ナギイカダの反乱(2)

文字数 1,654文字

「つまり、残留物質から植物体異星人が犯人である確率が高いと言うことだね」
 大師隊員も納得した様だ。
「そうです。では東門隊員、続けて」
「はい……。その日、現場の隣室にはレンタル観葉植物の鉢が置かれておりました。恐らく、この観葉植物が植物体異星人の擬態だったものと思われます。で、この植木鉢は現在レンタル会社に戻されています。私は明日の土曜日にここに向かい、この植木鉢を調査、尋問したいと考えております。隊長、出張調査の許可をお願いします」
「ああ、それは問題ないが……」
「何が問題だと言うのですか?」
「相手は、職員を平然と殺害する様な凶悪な異星人だ。君一人で行かせる訳にはいかないだろう……、そこで、鈴木隊員を護衛に付けよう。その条件で君の出張を許可する」
「はぁ?」
 この突拍子も無い声を上げたのは港町隊員。だが、声には出さないが、東門隊員も唖然ととして口を開いたままだ。
「しかし……」
「これは小島参謀の意向でもある」
 全員の視線が小島参謀へと向かう。
「では理由を説明するわね。まず護衛が必要な理由は、川崎隊長が説明したから省略します。港町隊員には別の案件の調査があります。大師隊員は事実上、私と同じ作戦参謀です。出来ることなら実戦に参加して欲しくない。川崎隊長も同様の理由です。
 そこで鈴木隊員をこの役に推薦しました。正直、いい加減、鈴木君にも働いて貰わないとね。いつまでも、只で遊ばせておく訳には行かないもの」
 それはそうだが……。
「皆さんの懸念は、彼が護衛として役に立つかと言うことだと思うのだけど……」
 これには港町隊員が、我が意を得たりと身を乗り出す。
「SPA-1を持っていって貰う心算よ。ロボットを使用するのであれば、彼だって異星人テロリストに対抗できる筈だわ」
「だったら、ストラーダ隊員で良いんじゃないのか?」
「彼女には、そろそろ新兵器開発に専念して貰いたいのよ。それに実は今週末、私たちの乗物となる万能パトロールカーの試作品の受け入れ試験があるの。彼女には当然立ち合って貰わないとね……」
 そう言えば、そんなこと小島さんが言っていたなぁ。空を飛べて、海を潜水出来て、公道を車として走れる万能マイクロバスだとか……。
 しかし、ストラーダ隊員のライフワークとも言うべき、SPA-1の操縦を、彼女が僕に託したりすることなど、出来るのだろうか?
「分かりました。会議終了後、鈴木隊員の携帯アプリに、SPA-1の制御プラグインをインストールし、本体側の、私の音声ロックを解除します」
 ストラーダ隊員は、あっさりと小島隊員の指示を承諾した。彼女はアルトロが僕に憑依していることを知っている。もしかすると、SPA-1に僕たちが憑依していることも、薄々感づいているのかも知れない。
 ま、そう言う訳で、「いい加減、鈴木君にも働いて貰わないと……」と言う理由が決め手となり、僕は明日の出張に、東門さんの護衛として同行することになったのだ……。

 会議終了後、僕は再び作戦室を抜け、休憩室に籠った。何となく、皆に何か言われそうで面倒くさかったのだ。
 そこにやって来たのは東門隊員、長身でがっしりとした身体の学者タイプの隊員だ。彼女は僕を見つけ、横目で一瞥すると自分の好きなライチジュースを購入し、黙ってその場で飲み始めた。僕との同行が不満と言うのが、全身から溢れ出ている。
 そして小島参謀。しかし、彼女、隊長付き秘書兼異星人警備隊作戦参謀の筈なんだけど、結構暇そうだなぁ……。
「あ、東門隊員と鈴木隊員、明日の調査、宜しくね!」
 それにしても、小島さんって屈託のない人だなぁ。反対に東門隊員は不機嫌そうな表情をいつもしていて、必要なことじゃないと、まず口を開かない。これはこれで、一緒にいるのが結構疲れるのだけど……。
「ところで、東門さん、植物体異星人が観葉植物に擬態していたって言ってましたけど、異星人が擬態した観葉植物って、分からない物なのでしょうかね?」
 僕は良い機会なので、東門隊員にさっき持った疑問をぶつけてみた。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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