別世界からの侵略「前編」(2) 

文字数 1,731文字

 小島作戦参謀は、入ってきた僕やストラーダ隊員には目もくれず、ただ培養液の中に浮かんでいる、着ぐるみスーツを着たままの超異星人のことを、じっと立ったまま眺めていた。
「もう、潮時の様よ……」

 ストラーダ隊員は小島参謀の背に向かって仁王立ちに立ち、一番信頼する女性へと、叫ぶ様に質問を投げ掛けた。
「シンディさん、あなたは、あなたは、あの侵略者の仲間なの? 大悪魔皇帝のスパイだったの? あたしたちを、ずっと騙していたの?」
 それを聞いて、腕組みしたまま小島参謀はゆっくりと振り返り、ストラーダ隊員に答えを返す。
「あら、サーラちゃん、随分日本語が上手くなったわね……。大悪魔皇帝の仲間? そうね、私は確かに彼らの仲間よ。そして、間違いなく、あなたたちを騙していたわ」
「ど、どうして……!」
 目に涙を浮かべたまま、開いた口を両手で押さえ、興奮した状態のストラーダ隊員に替わり、今度は僕が小島参謀に質問をする。
「理由を説明してください!」
「そうね、出来ればサーラちゃんには、この謎を一人で解いて貰いたかったんだけどね、もう全部、本当のことを話しましょうか……」
 小島参謀は、超異星人の遺体にちらりと目をやり、残念そうにそう答えを返してきた。

 後ろから複数の人の気配がし、そこから少年の声が聞こえてくる。
「僕たちにも、それを教えてくれない? シンディ小島作戦参謀」
 後ろを振り返ると、大師隊員、東門隊員、港町隊員、それに川崎隊長までがここに来ていた。
 彼らが「何故ここに来ているか?」と言う僕の疑問については、東門隊員が説明してくれる。
「鈴木隊員とストラーダ隊員がいなくなったので、港町隊員に過去を見て貰ったの。そしたら、ストラーダ隊員が鈴木隊員に何か合図をして一緒に出て行ったみたいじゃない? だから、警備隊アプリの機能で、二人の位置を確認し、この部屋を特定したって訳」
「小島参謀さんよ、あんたが吐かないのなら、ここで拷問して吐かせてもいいんだぜ?」
 港町隊員が少し物騒なことを言う。だが、小島参謀はその脅しに対し、一向に恐れる素振りなど見せなかった。
「フフフフフ、出来るものならね。いいわよ、試して御覧なさい。あなたたち全員で掛かってきても、私には手も足も出ないから……。アルトロ君、君もご一緒にどうぞ。予めチョウ君にも、無駄だと言うことを理解しておいて貰った方が良さそうなんだもの……」
 小島参謀がそれを言い終わらないうちに、武闘派の川崎隊長、大師隊員、僕、そして武闘派ではないが、血の気の多い港町隊員が、一斉に小島参謀に襲いかかった。
 だが、僕たちは全員、直ぐに負けを認めさせられる破目になったのだ。僕、隊長、大師隊員は、一瞬のうちに鳩尾を貫手で突かれて膝から崩れおち、港町隊員は後ろに回られ、羽交い絞めにされた上で手を捻られている。
 それにしても、何と言う強さ、何と言う早業なんだ。少なくとも僕とアルトロは、常人の何倍も速く、硬く、そして力も遥かに強い筈……。隊長たちだって、並みの人間以下と言うことは、絶対無い筈なのに……。
「分かったでしょう? あなたたちが私に勝てる訳無いのよ……。だって、あなたたち、あまりに弱いんだもの!」
 小島参謀は、突き飛ばす様に港町隊員をこちらに飛ばして解放した。そして、胸元に手を入れたストラーダ隊員に、薄ら笑いを浮かべながら警告を発する。
「ついでに言っておくけど、サーラちゃん、あなたが隠し持っている秘密兵器でも無駄よ。撃たせないことも出来るけど、当たっても私には、傷一つ負わすことは出来ないわ」
 それでも、ストラーダ隊員は、震える手で胸元から銃の様な武器を取り出し、小島参謀を狙って構えたのだ。
「無駄だからって……、許せる訳が……、ないでしょう? シンディさん……」
 ストラーダ隊員は、その言葉と同時に引き金を引いた。しかし、小島参謀に向かったレーザー砲の様な物は、彼女の正面に突然現れた硝子の様な壁に阻まれ、彼女の身体にまで到達できなかったのだ。
 反対に、小島参謀が伸ばした人差し指(驚いたことに、彼女が差し出した右手の人差し指だけが、五メートルもの長さに突然伸びたのだ)は、ストラーダ隊員の光線銃を弾き飛ばしていたのである。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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