異星人の恋(3)
文字数 1,363文字
男三人の会話は、突然そこで幕を降ろすことになった。東門隊員が休憩室に入ってきたのだ。僕は恥ずかしくて、会話を続ける気になれなかったし、港町隊員も何となくバツが悪そうだった。
「じゃ、チョウ、俺たちは、もう、作戦室に戻ろうか?」
「そ、そうですね!」
僕たちは、きょとんとした表情の東門隊員を残し休憩室を後にした。後ろをちらと見ると、大師隊員だけは「若いものはええのう」みたいな表情でジュースを飲んでいる。
その日は出勤した手前、一応、定時までは作戦室に籠っていたのだが、出動命令もなく、僕はただ、漫然と部屋の隅に座って携帯アプリで遊んでいた。
東門隊員と作戦室で二人きりになることもあるのだが、彼女に抑え込まれ、例の拷問をされる……などと言うことがあろう筈もなく、ほっとしたと言うか、少しがっかりしたと言うか、その度ごとに、何とも言えない気持ちに僕はなるのだった。
その日の退社後のことである……。
僕が異変に気付いたのは、『東京シティパーク』で東京湾未来線の本線に乗り換え、大分経ってからのことであった。
何か気分が落ち着かない。僕の心の中で気持ちが妙にざわついている。これはアルトロが緊張している証拠だ。
「どうした、アルトロ?」
「まだ、敵かどうか分からないが、囲まれてしまった様だ……」
「だ、誰に? どこにいるんだ?」
「この車両にいる奴全員だ」
「なぜ分かる?」
「分かるさ……。私の種族だからね」
僕の体にも緊張が走る。この車両にいる全員が、僕と同じ能力を持つ、異星人共生型強化人間だと言うのだ。
だ、だが、僕たちには最後の切札がある。単純に闘ったとしても、僕たちが負けるとは到底思えない!
僕が緊張で唾を飲みこんだ直後、隣に座っていた学生服の少女が、正面を向いたまま、僕に顔を向けもせず声を掛けてきた。
「鈴木挑 さん、私たちと一緒に来てくださいますね?」
僕は黙って頷いた。彼女たちの意図が分からない以上、理由もなくSPA-1を呼ぶ訳にはいかない。取り敢えず、彼女らの目的が何なのか、僕は確かめる必要があるだろう。
少女は、僕を『西馬車道』駅で下車させ、集団で僕たちを近くにある山下公園へと移送させる。そして、公園の脇にある小さなスナックに招き入れた。
「驚きですね。我々の種族が、異星人テロリストの様にアジトを持って行動しているなんて。我々は人間に個別に共生し、お互いに没交渉なのがライフスタイルだった筈ですが……」
それには少女が代表で答える。
「そのライフスタイルは変わりません。ここは、あちらにいる彼の宿主のお店です。私たち全員、始めてここに訪れたのです」
アルトロは自分を囲んでいる宿主群から抜け出して、一人カウンターテーブルに背を凭 れかけた。
「で、私に何の用なのですか?」
「そんなこと、お分かりでしょう?」
少女はそう言って、怪しい目で僕をみながら小さく微笑んでいた。
その頃、異星人警備隊の本部では、僕の行方について調査が始められようとしていたらしい。
発端は、小島参謀が僕に連絡を取ろうとしたこと、そして連絡が通じなかったことだという。
僕は携帯が発見されまいと、携帯の電源を電車の中で切っていたのだ。もし、彼らに携帯を没収されたら、連絡を取ることも、SPA-1を呼び出すことも出来なくなる。それを僕は恐れたのだ。
「じゃ、チョウ、俺たちは、もう、作戦室に戻ろうか?」
「そ、そうですね!」
僕たちは、きょとんとした表情の東門隊員を残し休憩室を後にした。後ろをちらと見ると、大師隊員だけは「若いものはええのう」みたいな表情でジュースを飲んでいる。
その日は出勤した手前、一応、定時までは作戦室に籠っていたのだが、出動命令もなく、僕はただ、漫然と部屋の隅に座って携帯アプリで遊んでいた。
東門隊員と作戦室で二人きりになることもあるのだが、彼女に抑え込まれ、例の拷問をされる……などと言うことがあろう筈もなく、ほっとしたと言うか、少しがっかりしたと言うか、その度ごとに、何とも言えない気持ちに僕はなるのだった。
その日の退社後のことである……。
僕が異変に気付いたのは、『東京シティパーク』で東京湾未来線の本線に乗り換え、大分経ってからのことであった。
何か気分が落ち着かない。僕の心の中で気持ちが妙にざわついている。これはアルトロが緊張している証拠だ。
「どうした、アルトロ?」
「まだ、敵かどうか分からないが、囲まれてしまった様だ……」
「だ、誰に? どこにいるんだ?」
「この車両にいる奴全員だ」
「なぜ分かる?」
「分かるさ……。私の種族だからね」
僕の体にも緊張が走る。この車両にいる全員が、僕と同じ能力を持つ、異星人共生型強化人間だと言うのだ。
だ、だが、僕たちには最後の切札がある。単純に闘ったとしても、僕たちが負けるとは到底思えない!
僕が緊張で唾を飲みこんだ直後、隣に座っていた学生服の少女が、正面を向いたまま、僕に顔を向けもせず声を掛けてきた。
「鈴木
僕は黙って頷いた。彼女たちの意図が分からない以上、理由もなくSPA-1を呼ぶ訳にはいかない。取り敢えず、彼女らの目的が何なのか、僕は確かめる必要があるだろう。
少女は、僕を『西馬車道』駅で下車させ、集団で僕たちを近くにある山下公園へと移送させる。そして、公園の脇にある小さなスナックに招き入れた。
「驚きですね。我々の種族が、異星人テロリストの様にアジトを持って行動しているなんて。我々は人間に個別に共生し、お互いに没交渉なのがライフスタイルだった筈ですが……」
それには少女が代表で答える。
「そのライフスタイルは変わりません。ここは、あちらにいる彼の宿主のお店です。私たち全員、始めてここに訪れたのです」
アルトロは自分を囲んでいる宿主群から抜け出して、一人カウンターテーブルに背を
「で、私に何の用なのですか?」
「そんなこと、お分かりでしょう?」
少女はそう言って、怪しい目で僕をみながら小さく微笑んでいた。
その頃、異星人警備隊の本部では、僕の行方について調査が始められようとしていたらしい。
発端は、小島参謀が僕に連絡を取ろうとしたこと、そして連絡が通じなかったことだという。
僕は携帯が発見されまいと、携帯の電源を電車の中で切っていたのだ。もし、彼らに携帯を没収されたら、連絡を取ることも、SPA-1を呼び出すことも出来なくなる。それを僕は恐れたのだ。