灰色の疑惑(5)

文字数 1,351文字

 僕はその数日後、ストラーダ隊員から、休憩室で二人きりの時、信じられないことを聞かされた。その情報は、僕にはあまりに衝撃的な内容だった。
「港町隊員は、テロリストの一員ではないか」と……。

「根拠はあるんですか?!」
「これで~す」
 ストラーダ隊員は僕に一冊の資料を手渡した。それは有難いことに日本語に翻訳されており、写真入りで提供された、個人の情報ファイルだった。
「港町隊員、地球の戸籍を買い取って別人となる前、別の星系で急進的活動家として活動していたと言うことで~す。星間警察機構の方から、指名手配の情報が発信されていま~す。地球の世界政府、星間警察機構に加盟してませ~ん。ですから~、この星では彼は安全に過ごせる思いま~す」
「間違いないんですか?」
「絶対とは言いませ~ん。でも、確かに顔つき、背格好も、資料にある人物の情報と一致していま~す」
「そ、そんな……」
「偶然、指名手配の人物に似ているだけなら良いで~す。で~も、もし、港町隊員、指名手配の人物本人で、本当にテロリストと繋がりがあるとしますと~、あたしたちの活動、テロリストに全部筒抜けで~す」
 港町隊員が、異星人テロリストの仲間……? 確かに、彼は僕をすぐ馬鹿にしたり、言動が無思慮なところもあるけれど、僕には彼が、そんなに悪い人とは到底信じられなかった。

 い、いや、以前、異星人テロリストは、港町隊員が過去をスキャンしているところを、口封じに暗殺しようとしたことがある。何故、彼らが港町隊員の能力を知っていたんだ?
 それは、今は別なのかも知れないが、昔、テロリスト同士、彼と共闘したことがあったからではないのか?
 すると、港町隊員は、本当に異星人テロリストなのか……?

 いや、そんなことはない、小島参謀が大丈夫と言っているのだ。きっと、資料の方が誤っているに違いない。
 そうさ。小島参謀が、僕たちの敵である異星人テロリストのスパイだと知った上で、敢えて港町隊員を異星人警備隊のメンバーに加えているなんて、ある訳がないじゃないか!
 そうだとしたら、参謀の考えが僕には全く理解出来やしない。やはり、彼が異星人テロリストなんてのは、間違いなんだ!!

 いや、理解できる理由がない訳ではない……。それは、小島参謀自身も異星人テロリストで、異星人警備隊を混乱させようと、自分の仲間、あるいは、別組織の異星人テロリストを引き入れようと考えた場合だ。
 でも……、そんなこと……。

 疑心暗鬼と言うのだろうか、港町隊員、小島参謀への疑念が、僕の心の中に墨を流した様に広がっていく。だが逆に、二人を信じたい言う、染まり切らない心の部分だって、僕には十分過ぎるほど残っているのだ。
「チョウ君、この事は内緒で~す」
 ストラーダ隊員は、僕にそう言い残して休憩室から去っていった。

 僕はその忠告に従おうと思う。
 もし、これを小島参謀や港町隊員に直接確かめたとしても、彼らがテロリストなら絶対本当のことは言わないだろう。
 逆に、参謀たちがテロリストでないとしたら、この様なことを訊ねられるのは「そんなに信用ないのか」と酷く気分を害するに違いない。
 これは非常にデリケートな問題だ。確認するにしても、他のメンバーにも分からない様に、内密に調べなければならない案件だと僕は思う。
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登場人物紹介

鈴木 挑(すずき いどむ)


横浜青嵐高校2年生。

異星人を宿す、共生型強化人間。

脳内に宿る異星人アルトロと共に、異星人警備隊隊員として、異星人テロリストと戦い続けている。

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