イタリアから来た少女(5)
文字数 1,078文字
僕とストラーダさんは、運よく捉まえることの出来たタクシーに飛び乗り、そのまま港湾地域へと向かった。そこは待ち合わせ場所から左程遠くない所であった。
しかし、強引な人だ。
それに、追われているのだとしたら、このタクシーの運転手が、もし敵方の異星人テロリストだったら、彼女はどうする心算だったのだろう?
まぁ、その懸念については、杞憂だったようで、僕たちは無事に目的の場所に辿り着くことが出来た。
それにしても、人気 のない所だ。
タクシーが去ってしまうと、広い道路があるだけで、僕たち二人の他には誰一人見当たらない。確かに流行りの疫病のせいで観光客は激減しているだろうし、平日の午前中という時間帯もあるだろう。だが、それにしても神戸という大都会にこれほど人気 のない場所があるなんて僕には驚きだ。
そして、人気 のない場所というのは敵の襲撃を避けるのに適した場所とは言えない様な気がする。
とりあえず僕は彼女に声を掛けた。自己紹介もしていなかったのだ。
「ストラーダ・インドゥストリアーレさん……ですよね? 僕は異星人警備隊の隊員で、鈴木挑 と言う者です。あ、チョウと読んでください。日本人の苗字に鈴木は結構多いですから……」
「C’ho? 変な名前ですね。あたくし、ストラーダ・インドゥストリアーレで~す。ストラーダと呼んでくださぁ~い」
「はぁ……」
「でも、チョは無用心な人で~す。あたくし、確かめようともしないで、異星人警備隊名乗りました。気を付けた方がいいで~す」
そ、そりゃ確かにそうだが……、あなたが調子を狂わせているんじゃないですか!
「それにしても、日本語、お上手ですね。あなたが日本語を話せるとは聞いていましたが、これ程とは……」
「ありがと~。あたくし、ずっと日本で暮らしていました。日本語とても得意で、褒められていました~」
はぁ、これが、イタリア人のノリなのだろうか?
「ところで、敵に追われていたのですか? でも、だったら何で、こんな人気の無い場所に逃げて来たのですか? ここでは、僕はあなたを守ることが出来ませ……」
「敵に追われていた? はい、確かに敵に追われていました。でも、あたくし逃げて来た? 違いま~す」
さっきまで、道路は人気が全くなかった。だが、今はいつの間にか、道の前後から僕たち二人に向かって、合わせて三十人もの男たちがゆっくりと歩いて来ている。
それは、追い詰めた獲物を逃がすまいと包囲する、キツネ狩りのハンターの群れの様であった。
「逃げたのではありませ~ん。あたくし、実際の敵を使っての、最終テストをする為にここに来たので~す」
しかし、強引な人だ。
それに、追われているのだとしたら、このタクシーの運転手が、もし敵方の異星人テロリストだったら、彼女はどうする心算だったのだろう?
まぁ、その懸念については、杞憂だったようで、僕たちは無事に目的の場所に辿り着くことが出来た。
それにしても、
タクシーが去ってしまうと、広い道路があるだけで、僕たち二人の他には誰一人見当たらない。確かに流行りの疫病のせいで観光客は激減しているだろうし、平日の午前中という時間帯もあるだろう。だが、それにしても神戸という大都会にこれほど
そして、
とりあえず僕は彼女に声を掛けた。自己紹介もしていなかったのだ。
「ストラーダ・インドゥストリアーレさん……ですよね? 僕は異星人警備隊の隊員で、鈴木
「C’ho? 変な名前ですね。あたくし、ストラーダ・インドゥストリアーレで~す。ストラーダと呼んでくださぁ~い」
「はぁ……」
「でも、チョは無用心な人で~す。あたくし、確かめようともしないで、異星人警備隊名乗りました。気を付けた方がいいで~す」
そ、そりゃ確かにそうだが……、あなたが調子を狂わせているんじゃないですか!
「それにしても、日本語、お上手ですね。あなたが日本語を話せるとは聞いていましたが、これ程とは……」
「ありがと~。あたくし、ずっと日本で暮らしていました。日本語とても得意で、褒められていました~」
はぁ、これが、イタリア人のノリなのだろうか?
「ところで、敵に追われていたのですか? でも、だったら何で、こんな人気の無い場所に逃げて来たのですか? ここでは、僕はあなたを守ることが出来ませ……」
「敵に追われていた? はい、確かに敵に追われていました。でも、あたくし逃げて来た? 違いま~す」
さっきまで、道路は人気が全くなかった。だが、今はいつの間にか、道の前後から僕たち二人に向かって、合わせて三十人もの男たちがゆっくりと歩いて来ている。
それは、追い詰めた獲物を逃がすまいと包囲する、キツネ狩りのハンターの群れの様であった。
「逃げたのではありませ~ん。あたくし、実際の敵を使っての、最終テストをする為にここに来たので~す」