異星人警備隊(9)

文字数 1,016文字

 アルトロと名付けた僕の共生異星人は、発車前の東京湾未来線で、僕に自分を秘密を語ってくれた。
「彼女が何を企んでいるのか? そもそも超異星人の話しは真実なのか? 私にはまだ分からない。だから、こちらの切札(カード)は隠すことにしたんだ」
「アルトロは用心深いんだな。で、そんな君が何故こんなことをしたんだ?」
「理由は小島さんに話した通りだよ。あれは決して嘘じゃない。だが、この行動は、我々の種族ではタブーとされている行為なんだ。我々は宿主の意志に反して行動してはならないし、宿主を危険に曝してはならないと言う掟があるんだ。僕の行為は明らかにそれに反している」
「でも、アルトロは、種族の為を思ってやっているんだろう?」
「勿論そうだ。でも過去に、それに反した行為を行った為に、我々の存在が明るみになって、結果、宿主の種族によって根絶やしにさせられたと言う例は、もう一つや二つじゃないんだ……」
「そうしてまで……」
「ああ、そうしてでも、人間と友人として共生して生きたかった。でも、それは、我々の仲間には理解して貰えなかったよ。彼らは、逆にタブーを犯してでも、私が正体を現すのを止めようとしたんだ」
「それが、あの少女……。そして、あの老人だったのか……」
「ああ、そうだ。それに、これからも、チョウの命は私の種族に狙われる危険がある。私の存在が公然となる前に、チョウごと私を抹殺してしまおうと……」
「う、うぇ!」
「チョウには、本当に済まないことをしたと思っている。私がこんなことを思わなければ、チョウは好きなだけ勉強して、自由に職業を選択できただろうし、何も知らない間に僕が君をサポートし、何不自由なく、平和に暮らせた筈なのに……」
「好きなだけ勉強できたって? 勉強嫌いの僕への皮肉か? いいよ、一緒にやろうぜ、君たち種族の解放ってやつを」

 発車時刻が来たのだろう。扉が閉まり、電車は、最初はゆっくりと、そして段々と速度をあげて走り出した。身体に心地良い振動が伝わってくる。
 ここまで速度が上がると、電車と言うものは、そう簡単には止まることは出来ないものなんだ。それは僕たちだって同じことさ。
 僕、鈴木(いどむ)、通称鈴木チョウと共生異星人のアルトロ、僕たち二人はもう走り出してしまっている。もう簡単には止まれやしない!

 こうして僕は、いや、僕たち二人は、横浜青嵐高校に籍を置きながら、異星人警備隊へと入隊し、社会に隠れ済む異星人テロリストと闘うことになったのだ。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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