不協和音(7)
文字数 1,355文字
以前にも似た様な事件があった。
あの時は、小島参謀と港町隊員がテロリストの仲間ではないかとの疑いで、実はそれを匂わせたのが、今回、侵略者の諜報員 ではないかと僕が疑っている大師隊員だった。
結局、その疑惑については、大師隊員たちに調査を任せる形にして、僕たちはあえて何も考えない事にして、そのままにしている。
だが、今回、大師隊員を疑っているのは僕しかいない。僕が口を閉ざしたら、この疑念は誰にも知られることなく、無かったことになってしまうだろう。
僕は、大師隊員の話をどうするか、一晩悩んだ末、小島作戦参謀にそれを話すことにした。彼女であれば、不要に騒いだりはせず、真実を探り当ててくれるに違いない。
いや、そうでは無い。
僕は彼女に、こう言って貰いたかったのだ。
「チョウ君、何を馬鹿なこと言っているの? もし大師隊員が諜報員 だったら、私が気付かない訳ないでしょう? そんなことないわよ!」と。
僕が、小島参謀に会いたい旨を携帯アプリで連絡を取ると、彼女はすぐさま、警備隊本部の会議室の予約を取って、夜間にも関わらず僕と会ってくれることを約束してくれた。
僕は急ぎ、東京湾未来線で異星人警備隊本部に向かい、人に見られない様に本部会議室をノックする。
許可を得て会議室に入ると、そこには既に小島参謀が席に着いて僕のことを待ってくれていた。
「どうしたの、チョウ君?」
小島参謀は、僕が正面の席に着くと、直ぐに今回の会議の意図を訊ねる。
僕は極力自分の感情が混じらない様に、事実だけを伝える様にした。それは参謀に変なバイアスを掛けない様にする為と、僕が大師隊員に対する感情だけで、作り話をしている訳ではないと信じて貰う為だ。
小島参謀は僕の話を聞いて、少し考えてから彼女の判断を説明し始めた。
「チョウ君、この話、私の胸に納めると言うことで、チョウ君はこのことを忘れてくれないかしら?」
「どう言うことですか、参謀!」
「どうもこうもないわ、アルトロ君、言葉通りよ」
「彼は侵略者の諜報員 かも知れないのですよ。あなたは、それを見逃すと言うのですか?」
「そう取って貰っても構わないわ」
そうまで言われると、アルトロだけでなく、僕だって納得がいかない。
「せめて理由を説明してください」
小島参謀はポーズだろうが、深く溜息を吐いた。
「第一に、私は人の心を読むことが出来ます。チョウ君たちの様に心のガードをしてなければの話だけれど……。ですから、大師隊員、川崎隊長が何者であるか、私には分かっています。彼らは、そんな私が異星人警備隊にいることを認めた人たちなのです。
第二に、彼らの立場は置いておいて、チョウ君の話しによると、彼は侵略を思い止まらせようとしていました。これは地球側から見ても、裏切り行為には当たりません。チョウ君の非難は適切ではないと思います。
最後に、恐らくですが、近いうちに彼ら、いいえ、異星人警備隊のメンバー全員の力が必要になります。ですから、彼らが仮に侵略者の諜報員 であっても、異星人警備隊に残って貰わねばならないのです」
小島参謀は、「これ以上は有無も言わせぬぞ」と言う気迫で僕に迫って来ていた。
理由は分からない。
でも、僕も、アルトロも、これ以上この話しをすることは、もう不可能だとと感じたのだった。
あの時は、小島参謀と港町隊員がテロリストの仲間ではないかとの疑いで、実はそれを匂わせたのが、今回、侵略者の
結局、その疑惑については、大師隊員たちに調査を任せる形にして、僕たちはあえて何も考えない事にして、そのままにしている。
だが、今回、大師隊員を疑っているのは僕しかいない。僕が口を閉ざしたら、この疑念は誰にも知られることなく、無かったことになってしまうだろう。
僕は、大師隊員の話をどうするか、一晩悩んだ末、小島作戦参謀にそれを話すことにした。彼女であれば、不要に騒いだりはせず、真実を探り当ててくれるに違いない。
いや、そうでは無い。
僕は彼女に、こう言って貰いたかったのだ。
「チョウ君、何を馬鹿なこと言っているの? もし大師隊員が
僕が、小島参謀に会いたい旨を携帯アプリで連絡を取ると、彼女はすぐさま、警備隊本部の会議室の予約を取って、夜間にも関わらず僕と会ってくれることを約束してくれた。
僕は急ぎ、東京湾未来線で異星人警備隊本部に向かい、人に見られない様に本部会議室をノックする。
許可を得て会議室に入ると、そこには既に小島参謀が席に着いて僕のことを待ってくれていた。
「どうしたの、チョウ君?」
小島参謀は、僕が正面の席に着くと、直ぐに今回の会議の意図を訊ねる。
僕は極力自分の感情が混じらない様に、事実だけを伝える様にした。それは参謀に変なバイアスを掛けない様にする為と、僕が大師隊員に対する感情だけで、作り話をしている訳ではないと信じて貰う為だ。
小島参謀は僕の話を聞いて、少し考えてから彼女の判断を説明し始めた。
「チョウ君、この話、私の胸に納めると言うことで、チョウ君はこのことを忘れてくれないかしら?」
「どう言うことですか、参謀!」
「どうもこうもないわ、アルトロ君、言葉通りよ」
「彼は侵略者の
「そう取って貰っても構わないわ」
そうまで言われると、アルトロだけでなく、僕だって納得がいかない。
「せめて理由を説明してください」
小島参謀はポーズだろうが、深く溜息を吐いた。
「第一に、私は人の心を読むことが出来ます。チョウ君たちの様に心のガードをしてなければの話だけれど……。ですから、大師隊員、川崎隊長が何者であるか、私には分かっています。彼らは、そんな私が異星人警備隊にいることを認めた人たちなのです。
第二に、彼らの立場は置いておいて、チョウ君の話しによると、彼は侵略を思い止まらせようとしていました。これは地球側から見ても、裏切り行為には当たりません。チョウ君の非難は適切ではないと思います。
最後に、恐らくですが、近いうちに彼ら、いいえ、異星人警備隊のメンバー全員の力が必要になります。ですから、彼らが仮に侵略者の
小島参謀は、「これ以上は有無も言わせぬぞ」と言う気迫で僕に迫って来ていた。
理由は分からない。
でも、僕も、アルトロも、これ以上この話しをすることは、もう不可能だとと感じたのだった。