エピローグ

文字数 1,333文字

 僕はその日夢を見た。
 見せられたのかも知れない。
 それは、こんな夢だった。

 宇宙船の1人乗り救助用カプセル、そこには2つの身体が収まっていて、僕の良く知る2人が、そのうちの1つの身体の中で不思議な会話を行っていた……。

「あたし、死んじゃったの?」
「生きているわよ。私があなたを見捨てる訳ないでしょう?」
「シンディさん、でも、あたし、敵にお腹を撃たれて……」
「大丈夫、私が憑依したから。あなたの身体は大悪魔の治癒力で直ぐ回復するからね」
「嬉しい……」
「あら、そんなに生きたかった?」
「違うよ。シンディさんが、あたしを見捨てたんじゃないって分かったから。あたし、父も母もなくて、独りぼっちで、シンディさんが本当のお母さんみたいな気がしてたの」
「あら、私はサーラちゃんをずっと自分の子供だと思ってたわよ」
「本当?」
「本当よ」
「でも、なんで他人のあたしを……」
「私も最初、親がいなかったの。その私と兄を引き取ってくれたのが、私たちの両親。それで、人一倍愛情を掛けて貰ったわ。これは、そのほんのお裾分け。私も母の様になりたかった。だから、母の真似ごとをしたのかもね」
「シンディさんも親がいないのか……」
「だから、サーラちゃんは昔の私。私の娘なのよ……。ここでお別れになるのが、本当に寂しいわ……」
「え、シンディさん、どっか行っちゃうの? まさか、死んじゃって、幽霊になっちゃたんじゃ?」
「私が死ぬ訳ないでしょう! ま、今回は危なかったけどね……。私はね、過去の自分に未来から伝言する能力を持っているの。それで今回は、敵の罠を過去の自分に教え、未来に起こる歴史を変えちゃったのよ。つまり、この能力がある限り、私が殺されるなんてことは、決して在り得ないの。
 私が旅立つってのはね、自分の時空に戻るってことよ。私はね、この時空での役目を終えたの。だから、もう、自分の時空に帰らなければいけないの。だって、自分の時空にも、待っている人が沢山いるんだもの……」
「あたしも行っちゃ、駄目?」
「だって、あなたには学校にお友達が一杯いるじゃない。天空橋さんも、糀谷くんも、穴守君も、そして鈴木チョウ君だって」
「うん、みんな良くしてくれた。今でも友だちだと思っている。でも、あたし、それでもシンディさんと一緒にいたい。
 やっと見つけた、ラミアカーサ。日本にも、イタリアにも無かった、あたしの家。あたしの家族、そしてマンマ……、失いたくない」
「私の家族って、化け物ぞろいよ。あ、ひとり人間もいたわね……。それに、シンディ小島ってのは、この時空での名前なの。向うでは別の名字を持っているわ。そう言えば、私の姿もこのままじゃなくて、本当は別の姿。家は小島家みたいな大金持ちじゃないし、え~と、それから……。それでもいい?」
「ありがとう! シンディさん!」
「じゃ、あなたの身体に憑依したまま、私の身体を抱えて時空を越えるわね。暫く窮屈だけど我慢してね……、サーラ」

 会話はそこで終わっていた。
 僕はこれは正夢、いや、シンディさんの能力で見せられた過去……、実際にあった2人の会話だったと僕は思ってる。
 だって、2人が死んだなんてことより、こっちの夢の方が、僕にはずっと普通のことの様に思えるのだから。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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