千羽鶴の贈り物(5)
文字数 1,534文字
翌週木曜日、民間組織の不法滞在者保護協会で爆弾テロがあった。この為、僕は放課後、丸の内にある協会本部ビルの地下駐車場へと、現場検証のサポートに駆り出されていた。
「なんで態々こんな時に、異星人テロリストは行動なんかするんだよ?」
僕はアルトロに向かって愚痴を溢さずにはいられない。だって、結局、昨日寝たのは夜中の一時になっていたのだ。生欠伸だって、さっきから何十回も連発している。その度に、川崎隊長の厳しい視線が僕を貫いているのは、まぁ致し方ないことだ。
現場検証の主役は人間の警察官だ。事故、または人間のテロリストが犯人の場合の捜査を優先とし、遺留品などの調査は人間の捜査官が主に担当している。一方、港町隊員始め僕たち異星人警備隊は、現場の端の方で、私服を身に着けたまま、野次馬の様にして鑑識員の作業を見守っていた。
港町隊員は、別にそれで困ることもない様で、自分の能力を駆使し、サングラスに付けた脳波解析装置の信号取得端子からの信号を、携帯の警備隊アプリを使って本部のメインコンピュータに送信している。これで犯人の手口、人相、その他犯行時の情報は一気に再現されることとなるだろう。
突然、僕の携帯の警備隊アプリがメッセージの着信を振動で知らせてくる。
「異星人テロリストの仲間が、現場に侵入しているわ。恐らく狙いは港町隊員。川崎隊長は港町隊員の護衛と犯人の検挙、チョウ君は川崎隊長と共に港町隊員の護衛を頼むわね」
小島参謀からの隊長と僕への指示だ。しかし、どうして毎回毎回、敵の動きが分かるのだろう? 本当に小島参謀は謎の多い人だ。
それは兎も角、どうやらコンクリの柱の陰の男が異星人テロリストの仲間らしい。川崎隊長が僕に目配せをして後ろに周り、顎で彼のことを指し示した。彼は今、ちらちらと港町隊員の行動を探っている様だ。
僕も彼が攻撃してきても港町隊員の盾になれる様、少し港町隊員の近くへと位置を変えていく。
「チョウ、気を付けろ。どうやら、敵はあいつ一人じゃない様だ。恐らくあいつがまず襲撃をし、仮に失敗したとしても、逃げてガードを混乱させ、二の矢で港町隊員を暗殺すると言う、二段攻撃の様だぜ」
「アルトロ、そのもう一人ってのは、どこにいるんだ?」
「反対側の柱の陰だ。あのサングラスを掛けた女が異常に怪しい。男の方は港町隊員の盾になるに留め、後は川崎隊長に任せよう……」
僕がアルトロに同意の意を示す前に、異星人テロリストは、その行動を起こし始めた。
男の方が銃の様な物を胸ポケットから取り出し、その銃口を港町隊員に向けたのだ。
僕はその銃口と港町隊員の間に自らの身体を入れる。それでターゲットを隠され、引き金を引けなかったテロリストは、川崎隊長に拳銃を持った手首を取られ、組打ちの状態になる。
「チョウ、港町隊員を守れ!」
僕は、男の襲撃に驚いた港町隊員を両手で突き飛ばし、後ろから来る赤いレインコートとサングラスの女に備えた。
赤いレインコートの女は、武闘が得意な異星人らしく、ハイヒールを履いた長い脚を使って、僕に廻し蹴りを仕掛けてくる。僕は港町隊員を守る役目なので、体勢を入れ替えて避けることはせず、腕でガードして、それを防いだ。
僕はアルトロの力を借り、攻撃、防御とも強化して闘っているのだが、それでもこの女の蹴りは半端なく威力がある。数発ガードしただけなのに、その衝撃で僕の腕は、多分二倍ほどに腫れあがってしまったに違いない。
女は港町隊員暗殺を失敗したと判断したのか、僕と港町隊員を置いて地下駐車場から脱出しようと後ろを向いて逃げ出した。
だが、そうはいかないな。
「スパウノ、リアビーバ!」
僕は自分の携帯を取り出し、SPA-1の起動命令を音声入力した。
「なんで態々こんな時に、異星人テロリストは行動なんかするんだよ?」
僕はアルトロに向かって愚痴を溢さずにはいられない。だって、結局、昨日寝たのは夜中の一時になっていたのだ。生欠伸だって、さっきから何十回も連発している。その度に、川崎隊長の厳しい視線が僕を貫いているのは、まぁ致し方ないことだ。
現場検証の主役は人間の警察官だ。事故、または人間のテロリストが犯人の場合の捜査を優先とし、遺留品などの調査は人間の捜査官が主に担当している。一方、港町隊員始め僕たち異星人警備隊は、現場の端の方で、私服を身に着けたまま、野次馬の様にして鑑識員の作業を見守っていた。
港町隊員は、別にそれで困ることもない様で、自分の能力を駆使し、サングラスに付けた脳波解析装置の信号取得端子からの信号を、携帯の警備隊アプリを使って本部のメインコンピュータに送信している。これで犯人の手口、人相、その他犯行時の情報は一気に再現されることとなるだろう。
突然、僕の携帯の警備隊アプリがメッセージの着信を振動で知らせてくる。
「異星人テロリストの仲間が、現場に侵入しているわ。恐らく狙いは港町隊員。川崎隊長は港町隊員の護衛と犯人の検挙、チョウ君は川崎隊長と共に港町隊員の護衛を頼むわね」
小島参謀からの隊長と僕への指示だ。しかし、どうして毎回毎回、敵の動きが分かるのだろう? 本当に小島参謀は謎の多い人だ。
それは兎も角、どうやらコンクリの柱の陰の男が異星人テロリストの仲間らしい。川崎隊長が僕に目配せをして後ろに周り、顎で彼のことを指し示した。彼は今、ちらちらと港町隊員の行動を探っている様だ。
僕も彼が攻撃してきても港町隊員の盾になれる様、少し港町隊員の近くへと位置を変えていく。
「チョウ、気を付けろ。どうやら、敵はあいつ一人じゃない様だ。恐らくあいつがまず襲撃をし、仮に失敗したとしても、逃げてガードを混乱させ、二の矢で港町隊員を暗殺すると言う、二段攻撃の様だぜ」
「アルトロ、そのもう一人ってのは、どこにいるんだ?」
「反対側の柱の陰だ。あのサングラスを掛けた女が異常に怪しい。男の方は港町隊員の盾になるに留め、後は川崎隊長に任せよう……」
僕がアルトロに同意の意を示す前に、異星人テロリストは、その行動を起こし始めた。
男の方が銃の様な物を胸ポケットから取り出し、その銃口を港町隊員に向けたのだ。
僕はその銃口と港町隊員の間に自らの身体を入れる。それでターゲットを隠され、引き金を引けなかったテロリストは、川崎隊長に拳銃を持った手首を取られ、組打ちの状態になる。
「チョウ、港町隊員を守れ!」
僕は、男の襲撃に驚いた港町隊員を両手で突き飛ばし、後ろから来る赤いレインコートとサングラスの女に備えた。
赤いレインコートの女は、武闘が得意な異星人らしく、ハイヒールを履いた長い脚を使って、僕に廻し蹴りを仕掛けてくる。僕は港町隊員を守る役目なので、体勢を入れ替えて避けることはせず、腕でガードして、それを防いだ。
僕はアルトロの力を借り、攻撃、防御とも強化して闘っているのだが、それでもこの女の蹴りは半端なく威力がある。数発ガードしただけなのに、その衝撃で僕の腕は、多分二倍ほどに腫れあがってしまったに違いない。
女は港町隊員暗殺を失敗したと判断したのか、僕と港町隊員を置いて地下駐車場から脱出しようと後ろを向いて逃げ出した。
だが、そうはいかないな。
「スパウノ、リアビーバ!」
僕は自分の携帯を取り出し、SPA-1の起動命令を音声入力した。