くないか?
「ぺちゃんこよりはマシだろう?」
それはそうだ。
「チョウ君、大丈夫?」
「助けてください! 私たち、ビルの下敷きになっているんです」
「あなた誰? チョウ君はどうしたの?」
小島参謀の声だ。声だけなら僕にも会話が出来る。
「参謀、僕です。今、ちょっと手が離せない状態で、済みませんが、助けにきてはくれませんか?」
「分かった。でも、SPA-1は今戦闘中で使えないの。私と
どうやら、東門隊員が来てくれるらしい。恐らく彼女なら大丈夫だ。今暫く耐えていれば、きっと助け出してくれる。