86. 《 本に囲まれる日 》 2023/8/16

文字数 1,139文字



感激したり、慄いたり、考えさせられたりした本だけは手元に置いておこうと決めたのは今の住宅に越した時だから30年以上前になる。

3階のロフトに取り置かれた本たちは大きく二つのグループに分けられる。
ひとつは引っ越し時の選別にも処分されずに残ったマイ・フェイバリットな本たち、年代物で名作と言われているものが多い。
もうひとつは好きな作家の作品たち、読書においてもこだわりが強いため気に入った作家の本を執拗に収集した結果だ。
長寿命作家の本は、したがってどんどん増える、好きな作家が追加されてまたまた増える。
村上春樹、カズオイシグロ、東直己、桐野夏生、高村薫、佐野眞一、桜庭一樹、丸山健二、ロバート・B /パーカー、マイクル・コナリー、コーマック・マッカーシー(敬称略)の作品はほとんど揃えている。
気付いてみると、妻に手作りしてもらった本棚天板がたわむほど、およそ500冊超の本が溜っていたが、終活の一環として本たちもトリアージし現在は300冊ほどに縮小されている。

古くから残してきた本を対象としたレビュー「還暦文庫 SINCE 2013」は、新刊書も対象とし今ではレビュー数500に積みあげられた。
お気に入り作家の本たち以外にも、新進気鋭作家にも手を出す節操の無さだ。
近年では 中村文則、小川哲、平野啓一郎さんらから目が離せない。
その背景にブックレビューを書くことがシネマレビュー同様、ささやかな老後の楽しみになってきていることがある。

このままだとまた蔵書500冊超に逆戻りしそうだと気づき、苦肉の策として新読書スタイルを築き上げてきた。
① お気に入り作家の新刊は早々に読み終えてBOOKOFFに売り払う、価格の10〰25%が回収できる。ただし村上主義者であるからして村上春樹作品だけはここには含まない。
② 新刊を我慢して中古で入手する、気になった新刊書リストを作り、時折中古本価格をチェックし適当なところで購入する、当初の興味が冷めて購入しないこともあり、衝動買いと積読を防ぐ予期しない効果もあった。

BOOKOFFの買取原理は新刊ほど高い値段になることはこれまでの経験から承知している、逆に古い本は値が付かない。したがって 30年にわたりぼくが揃えてきたお気に入り作家コレクションは金銭的にはほぼ無価値ということである。
だからと言ってバッサリと処分する勇気はぼくにはない。
ロフトに上がり、そこでお気に入り作家の本を眺めるだけでも心が落ち着くのだから。
少し多めだけど、ぼくが愛した本たちはこのままにしておくことにする。
誰かがもし読むのであれば嬉しい、そのまま捨ててもらっても結構、自分で手を下すことはできそうもない。

捨てられない本と共に生きようと決め、安らかな気持ちになった 今日である。
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