千羽鶴の贈り物(6)

文字数 1,097文字

 僕の目の前に、異星人警備隊の秘密兵器、ロボットのSPA-1が瞬間移動してきた。透かさず、僕はSPA-1に指示を出す。
「さぁ、SPA-1、あの女を追跡し、捕まえるんだ!」

 SPA-1は素早く移動すると、地上へと階段を登ろうとしている女のコートの裾を掴み、無理矢理、女を後ろ向きのまま引き落とす。女は後頭部から落とされ、後ろ向きに転がり、僕の方へと戻ってきた。
 さぁ、これで、僕とSPA-1で挟撃の形になった。
 女はSPA-1の方をより強敵と判断したのか、SPA-1に向きを変える。僕はそこを背後から攻撃だ。
 女は僕の攻撃に気付き、素早く振り向いた。そして、僕の正拳突きの方は腹に受けたものの、威力のある廻し蹴りの方はしっかりガードしてくる。手強い。
 そして、女の前蹴り。僕はそれを鳩尾に喰ってしまった。思わず前屈みになって僕は後退りする。
 女は僕に追撃を加えるかと思ったのだが、後ろを向いてSPA-1へと攻撃をしかけていた。SPA-1は……。

 ん? どうして、動かないの?
 そこで、ハングアップするか~。
 お~い、SPA-1!

「仕方ない。チョウ、気絶しよう」
「OK! アルトロ」
 僕はアルトロの助言に従い、腹を抱えたまま、その場に(うずくま)り意識を失った。

 SPA-1は数発ばかり女の蹴りを受けていたが、ダメージは特に無い様だ。
 女は僕、即ちSPA-1に左右の正拳突きを連射してきた。だが、全くSPA-1にはダメージを与えられない。
 女の左右の上段廻し蹴り……。これも簡単にSPA-1はガードする。一転ジャンプしての顎への蹴上げ、そして、女はそれをスウェーバックで躱されると、そのまま踵落とし。
 SPA-1はその踵を左掌で止め、そのまま弾き返した。女はそれで着地した為、重心が後ろに行き過ぎて、二・三歩後ろによろけて尻餅を搗く。
 そして、SPA-1は風の様に女に近付くと、右の正拳逆突きを尻餅を搗いた女の眉間に……。寸止めで拳を止めた。

 女は異星人テロリストの仲間ではあったが、拳法家としてのプライドもあったのだろう。潔く負けを認め、もう抵抗せず、川崎隊長の手錠を受けたのである。

 僕は現場検証に当たっていた人間の警察官に介抱され、取り敢えず意識を取り戻し、柱に寄り掛かる形で座らされた。
 それにしても恐ろしい敵だった。
 鳩尾に喰らった前蹴りで、アルトロの力を借りているにも関わらず、僕は暫く呼吸が出来なくなった。
 それに、この両手、左右の上段廻し蹴りを腕でガードしたのだが、両腕がソーセージの様に腫れあがっている。骨は折れていないと思うのだが、流石にここまで腫れると、僕も少し心配になってしまう……。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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