灰色の疑惑(1)

文字数 1,271文字

 万能パトロールカーが、異星人警備隊に正式配備されたのは、その日の終業時刻間近になってからだった。

 本音を言うと、僕はもう、さっさと帰りたいと思っていた。
 僕は、帰宅後に片付けねばならない宿題のことで、既に頭の中が一杯だったのだ。正直、パトロールカーなど、どうでも良いことだった。
 そもそも、学生の身分である僕やストラーダ隊員は、残業は免除されると言う規約があった筈だ。この時刻からの業務指示は規約違反じゃないかと思う。
 なのに……、川崎隊長の号令により、僕たちは全員で地下駐車場に移動し、仕方無く、そいつの説明を受ける事になってしまっていたのだ……。
 ついでに言うと、僕は以前、一度だけ、試作品段階ではあったが、パトロールカーを見せて貰ったことがある。それはパトカーと言うよりは、放送中継車の様な代物で、狭い車内に放送機材ならぬ、何やら怪しげな制御装置がギュウギュウ詰めにされている奇妙なマイクロバスと言うイメージであった。
 試作とは言え、一度でもパトロールカーを見たことのある僕としては、残業してまでわざわざ見物したいとは、とてもじゃないが思えはしなかった……。

 僕たちが、異星人警備隊本部の地下駐車場に行ってみると、そこには二台のマイクロバスが駐車してあった。恐らくこれが配備された正式のパトロールカーなのだろう。
 正式パトロールカーは、試作品とは形状は変わっていないのだが、白一色だった塗装が、今回は随分と派手なものに変わっていた。
「これが、我々異星人警備隊本部に新たに配備された、万能パトロールカー、ヌディブランコ1号と、ヌディブランコ2号だ」
「ヌディブランコ?」
「ウミウシと言う意味だそうだ」
「ウミウシ? なんだ、その恥ずかしい名前は?」
 正直、僕も港町隊員の意見に賛成。だが、確かにカラフルな塗装にパラボラアンテナを車両後部の屋根に背負った姿はウミウシに見えなくもない。もしかすると、オレンジのサイドミラーと、この鮮やかな青地に黄色の筋や黒のスポットは、アオウミウシをイメージしているのかも……。
「と、取り敢えず、これで移動に、個人の車を使わなくて済む……わね」
 以前、僕と彼女の車で移動したことのある東門隊員が、少々引き攣った声を上げた。
「おう、その通りだ! 燃料費は全て世界政府が負担することになる。尚、ウミウシ1号は完全な電気自動車で、この専用駐車場で充電するのだ。ガソリン車や水素燃料車と違い、酸素の無い海中であろうと真空の宇宙であろうと、移動可能となっている」
 川崎隊長が自慢気にウミウシ1号の説明をする。しかし、東門さんたちが気にしているのは燃料とかでなく、見た目なんだけどなぁ。
「とは言っても~、海中移動には潜水(サブマージ)ユニットが必要で~す。空を飛ぶには飛行(スカイ)ユニットが必要で~す。宇宙(スペース)ユニットは未だ未完成ですので~、当分宇宙に飛ぶのは不可能ってことになりま~す。それに~、市街戦は想定されていないので~、ヌディブランコ自体には、武器、搭載されていませ~ん」
 ストラーダ隊員は受け入れ担当者らしく、隊長の説明に補足を加えた。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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