魔女(6)
文字数 1,762文字
東門隊員は僕を背負い、高速道路の防音壁を登って行く。どうやら彼女は、防音壁が低くなって乗り越えられる場所を探して、急ブレーキを踏んだ様だった。
それにしても、どうして東門隊員は僕を背負いながら、ずっと「ごめんね」と言い続け謝っているのだろう?
僕の方こそ足手纏いになってしまい、その上、背負って貰ってまでいると言うのに……。
僕たちは防音壁を越えると、一面の水田の中にある小さな森に逃げ込んだ。人家を探し、そこで電話を掛けさせて貰うことも考えたのだが、待ち伏せがある危険や、民間人に危害が加えられる危険も考慮し、ここは森に潜んで救出を待つべきだと判断したのだ。
ヌディブランコ2号さえ見つけてくれれば、港町隊員が僕たちの行動を再現して見てくれる。そうなれば、ここを見つけるのも容易 いだろう。恐らく、一晩逃げ切れば、異星人警備隊ならば、必ず僕たちを発見してくれる筈だ。
僕は東門隊員と二人きりで夜を過ごすことになった。勿論、この足の状況では、ロマンチックな展開などあろう筈がない。
「ごめんね……」
「何を謝ってるんですか? さっきから、ずっと……。僕は助けて貰ってばかりで何も出来なかったって言うのに」
「あいつら……、私を狙っていたのよ。チョウ君をそれに巻き込んでしまった」
「魔依 さんを狙っている?」
東門隊員は僕に何か、それを話そうとするのを躊躇っている様だった。だが、彼女は僕に話すことを決心してくれた。
「異星人能力って、地球人が基準だって言ったわよね」
「ええ」
「それは、異星人側から見れば、特殊でも何でもない普通の能力なの。例えば川崎隊長は種族的に人間より力が強くて俊敏なだけ。彼らから見れば、何も特殊ではないの。港町隊員もそう。彼の種族は移動光子だけでなく滞留光子も見る事ができるだけ。そして時間変化による変化を選択的に感じとれる為、過去の情景が見えるの。でも、それも彼の種族では不思議なことではないわ。地球人が可視光線を虹色で見えるのと大差ないのよ」
成程、そう言われれば港町隊員の能力すらも、普通の様な気がしてきた。
「でも、私は違うの……」
「違う?」
「チョウ君は、本当に私が本草学しか出来ないと思ってた?」
え? 確かに、本草学ってのは異星人の能力って言うよりは、知識とか教養って言った様な代物だ。すると、何か別の能力が?
「チョウ君、SPA-1を使っていて変だと思ったこと無い?」
いや、一々思いませんよ。そもそも、まともな事なんか、最初から何もないですし……。
「SPA-1って、突然現れるよね、あのロボット、どうして瞬間移動なんて出来ると思う? そんなの、ロボットには不可能だと思わない?」
確かに、機械が瞬間移動って不思議かも知れないけど、異星人能力だって僕には不思議だし、そもそも異星人がいるのだって、僕には不思議なんだけど……。
「あんなの、ロボットどころか、異星人能力だって不可能よ。あれが出来るとしたら、呪文、つまり、異時空とのエネルギー差異を利用する魔法力しかないわ」
「魔法力? 何ですか、そのおとぎ話みたいな話は? そんなの、ある筈がないじゃないですか!」
だが、それって超異星人が魔法を使ったってことなのだろうか? それにしても魔法とは、突拍子もないことを東門隊員も言い出したものだ。
「でもね、それが実はあるのよ。習得可能な技術として……」
習得可能な技術?
「魔法って言うと嘘っぽいから、超能力って言った方が良いかな? 人間世界にも武道ってあるでしょう? 修行することによって、常人では考えられない様なことが出来たりするわよね。あれみたいな物だと考えてくれればいいわ。
で、それが使えたのが私の星の一族。他の異星人からは、妖術を使うと言って恐れられ、魔法使いとか、魔女とか、妖怪とまで呼ばれたわ」
「魔女……、妖怪……」
確かに人は未知の力を目にすると、神秘的な物として恐怖し、悍ましい物として退けようとするものだ。それにしても、魔法が使えるだけで、妖怪とは……。
「実は、私は魔法の家元とも言える家系の出なの。私の両親は、特別強力な魔法を使えたわ、だからテロリストから狙われる破目になり、それで地球へと逃げてきたの。そして今、彼らは私を拉致し、強力な魔法の使い方を私から聞きだそうと狙っているのよ!」
それにしても、どうして東門隊員は僕を背負いながら、ずっと「ごめんね」と言い続け謝っているのだろう?
僕の方こそ足手纏いになってしまい、その上、背負って貰ってまでいると言うのに……。
僕たちは防音壁を越えると、一面の水田の中にある小さな森に逃げ込んだ。人家を探し、そこで電話を掛けさせて貰うことも考えたのだが、待ち伏せがある危険や、民間人に危害が加えられる危険も考慮し、ここは森に潜んで救出を待つべきだと判断したのだ。
ヌディブランコ2号さえ見つけてくれれば、港町隊員が僕たちの行動を再現して見てくれる。そうなれば、ここを見つけるのも
僕は東門隊員と二人きりで夜を過ごすことになった。勿論、この足の状況では、ロマンチックな展開などあろう筈がない。
「ごめんね……」
「何を謝ってるんですか? さっきから、ずっと……。僕は助けて貰ってばかりで何も出来なかったって言うのに」
「あいつら……、私を狙っていたのよ。チョウ君をそれに巻き込んでしまった」
「
東門隊員は僕に何か、それを話そうとするのを躊躇っている様だった。だが、彼女は僕に話すことを決心してくれた。
「異星人能力って、地球人が基準だって言ったわよね」
「ええ」
「それは、異星人側から見れば、特殊でも何でもない普通の能力なの。例えば川崎隊長は種族的に人間より力が強くて俊敏なだけ。彼らから見れば、何も特殊ではないの。港町隊員もそう。彼の種族は移動光子だけでなく滞留光子も見る事ができるだけ。そして時間変化による変化を選択的に感じとれる為、過去の情景が見えるの。でも、それも彼の種族では不思議なことではないわ。地球人が可視光線を虹色で見えるのと大差ないのよ」
成程、そう言われれば港町隊員の能力すらも、普通の様な気がしてきた。
「でも、私は違うの……」
「違う?」
「チョウ君は、本当に私が本草学しか出来ないと思ってた?」
え? 確かに、本草学ってのは異星人の能力って言うよりは、知識とか教養って言った様な代物だ。すると、何か別の能力が?
「チョウ君、SPA-1を使っていて変だと思ったこと無い?」
いや、一々思いませんよ。そもそも、まともな事なんか、最初から何もないですし……。
「SPA-1って、突然現れるよね、あのロボット、どうして瞬間移動なんて出来ると思う? そんなの、ロボットには不可能だと思わない?」
確かに、機械が瞬間移動って不思議かも知れないけど、異星人能力だって僕には不思議だし、そもそも異星人がいるのだって、僕には不思議なんだけど……。
「あんなの、ロボットどころか、異星人能力だって不可能よ。あれが出来るとしたら、呪文、つまり、異時空とのエネルギー差異を利用する魔法力しかないわ」
「魔法力? 何ですか、そのおとぎ話みたいな話は? そんなの、ある筈がないじゃないですか!」
だが、それって超異星人が魔法を使ったってことなのだろうか? それにしても魔法とは、突拍子もないことを東門隊員も言い出したものだ。
「でもね、それが実はあるのよ。習得可能な技術として……」
習得可能な技術?
「魔法って言うと嘘っぽいから、超能力って言った方が良いかな? 人間世界にも武道ってあるでしょう? 修行することによって、常人では考えられない様なことが出来たりするわよね。あれみたいな物だと考えてくれればいいわ。
で、それが使えたのが私の星の一族。他の異星人からは、妖術を使うと言って恐れられ、魔法使いとか、魔女とか、妖怪とまで呼ばれたわ」
「魔女……、妖怪……」
確かに人は未知の力を目にすると、神秘的な物として恐怖し、悍ましい物として退けようとするものだ。それにしても、魔法が使えるだけで、妖怪とは……。
「実は、私は魔法の家元とも言える家系の出なの。私の両親は、特別強力な魔法を使えたわ、だからテロリストから狙われる破目になり、それで地球へと逃げてきたの。そして今、彼らは私を拉致し、強力な魔法の使い方を私から聞きだそうと狙っているのよ!」