千羽鶴の贈り物(7)
文字数 1,214文字
その翌朝、天空橋さんに訊かれて、僕はこう答えるしかなかった。
「ごめん、昨日は一羽も折れなかった」
「え、後二日しかないんだよ」
「ごめん……」
この後、授業が始まりそうだったので、彼女は席に戻っていった。本当に申し訳ない。
天空橋さんが四百五十羽、僕はまだ三百羽、天空橋さんには部活もあると言うのに、どんどん鶴を折っていっている。
本音を言うと、僕は今日だって折れるかどうか分からない。
昨夜は作戦行動から帰っても、痛みの為に指先まで痺れていて、一羽も鶴を折ることが出来なかったのだ。
だけど、天空橋さんに言い訳などしたくないし、泣きごとは絶対言いたくない。それは、僕の中では、酷く格好が悪くて恥ずかしいことだった。
それに、腕が痛い抑々 の原因は、僕が格好つけて相手の攻撃をガードし続けたことにある。つまり自業自得だ。
あの攻撃を腕でガードしていたら、こうなることなんか、容易に想像がついた筈だった。
それでも、他の奴にだったら「腕の痛みのせいだ」と言い訳して、「腕が痛くて動かない」って泣き言言って、それで同情してして貰って、あわよくば手伝って貰おうとか、代わって貰おうとか、僕はきっとそう考えたに違いない。
クラスの皆(それは天空橋さんも含まれているのだが)は、僕がそんな根性無しだってことを知っている。でも、天空橋さんの前だけは、僕は格好つけていたかった。
分かってる。アルトロは僕のことを馬鹿な奴だと思っているのだろう。でも、僕はそうしていたいんだ……。
アルトロは、僕の言葉を聞いていなかったのか、それには何も応えなかった。
結局、爆破テロ事件に関しては、港町隊員のイメージ画像から、急進派フロウド星人の犯行と特定され、合わせて、写っていた情報から、異星人テロリストのアジトの場所も確認できた。尚、あの拳法使いの女性は、テロリストではなく、雇われ殺し屋だったとのことだ。
尚、このアジトの摘発に僕は召集されていない。それだけでなく、数日の間は異星人警備隊の仕事を免除されている。勿論、腕の怪我を考慮されてのことで、ペナルティで作戦行動参加禁止になった訳では無い。
ま、理由は兎も角、僕はこの週末、警備隊の呼び出しがくることは無さそうだった。
その上有難いことに、父の出張が伸び、日曜の夜遅くにならないと帰らないとのことになり、この為、母も欠席する予定だった友だち同士の一泊温泉旅行に、急遽参加することにしたのだ。
お蔭で僕は、土曜日は朝からひとり静かに折り紙に専念できる。
「チョウ君、だいじょうぶで~すか?」
学校の帰り際、鳳さんが訊ねてくる。
「勿論ですよ、この週末でちゃんと千羽完成させますって!」
「ちがいま~す。チョウ君の~腕の~怪我の方で~す。骨、折れてなかったですか~」
あ、そっちの方か……。
「ええ、まだ腫れは引いてないけど、痛みは大分治まりました!」
僕は鳳さんにまで、強がりの痩せ我慢を言ってしまった……。
「ごめん、昨日は一羽も折れなかった」
「え、後二日しかないんだよ」
「ごめん……」
この後、授業が始まりそうだったので、彼女は席に戻っていった。本当に申し訳ない。
天空橋さんが四百五十羽、僕はまだ三百羽、天空橋さんには部活もあると言うのに、どんどん鶴を折っていっている。
本音を言うと、僕は今日だって折れるかどうか分からない。
昨夜は作戦行動から帰っても、痛みの為に指先まで痺れていて、一羽も鶴を折ることが出来なかったのだ。
だけど、天空橋さんに言い訳などしたくないし、泣きごとは絶対言いたくない。それは、僕の中では、酷く格好が悪くて恥ずかしいことだった。
それに、腕が痛い
あの攻撃を腕でガードしていたら、こうなることなんか、容易に想像がついた筈だった。
それでも、他の奴にだったら「腕の痛みのせいだ」と言い訳して、「腕が痛くて動かない」って泣き言言って、それで同情してして貰って、あわよくば手伝って貰おうとか、代わって貰おうとか、僕はきっとそう考えたに違いない。
クラスの皆(それは天空橋さんも含まれているのだが)は、僕がそんな根性無しだってことを知っている。でも、天空橋さんの前だけは、僕は格好つけていたかった。
分かってる。アルトロは僕のことを馬鹿な奴だと思っているのだろう。でも、僕はそうしていたいんだ……。
アルトロは、僕の言葉を聞いていなかったのか、それには何も応えなかった。
結局、爆破テロ事件に関しては、港町隊員のイメージ画像から、急進派フロウド星人の犯行と特定され、合わせて、写っていた情報から、異星人テロリストのアジトの場所も確認できた。尚、あの拳法使いの女性は、テロリストではなく、雇われ殺し屋だったとのことだ。
尚、このアジトの摘発に僕は召集されていない。それだけでなく、数日の間は異星人警備隊の仕事を免除されている。勿論、腕の怪我を考慮されてのことで、ペナルティで作戦行動参加禁止になった訳では無い。
ま、理由は兎も角、僕はこの週末、警備隊の呼び出しがくることは無さそうだった。
その上有難いことに、父の出張が伸び、日曜の夜遅くにならないと帰らないとのことになり、この為、母も欠席する予定だった友だち同士の一泊温泉旅行に、急遽参加することにしたのだ。
お蔭で僕は、土曜日は朝からひとり静かに折り紙に専念できる。
「チョウ君、だいじょうぶで~すか?」
学校の帰り際、鳳さんが訊ねてくる。
「勿論ですよ、この週末でちゃんと千羽完成させますって!」
「ちがいま~す。チョウ君の~腕の~怪我の方で~す。骨、折れてなかったですか~」
あ、そっちの方か……。
「ええ、まだ腫れは引いてないけど、痛みは大分治まりました!」
僕は鳳さんにまで、強がりの痩せ我慢を言ってしまった……。