43.《 ルーティンする日 》 2022/10/26

文字数 1,324文字



同じことを飽きることなく繰り返すと、これがルーティンになる。
別に外来語を使うこともなく「習慣」といえばそれで済むのだが、ルーティンにはどこか理念、ミッションが含まれているように勝手に思い込んでいる。
ぼくにも大層なものではないが、長い間「トライアスロン人生」という理念があった。
37歳から63歳までの26年間、トライアスロンのためのルーティンが確立されていた。
ウィークデイの毎朝5㎞ランニング、勤務後週三回のジムトレーニング、週二回のスイム。
土曜日 バイクロングライド(100~150㎞)とランニング(20㎞)、日曜日 所属チーム(サブ3)練習会参加。
すべての時間をトライアスロン・トレーニングに費やすのが僕のルーティンだった。

63歳で脊柱管狭窄症のためトライアスロンを断念し、ルーティンはなくなり、代わりに世間で言われる「趣味」がそれにとってかわった。
今まで控えざるを得なかったシネマ鑑賞、読書、そのレビューを書き記すようになった。
朝食に調理するパスタ料理も写真付きのレポートを残し、これらをフェイスブックに掲載する。
そのすべてをNOVELDAYSにアップロードする、代替ルーティンと言いたいところだがそれには無理があるようだ、そこにミッションはない。

逆に、トライアスロンから派生した涙ぐましい裏ルーティンがひっそりと継続されている。
トライアスロンをあきらめた直接の原因は前述の脊柱管狭窄ではあるが、26年間酷使した身体いたるところに深刻な痛手が残った。
脚部位(足底、足首、アキレス腱、ふくらはぎ、膝、大腿筋、殿筋)はひととおり故障し、特に股関節、膝の変形症は深刻だった。
朝起床して動き出すまでの第一幕、朝食後の第二幕の2回のストレッチが、トライアスロン後遺症対策ルーティンになっている毎日だ。
第一幕では主に狭窄症緩和として背骨コンディショニング・メソッドを中心に30分間、
第二幕では股関節リハビリ、肩甲骨周り強化、インナーマッスルバランスを目的としたストレッチを1時間、計1時間半のストレッチ三昧のルーティンである。
華やかさのない隠れたルーティンではあるが、そこには少しでも身体を長持ちさせたいという未来に向けたミッションがある。

最近ひとつ気懸かりなことがある。
コロナパンデミック以来 公共の場、屋内で人と接するときにマスクをするよう求められている、感染防止というミッションだ。
幸か不幸か 働き止めをして以来公共の場に出る機会が少なくなっているとはいえ、人と会うことをすべて避けることはできない。
そんな生活が3年にも及ぼうとしている今、外出時のマスク着用を疑問に思わなくなった・・・
いつの間にかルーティンになっている。
この3年の間に初めて巡り合った人たちの素顔をいまだに知らない、もしマスクなしで会ったとしても認識できないだろう・・・余計な心配ばかりしている。
気が付いてみれば、マスクをして初めての人に会うのがちょっと憂鬱になっている自分がいる。

先輩・友人が彼岸へ旅立つようになり、一方で新しい出会いを妨害するようなマスク・ルーティンの毎日、もしかして孤独に生きる決意が問われているのだろうか。

僕も日本も厄介なルーティンに陥っている 今日である。
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