87. 《 伸び縮む日 》 2023/8/23
文字数 813文字
♪ 柱の傷は おととしの 五月五日の背くらべ ちまきたべたべ兄さんが 計ってくれた背のたけ・・・・・・♪
また、古い童謡が口をついて出てきたのは、柱の傷ならぬ柱のポストイットを見つけたから。
そのポストイットには身長・日付が書き残されている。
小5の孫の身長記録である、ちょっと小柄なので身長が伸びたかどうか毎日のように測ってくれとせがんでるらしいが、ゴーヤじゃあるまいしそうそう毎日大きくなるわけもない。
小さな黄色い紙を見てぼくの記憶は一気に60年以上昔にさかのぼる。
母の実家は、祖父(大工棟梁)が自ら建てた古風な家、仏間と客間を兼ねた大広間がぼくのお気に入りだった、その広間にあったの一本の柱が、孫たちの背比べの記録場所になっていた。
一番年長の孫だったぼくの背のたけ傷はいつも一番上にあった、当たり前なのだがこっそりと誇らしく思っていたものだ。
祖父は自分の建てた大事な柱なのに、惜しげもなく孫たちの背丈を刻み込んでいた、孫の成長が嬉しかった祖父の気持がよくわかる。
時代が移り洋風住宅に住み続けるぼく、柱に背丈を刻むことをすっかり忘れてしまった、そして「背くらべ」の歌も。しかし、子・孫の成長を楽しみにし愛でる心に今も昔も違いはない。
先月から0.9㎜伸びて140㎝を超えた孫、この数年で3㎝縮んだぼく、
体重が増えて喜ぶ孫、増えても減ってもビクビクしてしまうぼく。
漢字をどんどん覚えていく孫、どんどん忘れていくぼく。
洒落た物言いをして周りを感心させる孫、ボケをかまして周りを心配させるぼく。
虫歯が一本もないと自慢する孫、歯茎でも噛むことができると自虐自慢するぼく。
少年野球で小柄ながら筋肉がついてきた孫、愛犬と散歩するだけで足腰が痛くなるぼく。
コロナ・インフルにさっさと罹ってケロリと回復する孫、ワクチン頼みのぼく。
人生は残酷なものだ、でもバトンタッチは確実に始まっている。
自然の摂理を毎日ひしひしと感じる 今日である。