不協和音(3)

文字数 1,236文字

 僕はお菓子に感謝しつつ、天空橋さんとは分かれ道の所で別れた。

 僕はこれからも異星人テロリストと戦い続けるのだろう。でも、本当にそれが平和に繋がって行くのだろうか? 僕には自信を持ってこれに答えることは出来ない。
 でも、これだけ言える。
 僕は天空橋さんを守る為なら、命を賭けて闘うことが出来る。そして、それは小島参謀の指示でもなく、川崎隊長の命令でもない。僕が自分自身の意志で彼女を守り闘うのだ。

 その夜、自宅で寛いでいると、携帯の呼び出し音が鳴り、異星人警備隊アプリにメッセージが届いたことが告げられる。送信者は川崎隊長だ。
「凶悪な異星人テロリストが暴れているんだ。鈴木隊員、休暇中済まないが、SPA-1の出動をお願いしたい。場所等は警備隊アプリの動画で確認してくれ!」
「了解っス」
 僕はこの緊急招集に応じた。この異星人テロリストが何の目的で闘っているかは知らない。でも、それで傷付く人がいるのは間違っている。
 僕は携帯アプリの動画で位置を確認し、SPA-1の再起動命令を発した。
「スパウノ、リアビーバ!」

 僕の部屋の中に、土足のままのSPA-1が瞬間移動してくる。しかし、そこんとこ何とかならんのかね?
 僕はベッドに横になり、SPA-1へと憑依を行う。ベッドでなら、数分気絶していても何も問題ないのだ。
「チョウ、このまま瞬間移動で現地に飛ぶぞ! それでなければ間に合わない」
「そんなこと、出来るのか?」
「ああ、今教わった。魔法だそうだ」
 東門隊員もそんなこと言っていたが、そんな非科学的なこと、僕にはどうにも納得がいかない。まあ超能力と考えておこうかと思う。
「いくぞ、チョウ!」
 アルトロは僕の返事も待たず、超能力を発動した。確かに憑依時間は限られている。無駄な時間を使う余裕はない。

 瞬間移動ってのは、なんとなく舞台の切り替えの様に僕は思っていた。だから、一旦暗転して、一呼吸いれて、再度舞台照明が灯る様な感じだと……。
 だが、実際はそうではなかった。本当に瞬間的に周りの風景が変わるんだ。それも、ここ、空中じゃないか!!
 僕は異星人テロリストの頭上付近に瞬間移動していたのだ。
「すまん、チョウ、自信がなかったので、地面から少し余裕を持った空間に移動したんだ」
 ア、アルトロ、それならそうと、先に言え!!
 僕は咄嗟に身体を回転させて、相手に跳び蹴りを見舞った。この辺は人間の反射神経では、とても出来ないことなので、成功すると凄く気分がいい。

 そこで相手が倒れたら、腕を逆に決めて逮捕すれば終わりだ。この異星人を殺す必要はない。僕には彼に恨みも何もないんだ。
 だが、僕の目論見通りに事は運ばなかった。この異星人テロリストは、驚いたことに僕の蹴りを胸で受けたにも関わらず、よろけて片足を引いただけで転ばずに堪えたのだ。
「チョウ兄ちゃん、こいつは生物じゃない。テロリストの作ったロボット兵器だ! 手加減なんかしていたら、SPA-1が壊されちゃうよ!」
 大師隊員の声が響く。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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