異星人の恋(4)

文字数 1,054文字

 でも、僕たちは携帯を没収された。それが連絡防止の為だったのか、他に理由があったのか、僕には分からない。ただ、どうせ没収されるのであれば、電源を入れておけば良かったと思う。そうすれば、せめてGPSにより、このスナックを特定できただろうに。
 だが、アルトロはこの携帯が没収される時、敢えて抵抗をしなかった。と言うか、僕が抵抗するのを邪魔してきた。
 彼は少女が一切の携帯を手渡すように要求してきた時、アルトロはこう言ったのだ。
「いいんだ。彼らの言うことを聞いてやってくれ。頼む、チョウ」
 僕は彼の頼みを聞いた。ま、アルトロの協力が無ければ何も出来ないんで、僕は黙って聞くしかないけど……。

 結果、僕たちは横浜港近くのスナックに軟禁された。
 彼らの意図は分からない。僕とアルトロを殺そうと言うのか? それとも別の目的があるのか? アルトロの考えも分からない。何か策があるのか? それとも彼らの種族の意志に従い、僕と共に死を受け入れようとしているのか?
 いずれにしても、彼らは僕たちを直ぐに殺そうとだけは思っていない様だった。
 僕はアルトロとの会話も極力避けた。アルトロの種族は脳内に共生し、お互いにテレパシーの様な手段でコミュニケーションを図っていると、彼は前に言っていた。だから、僕とアルトロが脳内で会話すると言うのは、周りに聞こえる様に大声で会話しているのと変わりがないのだ。

 ただ……、僕はスナックに拉致監禁されてはいたが、別に拘束されていたと言う訳ではない。
 単に奥のテーブルに座らされていただけで、縛られてもいないし、手錠を掛けられていると言う訳でもなかった。暫くすると、彼らは簡単な軽食も奢ってくれた。だから空腹で倒れそうだと言うこともない。
 そう言う訳で、僕は急いで脱走しようとは全く考えていなかった。もし脱走しようと言うのなら、携帯を奪われる前に抵抗すべきだし、アルトロはそれを拒否したのだ。ならば彼は脱走以外の解決策を考えている筈と考えたのだ。ま、彼が観念したと言うのなら、どうしようもないのだが……。

 もう九時を回ったろうか? 突然彼らに、アルトロは警告を発した。
「もう観念して、降伏してください。このスナックは異星人警備隊に包囲されています」
 スナック内にいる数十人の異星人共生人間が低く動揺の声をあげる。
「どうして、そんなことが分かるのです? 鈴木挑さんの通信機器は全て取り上げた筈です。あなたの位置を特定できる筈がない!」
 僕たちをここに導いた女子高生が、驚いてアルトロに食って掛かった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み