別世界からの侵略「後編」(4) 

文字数 1,381文字

 一方、異星人警備隊のメンバーの乗る、川崎隊長の指揮する宇宙船は、敵に存在を把握され、善戦こそしていたものの、数に大きく勝る敵に苦戦を強いられていた。
 敵の全船が一斉に攻撃してきた訳ではないだろうが、やはり、それでも数の差は小さいものではなく、長引く程に影響が大きくなっていったのだ。
 宇宙船同士の戦いは、奇襲作戦で相手を破壊する場合には、ただ単純に先手必勝となる。だが、お互いに戦闘中と認識した場合、共にバリアを張り合うことになり、この為、光線砲やロケット弾の威力、有効射程距離とも大きく削減されてしまうのだ。
 その結果、近接戦闘での、ボディへの殴り合いの様な、トータルな攻撃力の競い合いとなる事が多いとのことらしい。
 そして、この人類には及びも付かない超科学で造られた、最新鋭の宇宙船同士の戦いに、古代の海戦でも用いられた戦術、移乗攻撃での白兵戦が用いられているなどとは、僕には思いも寄らないことであった。

「左舷前方に敵小型艇が付着したよ」
「東門! ワイパーを起動して、付着したフジツボを削ぎ落せ!」
「了解!」
 川崎隊長の指示に、東門隊員が船外を掃除するワイパー装置を起動し、敵小型艇を削ぎ落としにかかる。フジツボとは、敵船への移乗攻撃に用いられる小型艇の俗称だそうだ。
 ワイパー機能が功を奏し、アンカーロープで異星人警備隊船に付着した小型艇は、移乗に成功する前にロープを絡ませて爆発した。
 だが、次のフジツボはそう上手くは行かなかった。ワイパーで小型艇は削ぎ落したのだが、一名の大悪魔が艇内に乗り移る。
 異星人警備隊のメンバーにとってラッキーだったのは、彼がこの宇宙船のエンジン部などをまず破壊しようとせず、艦橋に向かって船を制圧しようとしたことだ。
 艦橋では川崎隊長以下四隊員と、艦橋上部の別室にある砲台席から港町隊員が梯子段を降りて来て加わり、五名で機械の陰に隠れ敵を迎え撃つ。
 大悪魔は異形の姿であったそうだ。
 僕は大悪魔と云うと、小島参謀やSPA-1の中身をイメージし、普通の人間を考えてしまうのだが、船に侵入してきた悪魔は岩人間の様であったと言う。
 港町隊員が先手必勝とばかりに、入ってきた敵に対し、正面に姿を表して装填した全弾を一気に乱射する。
 だが、なんと、発射された弾丸は、一つも敵の皮膚を貫通する事が出来ず、敵を倒せなかったのだ。次の瞬間、敵は持っていた武器で港町隊員を狙う。その港町隊員の危機を救ったのはストラーダ隊員であった。
 彼女は港町隊員の前に身を挺して盾となり、振り向きざまに持っていた武器で敵を射殺したのである。
 ストラーダ隊員の持っていたのは、彼女の開発した新兵器。弾丸自身に光線砲発射機構を持っていて、威力は通常の百倍はあると言われていたものだった。
 だが、敵をそれで倒したものの、敵のビーム銃も彼女の腹部に命中していたのである。
 港町隊員は敵の生死も確認しなかったほどに我を忘れ、崩れた彼女を抱き起こしていた。
「馬鹿野郎! なんでこんなことしやがんだ! 陰に隠れたまま撃てばいいだろうが」
 虫の息で彼女は答えたそうだ。
「ほんと、なんで、大っ嫌いな異星人の、それも、親の仇のテロリストなんか、助けちゃったんだろう……」
 鳳サーラさんは、それだけ言って目を閉じた。それを見て、港町隊員は彼女をそっと、そこに横たえたのだった。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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