54.《 お雑煮の日 》 2023/1/4

文字数 1,273文字

日本の年末年始を誇らしく思っている。
一年間の汚れを大掃除し、除夜の鐘で煩悩を捨て去り年越しそばを食べる。
「今年一年色々大変だったけど何とか一年頑張ったね、ご苦労さん」。
小さくても達成感を愛おしむ大晦日。

翌日は家族全員正装し畏まってあいさつする、「明けましておめでとうございます」。
年が改まったことだけを祝う、何とスペキュレイティブな民族なのか、僕らは。
具体的に一年の目標を掲げるもよし、単純に良い年になることを祈願するのも元旦ならではの特権だ。
小さくても希望を灯して祝うお正月。

お正月にはおせち料理を食べる。
1カ月前から材料を揃え、料理ごとにスケジュールを決め、お正月当日にすべてのメニューが出揃う。近年流行している高級おせち料理一式を購入し、日常では経験できない晴れのお味を堪能するのもいいだろう。あるいはいつもの手作りの家庭の味に幸福を感じ、作り手の愛に深く感謝するのもお正月ならではのひとときになる。

おせち料理に欠かせないのが「お雑煮」、お餅入りお汁ものと一括りにできるが、その内容は多種多彩で地方の数だけそして家族の数だけあるともいえる。
(詳細は、どうかネットで調べていただきたい)。
我が家では、このお雑煮がちょっと変わっている、変わっていると自覚したのが故郷から関東地区に移り、そこで家庭を持った時からだ。
僕ら夫婦はともに香川県出身なので、お雑煮はいわゆる讃岐風ということになるらしい。
馬鹿馬鹿しい話で恐縮だが、小さいころから讃岐風が全国共通だと本気で信じていた。

いつもの癖で前置きが長くて申し訳ない、さっさとその讃岐風お雑煮の中身をご紹介する:
●お餅はあんこ入りの丸餅、焼かずに煮る。
●出汁はイリコ、白味噌仕立てにする。
●具材はお野菜(人参と大根)だけ、薄く丸切りにする。


たったこれだけのシンプルなお雑煮である、讃岐うどんが入ると期待した方は残念でした。
両親の代には、これに砂糖と鰹節を振りかけて、年に一度の贅沢だと溜息していたのが忘れられない。
僕たちの子供たちは生まれた時からこのあんこ入り丸餅・白味噌のお雑煮に慣れ親しんでいる、
もとより僕ら夫婦もそれ以外のお雑煮を食べた覚えがない。
子供の伴侶たちは最初は一様に驚き、食するのをためらったものだが、毎年元旦に家族が集まることになっているため、今では孫たちも含めて家族にはこの讃岐風お雑煮への抵抗感は全くなくなった。
相模の国でしっかりと根付いた讃岐の伝統、ギョ-サンゲニ(大げさに)言うなとのお叱りを受けそうだが、いやいや食は伝統の要だ。
家庭の味が家族の結束を強いものにするように、お雑煮を食べる日本人が日本の伝統を意識するお正月が愛おしい。

昨年カタールの地で、日本人サポーターが称賛された。
桜、紅葉、神社、お寺、温泉、寿司、天婦羅だけが日本の伝統ではないことを改めて世界に知らしめた。
謙虚で我慢強くて清潔好きな生きざまそのものが日本の伝統だ、そんな生活の基盤を支えるものが家庭の味であってほしい。
毎日我が家の朝食を作りながら、伝統を繋いでいる使命感に自己陶酔している、 今日である。
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