別世界からの侵略「前編」(7)

文字数 1,480文字

 川崎隊長と大師隊員の船は、地球侵略の先兵として派遣されたものだけあって、隠密行動に最適の宇宙船であった。
 完全黒体のボディは、光は元より、いかなる電磁波も反射することはない。この為、隊長の宇宙船は、太陽など恒星の前を横切る時に、その光を遮ること以外は、レーダーでも目視でも確認することが出来ないのだ。
 この宇宙船には惑星間航行機能も供えているが、これは冷凍睡眠を基本とし、その間に移動すると言うシステムなので、今回の場合には使い物にならない。ただ、それでも、飛行速度は外宇宙航行用の船だけあって目的の小惑星帯までは二日と掛からないそうだ。
 川崎隊長と大師隊員は操船を担当し、砲台には港町隊員が付いている。
 艦長の席には小島作戦参謀が座り、目を閉じて、瞑想しながら何かを感じとっていた。
 ストラーダ隊員は奥の船室に籠り、新兵器の調整に勤しんでいるらしい。そんなに調整が必要なものなのか、僕には全く分からないが、彼女もただ座っているのは落ち着かないのに違いない。
 僕も船橋にはいるのだが、何もすることがなく正直手持ち無沙汰だ。
 流石に限界になったので、邪魔かとは思ったが、小島参謀の所に話をしに行ってみた。
 
「小島さん、小島さんって人の心も読めるだけでなく、未来も見えるのですか?」
 小島参謀は目を開いて、邪魔者の僕を叱りつけもせず、ニッコリ微笑んで僕との会話を始めてくれた。
「どうして?」
「だって、この作戦行動の前に、僕たちの何人かが死ぬって言ってました。あれ、予言と言うか、予知ですよね?」
「あれは置いておいて、未来なら見えないことも無いわよ」
「未来の見える小島さんが戦うのだから、この戦いは僕たちの勝ちってことですよね?」
「ごめんね、自分の未来は見ることが出来ないのよ。勿論、能力的な判断からすると、私が負ける何てことは、ある筈が無いんだけどね」
 はぁ、凄い自信だなぁ。ま、確かに実力があるものな……。
「自分の未来が見えないなんて、不便ですね」
「でしょう? 私も何でだか分からなくて、何回か試してみたのよ。でね、どうも自分の未来は、未来を見た時点で変わってしまうから固定されないらしいの」
 はぁ??
「分子電子、全ての粒子の動きとエネルギーと方向を把握できるとして、それらが何分後、何十分後、何時間後の状況がどうなっているか? それを画像で見るの。それが未来の情景って訳。
 だけどね、不確定要素ってのがあるのよ。それによって、同時に複数の未来の可能性が出来てくる。私にはそれが全て重ね合わせで見えてくるの。だから、ずっとずっと未来や、不確定要素の影響があまりに大きい場合、未来は、ぼやけたイメージでしか無いの。
 でね、自分の未来はそれを見た時点で行動が変化しちゃうでしょう? すると未来のイメージも変化しちゃう。それが見えたとしても、これもまた変化しちゃう。そうして、結局固定することが出来ずに自分の未来は見ようとしても、ピンボケして存在すら見えなくなってしまうの。
 それは、チョウ君たち異星人警備隊隊員の未来にも言えるのよ。私が見た時点の未来と違って、今の君たちの未来には私の行動が大きく関わっている。だから、チョウ君たちの未来も、私の未来と同じでもう見えはしないの。だから誰が死ぬかも分からない。誰も死なないかも知れない。チョウ君が死ぬかも知れない。勿論、私は死なないけどね」
 はぁ~。
「それは兄にも言えるのよ。そう言う意味ではチョウ君とアルトロ君も、SPA-1に憑依さえしていれば、決して死なないと思っていいかもね」
 これも、予知のひとつなのだろうか?
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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