異星人の恋(2)

文字数 1,515文字

 僕は誤魔化しても仕方ないと思い、正直に大師隊員に理由を説明することにした。少なくとも彼や、今来た港町隊員なら、男のことを話しても馬鹿にされることはあっても、軽蔑されることは無いだろう……。
「実は昨日の夢で、東門隊員に拷問を受ける夢を見ちゃったんですよ。それで、ちょっと……」
「あ、あれか! あれは男にはキツイよね。男性の生物としての大切な生殖物質を、強引に消費させようってんだから、それで子孫を次世代に残せなかったら、僕たち男は存在価値すら失ってしまうもんね」
「なんだ? お前まさか、魔依(まえ)さんに惚れてるんじゃないだろうな!」
 港町隊員が訳の分からない言いがかりをつけてくる。そりゃ良く見りゃ東門隊員は結構美人だし、スタイルも悪くないけど、高校生としてはちょっと小柄な方の僕とでは、かなりバランスが悪すぎる。それに東門隊員は僕になど目もくれず、言葉だって、僕には殆ど掛けて来ないじゃないか。
「でもチョウ兄ちゃんと東門さんって、繁殖可能なのかなぁ?」
「繁殖可能?」
「そうさ、異星人同士のカップリングは難しいものがあって、姿は同じ様でも種が大きく異なっている場合は子孫を残すことが出来ないんだ」
 成程、確かにある程度近縁の亜種でないと、交雑も難しいんだな。もし仮に子どもが出来たとしても、一代雑種と言う場合も多いのだろう。子孫を残すって意味では、異星人との結婚は僕が考えるよりかなりハードルが高いものなのかも知れない。
「おい大師、結婚は繁殖だけのもんじゃないだろ! もしそれが繁殖目的でしかないのなら、男同士、女同士の結婚だって無効じゃねぇか!」
 港町隊員の言うことも尤もだ。僕たちがパートナーを選ぶのは、繁殖だけが目的と言う訳ではない。でも、そうなると、犬や猫と結婚するってのも有りなのだろうか?

 しかし、異星人の存在を認めて、彼らと交流するとなると、色々新たな問題を考えなきゃならないよなぁ。

 僕たちは、地球人として、ずっと閉ざされた世界に生きてきた。それが突然開国となった場合、異星人が普通にいる世界に僕らはついていけるのだろうか?
 植物体異星人のライフスタイルにも、僕は酷く驚かされた。僕ら人類は、まず、他の宇宙人のライフスタイルを理解する必要があるんじゃないだろうか?
 そう言う意味では、大師隊員たちの種族のスタイルにも、僕は疑問に思っていることがあった。
「でも、大師隊員、成長するに従って子供になるって、大師隊員たちの種族って、お爺ちゃんで生まれてくるのかい?」
 大師隊員は小学生の姿をしているが、実際は川崎隊長のお父さんとのことで、彼らの種族は成長するに従って若返るという不思議な特徴を持っているらしい。
「少し誤解があるね。僕たちだって生まれてくる時は赤ん坊だよ。地球人と同じ様に成長して大人になる。で、繁殖期を終えると徐々に子供に戻っていくのさ」
「不思議だね」
「僕に言わせると、チョウ兄ちゃんたちの方が不思議さ。僕たちは、山を登って頂上にきたら降って行く様なものだからね。子供に戻るのに何の違和感も無いよ。
 僕たちの種は、繁殖期の男女が一番重要だと判断しているんだ。だから繁殖期を過ぎると子供の姿になって捕食者に狙われ易くしているんだと思われている。それで繁殖期のものが生き残れるからね。それに、狙われやすい子供も、老人が混ざることで、生き残れるチャンスが増すしね」
 老人が食べられることで、他の生き残る確率が増すと言うことか……。
 確かにそう言われると、老化していく僕らの方が、彼らより進化が不完全な気がしてきた。捕食者から見れば、同じ狙いやすい弱者でも、固い干からびた老人よりジューシーな子供の方が旨そうだもんな。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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