魔女(7)
文字数 2,104文字
しかし、それにしても、本当に魔法などと言う物が存在するのだろうか?
「魔依 さん、魔法なんて非科学的な物、僕にはどうしても信じられないのですが……」
東門隊員はニッコリと微笑んだ。
「本当は、それほど非科学的な物でもないのよ。魔法使いって連中が、神がかり的なこと言って騙していただけなの。
例えば、魔法の杖とかあるけど、あれはこの世界のライターみたいな物。その構造や液化ガスの存在を理解していない時代の人には、あれは信じられない魔法の道具よ」
成程……。
「それから……、欠伸って伝染したりするでしょう? あれは一種の精神感応なの。テレパシーなんかも同じ理屈ね。精神波の静電誘導って感じかな? それの応用で、例えば精神集中し、自分の脳を活性化することで、相手を眠らせたりすることも出来るのよ。呪文を唱えるのは、精神集中する為のルーティーンってとこね」
そんな話を聞かされて、正直、僕は魔法を信じる気になってきた。
「でも、あいつらが狙っているのは、そんな魔法じゃない。あいつらが狙ってるのは、別時空を繋いで膨大なエネルギーを利用できる大魔法なの。私は使えないけど、それには瞬間移動なんかも含まれているわ」
瞬間移動。確かにSPA-1は僕の所に来るのに瞬間移動を行っている。これまで何も不思議を感じていなかったけど、考えてみると、どこからそのエネルギーを得ているかだとか、僕にはメカニズムが全く分かっていなかった。
「でもね、ロボットが瞬間移動できる訳がないのよ。魔法を使うには、そのアンテナとなる脳が必要だから……。それは時空を繋ぐのにも必要だわ。だから、電子頭脳では、瞬間移動魔法は絶対不可能な筈なの」
「魔依 さんは、何が言いたいのですか?」
「あのロボットは、実は誰か、相当高ランクの魔法使いが操っている! そして、その人物とは、チョウ君、あなた……。あるいは、シンディ小島参謀じゃないかと、私は睨んでいるの!」
僕は僕でないことを知ってる。僕でなければ、魔法使いは小島参謀ってことになるな。確かに、あの人は不可思議な人だ。それにしても、魔女と思われていたとはね。
ま、SPA-1が瞬間移動が使えなかったらって話だけど……。
「何 れにしても、SPA-1が活動したことで、あいつらが異星人警備隊に目を付けたことは間違いないわね。そこに私が、偶然所属していたってのが、あいつらが私を狙っている理由だと思うわ」
と言うことは、東門隊員が狙われてるってのは、結局、僕がSPA-1に憑依して闘っていた為なのか?
近くに、微かだが、多くの人の動き回る物音が聞こえた気がする。田舎の夜は恐ろしいほど静かだ。そう言う意味では、まだ、この物音は今少し距離があるのではないかと思う。
「もう、お話は控えた方が良さそうね。あいつらは、思考聴覚の呪文を唱えていると思う。だから、変に会話していると、敵に位置を探られてしまうわ……」
そうだ。僕たちは粘ればいい。港町隊員や小島参謀がヌディブランコ2号さえ見つけてくれれば、ウミウシからこの距離なら、きっと僕たちを特定してくれる筈だ。
僕はそれから暫くの間、東門隊員の胸の中で眠っていた。母性本能と言う物なのだろうか? 動けない僕を彼女がそうしたがったのだ。痛みこそ無いが、僕も大怪我を負っている状態なので、あえて抵抗せず素直に彼女の勧めに従った。
僕は夢を見ている。
両親と弟(僕に弟はいない筈だが)、家族四人で地球に逃げて来て、ひっそりと生活していたのだ。
これは東門隊員の過去の記憶なのか? いや、父母は自分の父母だ。きっと魔依 さんの話を聞いて、僕の記憶と彼女の話を、ごちゃ混ぜにして夢に見ているのに違いない。
ただ部屋は、白っぽい土造りの様で、窓にはサッシも何も無く、丸く光取りの穴が開いているだけだ。そこにカーペットを敷き、僕たちは床に座りながら生活している様だった。
僕たちが楽しく食事をしていると、ライフル銃で武装した2人組が押し込んでくる。
母の悲鳴。父が2人組を非難して大声で叫んでいた。
2人組は、その場で父を射殺した。母は僕たちに裏から逃げろと指示し、奴らに素手で掴みかかっていく。僕は弟の手を引いて、必死に裏口から階下に駆け降りていた。その時に聞こえた母の悲鳴と、何発もの恐ろしいライフルの発砲音。
僕と弟は必死に階段を駆け降りて、砂ぼこり舞う、廃墟と化した町の外へと逃げ出そうと走る。
怖い……。捕まると殺される……。
そんな思いが僕の心に渦を巻く。
僕と弟は、内戦で崩れ落ちた廃墟の瓦礫の陰に潜んだ。遣り過ごせるだろうか? だが、ライフルを持った追手は数を増やし、僕たちが隠れていないかと廃墟を虱潰しに探している。
「チョウ兄ちゃんは魔法が使えない。僕が戦うから、兄ちゃんは逃げて!」
弟はそう叫ぶと、僕が止める間もなく大通りに飛び出して行った。そして、彼らにハチの巣にされながらも、爆発系の魔法を使って敵を殲滅させる……。
僕はそこで目を醒ました。
「どうやら、あいつらに見つかったみたいね。チョウ君には悪いけど、あいつらに降参する訳にはいかないの……。戦うわよ」
当然だ!
「
東門隊員はニッコリと微笑んだ。
「本当は、それほど非科学的な物でもないのよ。魔法使いって連中が、神がかり的なこと言って騙していただけなの。
例えば、魔法の杖とかあるけど、あれはこの世界のライターみたいな物。その構造や液化ガスの存在を理解していない時代の人には、あれは信じられない魔法の道具よ」
成程……。
「それから……、欠伸って伝染したりするでしょう? あれは一種の精神感応なの。テレパシーなんかも同じ理屈ね。精神波の静電誘導って感じかな? それの応用で、例えば精神集中し、自分の脳を活性化することで、相手を眠らせたりすることも出来るのよ。呪文を唱えるのは、精神集中する為のルーティーンってとこね」
そんな話を聞かされて、正直、僕は魔法を信じる気になってきた。
「でも、あいつらが狙っているのは、そんな魔法じゃない。あいつらが狙ってるのは、別時空を繋いで膨大なエネルギーを利用できる大魔法なの。私は使えないけど、それには瞬間移動なんかも含まれているわ」
瞬間移動。確かにSPA-1は僕の所に来るのに瞬間移動を行っている。これまで何も不思議を感じていなかったけど、考えてみると、どこからそのエネルギーを得ているかだとか、僕にはメカニズムが全く分かっていなかった。
「でもね、ロボットが瞬間移動できる訳がないのよ。魔法を使うには、そのアンテナとなる脳が必要だから……。それは時空を繋ぐのにも必要だわ。だから、電子頭脳では、瞬間移動魔法は絶対不可能な筈なの」
「
「あのロボットは、実は誰か、相当高ランクの魔法使いが操っている! そして、その人物とは、チョウ君、あなた……。あるいは、シンディ小島参謀じゃないかと、私は睨んでいるの!」
僕は僕でないことを知ってる。僕でなければ、魔法使いは小島参謀ってことになるな。確かに、あの人は不可思議な人だ。それにしても、魔女と思われていたとはね。
ま、SPA-1が瞬間移動が使えなかったらって話だけど……。
「
と言うことは、東門隊員が狙われてるってのは、結局、僕がSPA-1に憑依して闘っていた為なのか?
近くに、微かだが、多くの人の動き回る物音が聞こえた気がする。田舎の夜は恐ろしいほど静かだ。そう言う意味では、まだ、この物音は今少し距離があるのではないかと思う。
「もう、お話は控えた方が良さそうね。あいつらは、思考聴覚の呪文を唱えていると思う。だから、変に会話していると、敵に位置を探られてしまうわ……」
そうだ。僕たちは粘ればいい。港町隊員や小島参謀がヌディブランコ2号さえ見つけてくれれば、ウミウシからこの距離なら、きっと僕たちを特定してくれる筈だ。
僕はそれから暫くの間、東門隊員の胸の中で眠っていた。母性本能と言う物なのだろうか? 動けない僕を彼女がそうしたがったのだ。痛みこそ無いが、僕も大怪我を負っている状態なので、あえて抵抗せず素直に彼女の勧めに従った。
僕は夢を見ている。
両親と弟(僕に弟はいない筈だが)、家族四人で地球に逃げて来て、ひっそりと生活していたのだ。
これは東門隊員の過去の記憶なのか? いや、父母は自分の父母だ。きっと
ただ部屋は、白っぽい土造りの様で、窓にはサッシも何も無く、丸く光取りの穴が開いているだけだ。そこにカーペットを敷き、僕たちは床に座りながら生活している様だった。
僕たちが楽しく食事をしていると、ライフル銃で武装した2人組が押し込んでくる。
母の悲鳴。父が2人組を非難して大声で叫んでいた。
2人組は、その場で父を射殺した。母は僕たちに裏から逃げろと指示し、奴らに素手で掴みかかっていく。僕は弟の手を引いて、必死に裏口から階下に駆け降りていた。その時に聞こえた母の悲鳴と、何発もの恐ろしいライフルの発砲音。
僕と弟は必死に階段を駆け降りて、砂ぼこり舞う、廃墟と化した町の外へと逃げ出そうと走る。
怖い……。捕まると殺される……。
そんな思いが僕の心に渦を巻く。
僕と弟は、内戦で崩れ落ちた廃墟の瓦礫の陰に潜んだ。遣り過ごせるだろうか? だが、ライフルを持った追手は数を増やし、僕たちが隠れていないかと廃墟を虱潰しに探している。
「チョウ兄ちゃんは魔法が使えない。僕が戦うから、兄ちゃんは逃げて!」
弟はそう叫ぶと、僕が止める間もなく大通りに飛び出して行った。そして、彼らにハチの巣にされながらも、爆発系の魔法を使って敵を殲滅させる……。
僕はそこで目を醒ました。
「どうやら、あいつらに見つかったみたいね。チョウ君には悪いけど、あいつらに降参する訳にはいかないの……。戦うわよ」
当然だ!