異星人の恋(5)

文字数 1,579文字

 アルトロは、リーダー格と思われる女子高生に、何故、ここが特定出来たかを説明した。
「出来るんですよ。私がこう思うだけで……『ここはどこだろう? 我々は拉致された様だが、場所は山下公園の近く。確かこんな風に歩いた筈だ……』ってね。
 もう、これだけで伝わる、私の心を読んでしまう恐ろしい異星人がいるんですよ、我が異星人警備隊には」
 こ、小島参謀だ! そうか! 心のガードを無効にし、ここの場所を考えれば、参謀には筒抜けなんだ!
「分かったでしょう? 彼らは私を仲間として認めてこそすれ、寄生虫だなんて考えていないんです。もし話し合いをする余地があるのなら、私のことを知った上で、我々を助けに来た、参謀の話を聞いて下さい」
 少女は少し考えてから、渋々アルトロの提案に同意した。

 その将に直ぐ後、内側から鍵をしめた筈のスナックの扉が簡単に開き、一人の女性が涼しい顔をして入って来る。当然、心を読んだ当人、小島参謀だ。
「あら、チョウ君、未成年だって言うのに、仕事帰りにスナックに寄ってるなんて、なんて良い身分なのかしら?」
 小島参謀の軽口には、僕も大分慣れてきた。
「この人たちが、是非僕に奢りたいって言うものでね。でも、アルコールが出ないのが少し残念ですけどね」
 そうやって、軽く参謀に挨拶を済ませると、小島参謀は女子高生に向かって、冗談交じりに交渉を始める。
「彼、まだ未成年なのよ。それにもう九時、悪いんだけど帰させて貰うわね」
「待って! 黙って出て行けると思っているの? 彼諸共、あなたも殺すわよ!」
 小島参謀は、そんな脅しにも全然動揺せず、涼しい顔の儘、彼女にこう言い切った。
「それは不可能ね。あなた方が束になっても、私には敵わないし、私には爆弾だって通用しないわよ。それに、そもそも、あなたのグループには、その意志が無いでしょう? 彼を殺すなんて」
 女子高生はそれを聞いて、返す言葉を失ってしまった様だった。
「私たちを罰するの?」
「あら、何で? チョウ君はあなた方に誘われて奢って貰っただけよ。別にぼったくられた訳でもないし、何か見返りを要求された訳でもないわ。私は夜遅くなったので、保護者代理としてチョウ君を迎えに来ただけ。違う? チョウ君」
「そうですよ。あ、サンドウィッチ美味しかったです。ご馳走さまでした」
 僕も小島参謀の考えに賛成だ。何も意味も無く罰する必要はない。
「あ、携帯は返してあげてね。必要なのよ、異星人警備隊の隊員には」
 小島参謀の要求に、後ろにいたこの店のオーナーが引き出しから僕の携帯を取り出し、僕に手渡す。
 小島参謀はそれを確かめると、天井に向かい誰に話すでもなく、皆に聞こえる声で独り言を言い始めた。
「チョウ君の心には、異星人が住み着いている様なのだけど、私はそれを知っていますし、彼が人類と彼らの種族の架け橋になろうと努力していることも知っています。そして、それは、きっと、いつの日か報われると私は信じています。
 でも、正直、今の人類にそれを公開するのは、まだまだ早すぎます。どこにいるか分からないけど、彼の種族の方が心配している様に、人間はまだ、彼を受け入れはしないでしょう。
 ですから、それまでは他の隊員にも話さず、私の胸三寸にそのことを収めておこうかと思っています。
 彼が人類の為に闘っていき、欠けがえのない人間の大切な仲間として認められた時、その時にこそ、もう一人の彼の存在を公表すれば良いのです。急ぐ必要は全くありません。
 と言うことで、今は公表はさせない様にしますから、彼の種族の方たちも、暫くは、彼をそっと見守っていて欲しいのです。そして、出来れば、彼を応援していて欲しいのです。いつか胸を張って公表できるその日まで」
 小島参謀はその後、僕の方を向いて、こう付け加えた。
「じゃ、行きましょう。分かったかな、もう一人の君」
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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