千羽鶴の贈り物(2)
文字数 1,247文字
学校の帰り、僕は鳳さんの誕生日に贈るプレゼントを選ぶため、いつもの通学路から東京湾未来線に乗り換え、少し遠くにある『東京シティパーク』のデパートへと足を運んでいた。
例の爆破された駅ビルは、まだ立て直しの計画すら出来ておらず、だからと言って、日常品の買い物なら兎も角、女の子が喜びそうなファンシーグッズを買うには、家の近くの商店街ではあまりに適していなかったのだ。
まぁ『東京シティパーク』には、異星人警備隊のパスを使えば無料 で移動できる。その辺は僕としては助かっているのだが……。
問題は僕のセンスの方だ。
女の子の喜びそうな物と言うのが、120パーセント何か分かっていない。
それも相手は鳳さんなのだ。普通の趣味であろう筈がない。ぬいぐるみやアクセサリーなどを喜ぶ訳ないだろうし、まさか工具セットや電動ノコギリを贈る訳にも行かないだろう。
そして、彼女の養育者は大金持ちで名家の出の小島参謀なのだ。彼女の身の回りの物に安物などある訳がない。
仮にティーカップでも贈ろうとするなら、最低でも幾らの物を贈らなければならないのか、考えただけでも気が遠くなる。下手な物を買ったりしたら、質が悪いとか言われ、嫌がられるのがオチに違いないのだ。
その時、僕の携帯に普通の電話が掛かってきた。天空橋さんからだ。
僕は何だろうと思いながら、(少し喜んで)彼女に電話の用件を訊ねた。
「鈴木君、鳳さんに贈るプレゼント、もう決めた?」
彼女も悩んでいるのだろう。確かに誰にとっても厄介な問題だ。
「いいや、まだ」
「私と一緒に千羽鶴折らない?」
「千羽鶴?」
「うん、鳳さんに変な物贈っても困るでしょう? だから、さり気なく確認したの。そうしたら、日本的な物が欲しいんだって、で、彼女の方から誕生日に千羽鶴が欲しいって言って来たの。千羽無くてもいいんだって。だから、作るねって言ったんだけど、やっぱり多い方が良いと思うの。だから、鈴木君も誘おうって考えたの」
僕はこの誘いに、二つ返事で同意した。正直、鳳さんへのプレゼントを選ぶのにも途方に暮れていたし、天空橋さんに誘われたものだから、あまりの嬉しさに「何でもOK」という気持ちになっていたのだ。
まぁ、天空橋さんとは恋人同士になど戻れなくても良かったのだ。でも、クラスが同じなのに、ギクシャクした関係のままなのは嫌だった……。
いや、それは嘘だ。
僕は彼女と恋人同士に戻りたかった。
だけど、僕は女性と言うものを、どう扱って良いか全く分かっていない。
ずっとべたべたした方がいいのか、少し間を開けてクールに付き合った方が良いのか? 僕には、そんなことも分からなかったのだ。
だから、天空橋さんとの関係だけは失敗したくないので……、失敗して喧嘩別れなどなりたくなかったので……、僕は彼女に声を掛けるのが、出来なかった。
ただ怖かったのだ。
いや、そんなこと今はどうでもいい。
取り敢えず、直ぐに帰って彼女から千代紙を受け取ろう。夜になってから彼女の家に行くのは失礼だ。
例の爆破された駅ビルは、まだ立て直しの計画すら出来ておらず、だからと言って、日常品の買い物なら兎も角、女の子が喜びそうなファンシーグッズを買うには、家の近くの商店街ではあまりに適していなかったのだ。
まぁ『東京シティパーク』には、異星人警備隊のパスを使えば
問題は僕のセンスの方だ。
女の子の喜びそうな物と言うのが、120パーセント何か分かっていない。
それも相手は鳳さんなのだ。普通の趣味であろう筈がない。ぬいぐるみやアクセサリーなどを喜ぶ訳ないだろうし、まさか工具セットや電動ノコギリを贈る訳にも行かないだろう。
そして、彼女の養育者は大金持ちで名家の出の小島参謀なのだ。彼女の身の回りの物に安物などある訳がない。
仮にティーカップでも贈ろうとするなら、最低でも幾らの物を贈らなければならないのか、考えただけでも気が遠くなる。下手な物を買ったりしたら、質が悪いとか言われ、嫌がられるのがオチに違いないのだ。
その時、僕の携帯に普通の電話が掛かってきた。天空橋さんからだ。
僕は何だろうと思いながら、(少し喜んで)彼女に電話の用件を訊ねた。
「鈴木君、鳳さんに贈るプレゼント、もう決めた?」
彼女も悩んでいるのだろう。確かに誰にとっても厄介な問題だ。
「いいや、まだ」
「私と一緒に千羽鶴折らない?」
「千羽鶴?」
「うん、鳳さんに変な物贈っても困るでしょう? だから、さり気なく確認したの。そうしたら、日本的な物が欲しいんだって、で、彼女の方から誕生日に千羽鶴が欲しいって言って来たの。千羽無くてもいいんだって。だから、作るねって言ったんだけど、やっぱり多い方が良いと思うの。だから、鈴木君も誘おうって考えたの」
僕はこの誘いに、二つ返事で同意した。正直、鳳さんへのプレゼントを選ぶのにも途方に暮れていたし、天空橋さんに誘われたものだから、あまりの嬉しさに「何でもOK」という気持ちになっていたのだ。
まぁ、天空橋さんとは恋人同士になど戻れなくても良かったのだ。でも、クラスが同じなのに、ギクシャクした関係のままなのは嫌だった……。
いや、それは嘘だ。
僕は彼女と恋人同士に戻りたかった。
だけど、僕は女性と言うものを、どう扱って良いか全く分かっていない。
ずっとべたべたした方がいいのか、少し間を開けてクールに付き合った方が良いのか? 僕には、そんなことも分からなかったのだ。
だから、天空橋さんとの関係だけは失敗したくないので……、失敗して喧嘩別れなどなりたくなかったので……、僕は彼女に声を掛けるのが、出来なかった。
ただ怖かったのだ。
いや、そんなこと今はどうでもいい。
取り敢えず、直ぐに帰って彼女から千代紙を受け取ろう。夜になってから彼女の家に行くのは失礼だ。