41.《 てんとうむしの日 》 2022/10/12

文字数 1,424文字



「てんとうむし」は英語でマリア・ビートルだと間違って覚えていたのは伊坂幸太郎さんの小説「マリア・ビートル」のせいだ。正解はレディ・ビートルまたはレディ・バーグなのだが伊坂さんがレディをマリアに変えてタイトルに使ったらしい。
ハリウッドがその小説をベースにシネマ「ブレット・トレイン(2022)」を製作したおかげで僕のミスが訂正された、シネマはこのようにお役に立つのである。
日本でのロケもなく日本人も出てこない(真田広之さんはもはやハリウッドスターだ)、奇妙な内装の新幹線(ブレット・トレイン)が舞台ではあるものの、新幹線中で殺し屋たちが殺し合うという原作プロットにはほぼ忠実だと思わせておいて、最後に大きく変身するカタルシスが強烈だった。
このシネマがお役立ちと前述したが実はカオスでもあった。
ブラッド・ピット演じる殺し屋のコードネームがレディー・バーグ(てんとうむし)、
前述のとおり原作タイトル「マリアビートル」が「てんとうむし」のことだと思っていた僕、
二種類の「てんとうむし」に戸惑ったが、この殺し屋の管理者がマリア・ビートル(サンドラ・ブロック)だという展開に至っては、???になってしまう。
原作を大きく逸脱したシネマなのでそんな些細な「てんとうむし」などに拘ってはいけないのだろうが、海外から観た日本が浮き彫りになった見事なスラップスティック・コメディ・活劇だった。

話は打って変わって、
平均健康寿命を超えた72.5歳の僕が心配しているのは、別の「てんとうむし」だ。
「転倒無視」と漢字で言い換えるとわかりやすいかもしれない。
高齢になるほどに足腰が弱まり歩行機能にも障害が出てくるのは誰もが皆避けられない事実だ。
加えて脳溢血に代表される脳障害から身体を思うままにはコントロールできなくなるケースも生じる。
それでも歩こうとする人間の想いは高潔である、「こんなもんじゃないはず」 「なんでできないの?」 そんな自問も聞こえてきそうだ。
そして転倒する、でもその事実を重く受け止めない・・・再度 「こんなもんじゃない」といきり立ち冷静を失うのが転倒無視。
杖をついて歩くことにする、時々杖のことを忘れて一歩踏み出し転倒する、転ばぬ先の杖の教えを実行できないのは転倒無視。
杖では支えきれなくなり歩行器に変えてそれでも歩こうとする、人間は考える足(葦)であるが転倒の危険を考えない葦に待っているのが転倒の無限ループ。
そのころには身体中に傷・痣がついているが、転倒無視の蓄積でその理由に心当たりすらない。
すべては、転倒無視から始まる。

8月末、濡れた庭石で足を滑らせ思い切り転倒してしまった、酷く膝をねん挫した。
間違いなく身体能力全般が劣化している証拠だろう、危険な状況を察知できない、足元がおぼつかない、とっさの防御対応ができない。
そんな僕にできることは、この転倒を無視しないことしかない。
いつまで続けられるか自信はないが、ひとつひとつの転倒から生活の隅々を見直していきたい。
まずは濡れた路面を避ける、やむを得ない時は手摺にすがる、足裏全体でまっすぐそろり着地する、滑りやすいスリッパは履かない。
もっと想像をたくましくすると、
酔った時には足元手元その他我が身すべてに一層注意する、階段、バスの昇降、風呂場、トイレ・・・あらゆる場所で。
最後に、転倒の怪我はしっかりと治療する、全快するまで安静にする。

「てんとうむし」から学んだ大切な教訓を胸に刻んだ 「今日である」。
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