別世界からの侵略「後編」(5)

文字数 1,665文字

 その後、船内では、この様なことがあったと聞いている……。

 大悪魔へのとどめは川崎隊長が行った。ストラーダ隊員の持っていた武器で、敵の頭部をぶち抜いて破壊したのだそうだ。
 それを見届けると、港町隊員は砲撃台に戻らず、皆のいる所にゆっくり歩いていった。その彼の手には銃が握られ、全員を脅す様に異星人警備隊のメンバーへと向けられている。
「悪いが、全員の俺の指示に従って貰おうか……」
「何を考えているの?」
 東門隊員が驚いた様に叫んだ。だが、港町隊員はニヤリと笑うだけだった。
「全員、脱出用のカプセルに入って貰おうか? この船は俺が乗っとる! まず、東門、てめぇからだ!」
 東門隊員が不満そうに、脱出用のカプセルのある部屋に向かう。そして、間違いなく東門隊員が脱出用のカプセルに納まったのを大師隊員に確認させると、彼に脱出用カプセルの発射を命じた。
 完全黒体の脱出用カプセルは、救助信号を出さない限り、存在を確認することは難しい。この為、敵にも、時に味方にも、誰にも気付かれることなく、広大な宇宙を彷徨い続けるということも在り得るのだ。
 漆黒の宇宙に、東門隊員を乗せた脱出用カプセルが、音もなく射出された。

「さぁ次は大師、てめぇだ」
 だが、少年は席を動かなかった。そして、両手を上げていた川崎隊長は自分の手を下ろし、港町隊員に向かってニヤリと笑う。
「港町、それは船長である私の役目だろう? 勝手な行動は隊規違反だぞ……」
「うるせぇ!」
「確かに、もう、この船はお終いだ。敵の船団の中央に突っ込んで自爆するしかない」
「何、言って、やがるんだ!」
「誤魔化すなよ……。私は立場上、こうする義務があるのだ。この星を侵略して自分たちの物にするのだから、地球という星を、命に替えても破壊させる訳にはいかんのだ」
「隊長こそ、誤魔化すなよ。あんたは自分の星を裏切って、スパイ活動なんか、もうとっくに止めちまったんだろう?」
「自分の星を裏切った訳じゃない。父も、私も、自分の星は大切だ。そして、この地球という星も守りたいのだ。
 今、地球では大悪魔殲滅が採択された筈だ。ここで戦闘を行えば、彼らも攻撃軍を派遣するだろうし、私たちが敵を一機でも撃ち落とすことが出来れば、闘いは地球側に有利に働くのだ!
 確かに小島参謀の力は、ずば抜けている。彼女が戻ってくれば、負けることは無いかもしれん。勿論、信じてはいるが、万が一と言うこともある。私一人の命で、そのリスクが軽減できるのであれば、安いものだ!!」
「だったら、あんたは生きな。地球はまだ、異星人警備隊が……、その隊長になる異星人が必要なんだ。それに、カミカゼってのは軍人の専売特許じゃねぇぜ、俺たち異星人テロリストの得意技でもあるんだ……」
 港町隊員はそう言うと、そのまま川崎隊長の腹部を撃った。そして顎で大師隊員に指図し、腹部を押さえる隊長を脱出用カプセルに収めさせたのだ。
 そして、戻った大師隊員に、そのまま港町隊員は銃を向ける。
「大師、お前もだ」
「いや、僕は残るよ……」
「馬鹿言ってんじゃねぇ。死ぬのは一人で沢山だ! まぁ、脱出用カプセルで脱出したとしても、参謀様が助けてくれると言う保証はないがな……」
「この船の操作は僕の方が上手だと思うよ。どうせなら、無駄死にはしたくないよね。勿論、港町隊員にも降りろなんて言わないさ。突っ込む前にこの船が撃ち落とされちゃ堪んないもん。だから、砲撃台で死ぬまで撃ちまくって貰う必要があるんだ……」
「OKだ。それで妥協しよう」
「あと一つ。鈴木隊員の身体を脱出用カプセルに入れて脱出させてあげようよ。助かる保証なんて無いけどね」
「ああ、そう言えば、今あいつ憑依してるんだっけ? そんなこと出来るなんて、ずっと知らなかったな。あ、それとストラーダの遺体も、ついでにカプセルに入れて脱出させるか。宇宙葬ってやつでさ」
 こうして、異星人警備隊の船から、怪我をして意識を失った川崎隊長、僕の身体、鳳さんの身体が、それぞれ脱出用カプセルに収められ、宇宙空間へと放出されたのだった。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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