不協和音(4)

文字数 1,400文字

 僕はまず声の主、大師隊員の姿を探した。彼は後方の太い人造大理石の柱の陰にいる。川崎隊長はその足元に横たわっていて、東門隊員から応急処置を受けている様だ。

 それにしても、ロボット兵器だって? そんなものが現実に可能なのか?
 確かに、SPA-1も、位置付けはロボット兵器だが、しばしば制御(コントロール)が上手く行かず、少しの衝撃でハングアップしてしまうじゃないか。
 そもそも、戦闘ロボットが動くには、大量のエネルギーが必要なのだ。SPA-1の場合、蓄電池を持っているが、それは制御用コンピューターを動かす為だけの物だろう。
 SPA-1が必要なエネルギー量は、制御用の蓄電池程度では、とても賄える筈がない。前にそう東門隊員が言っていた。ま、彼女が想像で言っていることなので、僕には確証など無いのだが……。
 自称魔女の彼女に言わせると、SPA-1の大量エネルギー需要は、魔法力に依って賄われているのだそうだ。
 具体的には、SPA-1に魔法力の増幅機構が組み込まれていて、術者の魔法の発動時、SPA-1がそれを増幅し、SPA-1自身が魔法を使ったかの様に、時空間のエネルギー準位を利用し、彼の行動エネルギーが賄われているとのことらしい。
 まぁ、僕の考えでは、単にSPA-1はロボットじゃなく超異星人なだけで、行動エネルギーは僕の生気で賄われているのではないかと思っているのだが……。

「アルトロ、もし、大師隊員の言うことが事実なら、こいつに手加減は不要ってことかな?」
「そう言うことになるね」
 僕は、そのロボット兵器の能力を試してみようかと考えた。
 先ず反応速度だ。僕の突きや蹴りにどう対応するのか? ガードしようとするのか? それが間に合うのか?
 これは正直期待外れだった。
 彼は僕の攻撃を全てノーガードでその身に受けている。だが、その装甲の強さは特筆に値するかな? 多少、手加減したとは言え、突きでは後退りするだけで倒れず、前蹴りでやっと吹き飛ばすことが出来たのだ。
 それに耐衝撃性も高い。
 あれだけの重量のある身体で、思いっきり柱に激突したのだ。配線の数本、接続部の破損、そんなものがあっても、全然不思議じゃない筈なのに、ちゃんと起き上がって僕に向かって来る。
「チョウ、もう時間がない。遊んでないで決着を着けるぞ」
 もうそんな時間か……。
 僕たちは、アルトロの能力である憑依と言う形でSPA-1を制御している。このため活動時間に限界がある。
 活動限界内に自分の身体に戻らないと、僕もアルトロも、自分の力では元の身体に戻れなくなってしまうのだ。

 僕は、このロボット兵器のどてっぱらに正拳をぶち込んで、風穴を開けてやろうと思った。だが、その前には身体を動かすことが出来なくなる。アルトロが制御を引き継いで、こいつに(とど)めを刺す心算らしい。
 SPA-1は右手の甲の皮を剣に変化させ、このロボット兵器の周囲を周り、剣舞を舞う様にその剣を振るった。
 僕には相手を斬っている様には見えなかったが、それで切っ先は届いていたのだろう。ロボット兵器の右足と左手は、SPA-1が剣を戻すと同時に床へポトリと落ちる。
 僕とアルトロは、そのロボット兵器が一瞬遅れて倒れるのを確認し、SPA-1の憑依を解いた。
 後はこのロボット兵器を誰かが捕獲し、ハングアップのままのSPA-1を異星人警備隊回収班が片付ければ、このミッションはこれで全て完了だ。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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