灰色の疑惑(3)

文字数 1,305文字

 日曜日、また僕の番がやって来た。
 場所は多摩川の河川敷、メンバーは川崎隊長、もとい、川崎店長と僕、それと店長の息子と言うことで、大師君が手伝ってくれている。
 平日のオフィスでは、昼休みにオーダーが集中し、それが済むと、もうパトロールは終りらしいのだが、休日の公園等では、パラパラとしたオーダーが、集中はしないが終わることなくやって来る。
 今も三人組のお姉さんたちが、ウミウシ2号に来てホットドッグを注文した。
 特注のパンがオーブントースターで焼かれ、ロースターで温められていたソーセージが野菜と共にそれに挟まれる。ケチャップとマスタードはお客様のお好みだ。
 僕が作ったホットドッグ三人前は、カウンター越しに僕が代金引き換えで渡す。飲み物のコーラは、紙コップに入れて大師少年が仮説テーブルへと運んで行った。
「わーかっわいい! 僕、お手伝い? 名前、何て言うの?」
「うん、今日はパパとバイトのチョウ兄ちゃんのお手伝い。僕、ダイシって言うんだ!」
 大師隊員がしっかり子供になり切って、お姉さんたちとお話をしている。しかし、大師隊員が、お姉さんたちの何倍も生きてるって知ったら、さぞや驚くだろうなぁ。
 ホットドッグを食べたお姉さんたちは、「美味しかったね」と言いながら嬉しそうに帰っていく。ま、そう言われれば悪い気はしない。勿論、それは僕の腕などではなくて、材料の質の問題なのだけど……。
 何と言っても、素材は世界政府負担で高級品が使われている。にも関わらず、値段は儲け度外視の低価格だ。実際、これを食べない手は無いと思う。
 そう言う訳だから、僕がパトロール担当になった時は、本来は秘密なのだが、さり気なくクラスの数人に僕のバイトしている場所を教えている。で、前回は糀谷、今日は天空橋さんが来てくれた。

「おい、チョウ君、折角だから休憩したらどうだ?」
 川崎店長が気を利かせて僕の休憩時間を取ってくれる。それと、賄いで二人分のホットドッグと飲み物を奢ってくれた。
 店長の気遣いに感謝しつつ、僕は簡易デーブルで待つ天空橋さんに、ホットドッグとコーラをもって行き、隣りの席に並ぶ様に座った。
「わぁ美味しそう!」
 天空橋さんはそう言って喜んでくれる。僕はもう、その一言だけで充分満足だ。でも、是非このホットドッグは食べていって欲しい。
 僕たちは、まるでデートでもしている様に一緒にホットドッグを食べ、コーラを飲んだ。うん、いつの日かこんな風に、僕は天空橋さんと本当のデートがしたい。そんな日がいつか来て欲しい。真剣に僕はそう思った。

「いいなぁ、こんな美味しいホットドッグのお店でアルバイト出来て……。私も一緒にバイトしたいなぁ」
 え? ええ?? そ、そりゃ僕だって、一緒に天空橋さんとバイトしたいさ。でも、これは……。
「これは仮のバイトなんだよね。うん、分かってる。だから、鳳さんと一緒にバイトしてるんだもんね」
 ごめん、天空橋さん。そうなんだ。これは、ホットドッグを売って儲けるのが目的じゃ無いんだ。
 僕は食べ終わって、彼女が「ばいばい」と言って手を振りながら去っていくのを、ウミウシ2号のキッチンから黙って見つめていた。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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