イタリアから来た少女(9)

文字数 1,109文字

 ストラーダ・インドゥストリアーレさんは、その後、駆けつけた異星人警備隊のメンバーにガードされ、無事、東京湾海底にある警備隊本部へと送られて行った。
 僕はその時に起こされ、港町隊員などに「本当に役に立たん奴だな~」と散々馬鹿にされた挙句、一人新幹線で家路に付くことになったのである。

 そして数日後の朝、作戦参加を禁止されたままの僕は、何も心配することなく学業に励むため、青嵐高校の教室に遅刻もせずに登校し、これから始まるHRに出席しようとしていたのだ。
 ま、今ごろ異星人警備隊作戦室では、ストラーダさんが、世界政府科学班から出向し、正式に警備隊の一員となったことを皆に告げているに違いない。
 彼女は優秀なAI技師で、警備隊の新兵器であるSPA-1の制御担当として、隊に加わると言うことらしいのだ。

「おう、スズキチョウ、知ってるか?」
「何をだよ?」
 後ろに座っている穴守一也が僕の背中を小突いて話し掛けてくる。
「今日から編入生が来ることをだよ。彼女、イタリア人とのハーフで、すっげえ美人なんだぜ!」
 勘弁してくれ。もうイタリア娘は沢山だ。
 って、まさか……。
「おい穴守、名前を知っているか? その編入生の」
「勿論だぜ。彼女は、鳳サーラ。オードリーヘップバーン似のブルーネットの美少女だ」
「ブルーネットか……」
 僕は安堵の気持ちの他に、正直、残念な気持ちも半分以上あった。まぁイタリア娘って共通点がある以上、ストラーダさんと何らかの繋がりが無いとも限らない。一応希望だけは持っておくことにしよう。

 だが、そんな僕の妄想も、彼女が教室に現れた時点で全て吹き飛んでしまった。
 あの顔、あの喋り方……、髪の毛を染め直したって、何も変わらないじゃないか!
 彼女は僕の顔なんか見たことも無いと言った表情をしているけど、そんな訳はないだろう!
 まぁ確かに、知り合いだってことがバレたら、僕と彼女がどうして知り合ったのかを説明しなきゃならなくなる。これは酷く面倒だ。

 丁度その時、僕の携帯のアプリに、小島参謀からのメッセージが入ってきた。
「鈴木君、彼女、君の学校に編入させました。彼女も隊員では在りますが、同時に組織の重要人物でもあります。もしもの時には、君がしっかり護衛をするようにね! では、宜しくお願いします」
 はぁ、小島さんの差し金か……。
 と思っていると追加のメッセージが……。
「追伸、鳳サーラは彼女の本名なんだって。だから、仕事以外はストラーダって呼んじゃ駄目よ。それから君、警備隊仲間ということで彼女と仲良くしようとしても駄目。君たちが隊員だってことは、警備隊の機密事項なのだからね」
 ちぇ! 何もいいこと無いじゃないか!
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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