魔女(9)

文字数 1,388文字

 僕たちが敵を一掃して直ぐ、小島参謀はじめ異星人警備隊メンバーが全員駆けつけ、魔法使いテロリストを全て逮捕すると同時に、僕たちの保護救出を手早く行っていった。
 僕の身体の方は、すぐさま異星人警備隊の医療班に回収され、気絶したまま麻酔を掛けられたそうだ。
 僕は自分の身体に戻って、そのまま寝てしまえばいい。なお、足の方は骨と肉が粉々にマッシュされていた様だが、僕が思っていた様に吹き飛ばされていた訳ではなく、どうにか治りそうだとのことだった。

 確かに、治ると信じてはいたのだが、正直、僕は車椅子の生活も考えないでは無かった。もし、アルトロに憑依されてなくて、誰かが、特殊な異星人能力で治療してくれないのなら、そうなることは間違いなかったろう。
 現にそう言う風になった人は大勢いるし、そうなったからと言って人生が終わる訳ではない。だが、非常に不便な生活を余儀なくされるであろうことは想像に難くない。
 もし、そうなっていたら、僕はそれに耐えられたのだろうか? そんな僕を、天空橋さんは見捨てずにいてくれるのだろうか?

 僕は、一晩は絶対安静と診断され、異星人警備隊内にある専用病院のベットに寝かされていた。ここは本来、地球人以外の患者を治療する為の専用病院なのだが、僕の場合は特別なのだそうだ。
 それでも、ここで処方された薬の効き目は素晴らしく、数時間寝ている間に、僕の両足は歩けるまでに回復していた。恐らく、後一時間もすれば退院できるだろう。

 退院までの間に、僕の見舞いに東門隊員が来てくれた……。
「どう? 回復できそうかしら?」
「おかげさまで。もうすぐ病院から追い出されますよ」
 僕は冗談を言ってみた。だが、相変わらず、東門隊員は笑うことをしない。
「チョウ君にはお願いがあるの」
「変なことは勘弁してくださいね」
 東門隊員は咳払いをする。今は数時間前と違って、全然ツッケンドンだ。
「私の素性は、(みんな)には内緒にしておいてくれないかしら?」
「勿論、黙ってますよ」
 僕は、そんなことを、一々言い触らす気など全く無い。それは彼女だけでなく、異星人警備隊本部の安全面に関わることでもあるからだ。
「その代わり、チョウ君が魔法使いだってことも黙っていてあげる」
 僕が、魔法使い?
「誤魔化しても駄目よ。あのロボット、チョウ君が気絶した振りして操っていたのでしょう? そして、チョウ君は魔法も使っていた。魔法使いじゃなきゃ出来ない芸当だわ」
 どうして、そうなるんだ? ま、どうでもいいや。彼女がそう思うのなら。
「じゃ、魔女と魔法使いとの約束よ」
 東門隊員はそれだけ言うと、そのまま病室から去って行った。その時、彼女が少し、微笑んだ様に僕には見えたのだった。

 彼女が去った後、アルトロが彼女の行動について少し説明をしてくれた。
「チョウ、人と言うものは、自分の持っている知識を基に状況を判断するものさ。超異星人のことを知らない東門さんには、チョウが彼女と同じ魔法使いに見えたのだろうね」
「成程ね……。アルトロ、それにしても、君が魔法を使えたなんて、僕も始めて知ったよ」
「あ、ああ、そうだな……。いや、本当は、あれも私ではない。超異星人がやったことだ。私は、彼に闘いを任せてしまったんだ……」
 アルトロはそう言ったきり、また言葉を発するのを止めて、自分の存在など、どこにも無いかの様に沈黙してしまうのだった。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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