ナギイカダの反乱(6)

文字数 1,089文字

 しかし、彼女は何を考えているのだ。まだ被疑者の段階の異星人を、無理矢理拷問に掛けるなんて、しかも、結局彼は犯人じゃなかったじゃないか!
「何か不満そうね」
 僕の表情を見たのか、東門隊員は僕に一瞥をくれた。
「何も、拷問にまで掛けることは、無かったんじゃないですか?」
「そうしなければ、彼は真実を話そうとしなかったでしょう? 結局、拷問を掛けたことで犯人の居所を突き止めたし、結果、これ以上の殺人被害を防ぐことが出来る筈よ」
「でも!」
「もし、彼が口を割らなければ、もっと多くの人が死に、植物体異星人と言う種の生存権すら危くなっていく。ことを穏便に済ますには、多少強引な捜査になっても仕方無いでしょう? それが分からない子供なら、さっさと家で待っていることね。ガラム」
「は?」
「何でもないわよ!」
 彼女はまた一段と不機嫌そうな顔になった。自分で説明しておいて、話しながら興奮して、勝手に怒りをヒートアップするなんて、全く何て困った人なんだ!

 次に僕たちは、そのナギイカダタイプの植物体異星人が住むと教えられた、関戸にある、一軒の立派な門構えのお屋敷を訪れた。
 そこで、まず東門隊員は、この屋敷の住人を全て眠らせて、比較的庭から離れた部屋に寝かせ彼らの安全を図った。恐らく片が付いたら、先程の職員さん同様に、何故か眠ってしまったと言うことに、強引にしてしまうのだろう。
 東門隊員は裏庭に回って、高さ五十センチ程度の小低木を探し始めた。彼女が探すのは比較的日当たりが悪そうな場所。ナギイカダはそう言う場所でも育つので、擬態した犯人もそこに植えられていると、東門隊員は考えたらしい。
 実際、裏庭にはナギイカダが二十株程植木鉢に植えられていた。
「どれが犯人だって言うんですか?」
 東門隊員は僕の質問に答えようともせず、一本目のナギイカダに向かって、除草剤と思われる粉末を、植木の頭から振り掛け始めた。
「これが犯人の異星人なのですか?」
 これにも東門隊員は答えてくれなかった。ただ、このナギイカダの株が何の変化も見られないので、彼女は次の株に移動しようとしている。と言うことは、これは犯人では無かったと言うことなのだろうか?
「あれは違ったのですか?」
「はずれね」
「あの庭木は?」
「枯れるでしょうね」
 そんな無茶苦茶な。仮にも人の家の庭木なのだ。勝手に入り込んで、そこの住人を全員薬で眠らせた上に、彼らの意向も聞かず、勝手に庭木の処分をするなんて、犯罪以外の何物でもないじゃないか!
 だが、僕は彼女の暴挙を止める必要がなかった。僕たちはいつの間にか、十本もの鉢植えのナギイカダに囲まれていたのだ。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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